ドラマレビュー<国際女性デー特別編>

「アンナチュラル」ミコト、「王様のレストラン」政子、「その女、ジルバ」新らに学ぶ、自分の居場所の見つけ方

「国際女性デー」の起源は、1904年にニューヨークで婦人参政権を求めたデモ。1975年に国連によって3月8日を「国際女性デー(International Women's Day)」と制定されました。そこで、国際女性デーを記念して、今回はドラマレビュー特別編をお届けします。数多くのドラマの中から、魅力的な女性たちをピックアップして、紹介します。

●ドラマレビュー<国際女性デー特別編>

『アンナチュラル』ミコトの戦い方

ドラマの中にはこれまで実にさまざまな、魅力的な女性が存在してきた。最近のドラマを振り返って印象深い女性のキャラクターといえばこの人が上位にくるのではないだろうか。石原さとみ演じる『アンナチュラル』(TBS、2018年/Paraviにて配信中)の三澄ミコト。

遺体の死因究明を専門とする架空の組織・UDIラボで監察医として働くミコトはいつも迷い、悩みながら、それでも「正しいこと」のために突き進む女性だ。

3話では、ある殺人事件について検事・烏田(吹越満)と、どこまでも遺体から見つけ出した真実を貫くミコトが対立する。最初は検察側の証人として立っていたミコトは、途中から弁護側の証人として裁判に立ち、烏田側から「若い女性ということでチヤホヤされるかもしれないが」「責任転嫁は女性の特徴」などと煽られ、「すぐ感情的になる」とあげつらわれる。挙句の果てに被告人(温水洋一)にも「人生を女なんかには預けられない」とまで言われてしまう。それを逆手に取り、ミコトは男性である中堂(井浦新)を代理で裁判に立たせて主張を通す。そんなミコトが最終回となる10話で、中堂がずっと追い続けてきた連続殺人事件に関する裁判でタッグを組んだ相手こそ、烏田その人。この裁判ではミコト本人が証言台に立って事実だけを淡々と報告し、「犯人の気持ちなんてわかりはしないし、あなたを理解する必要なんてない」「ただ、同情はしてしまいます」と”感情的に”言い放ち、犯人の自供を引き出すことに成功するのだ。女性であるだけで軽んじる人々を、最後には自分自身の力で納得させるミコトの姿には胸がすく思いがする。

「アンナチュラル」
TBS、2018年/Paraviにて配信中
脚本:野木亜紀子
出演:石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子 他
https://www.paravi.jp/title/19695

 

「王様のレストラン」の政子。感情を出したとき、ものごとが動く

ドラマを観る私たちに強い印象を残すのは、決して主人公だけではない。

思い出すのは「王様のレストラン」。三谷幸喜脚本のこの作品は、松本幸四郎(現・松本白鷗)演じる伝説のギャルソン・千石が、かつて栄華を誇るも今は落ちぶれ、つぶれかけていたフレンチレストラン「ベル・エキップ」を甦らせるという物語。このレストランのシェフはしずか(山口智子)という女性だ。元々腕の立つシェフだった彼女が料理を作る喜びを取り戻していく姿も見どころだが、今回注目したいのはバーマンの三条政子(鈴木京香)。支配人の愛人というだけでやる気なくバーマンとして働いており、しずかともたびたび対立していた彼女が、ある事件をきっかけに変化する。

第7話で日本の大臣とEUの大使が会談にベル・エキップを使うも、話がうまくまとまらないことから誰も食事にほとんど手をつけない。デザートが目の前で溶けていくのに痺れを切らした政子は「早く食べろってフランス語でなんて言うの?」と千石に聞き、言われた通り大使たちに「アロール モンべべ タブーシュヌ マルシェパ」と言い放つ。気圧された彼らがやっと食べ始めて雰囲気がなごみ、事態は好転する。「母親に怒られているようだった」と語る大使たち。実は教えられたフランス語は「坊ちゃん、お口が動いてまちぇんよ」という意味だったことがあとでわかる。

何の目標もなく、ただ流されて仕事をしていた政子は、これを機に自分の職場での居場所を見つけ、いきいきとしはじめるのだ。

「王様のレストラン」
フジテレビ、1995年/FODにて配信中
脚本:三谷幸喜
出演:松本幸四郎、筒井道隆、山口智子、鈴木京香、西村雅彦、小野武彦 他
https://fod.fujitv.co.jp/s/genre/drama/ser4528/

 

道のりの違う者たちがわかり合う瞬間「問題のあるレストラン」

「問題のあるレストラン」は現実で女性がおかれた状況をこれでもかと描くドラマだった。同僚がひどいパワハラとセクハラを受け退職に追い込まれたことを知り、大手の飲食サービス会社を辞めて自らレストランを立ち上げるたま子(真木よう子)が物語の中心。思いを寄せてくる門司(東出昌大)も、「仕事を辞めて俺の嫁さんになれ」などと、無意識にたま子やまわりの女性を傷つけるような男だったりする。そんな彼女の元にはさまざまな形で抑圧された女性たちが集まってくる。

「セクハラは笑顔で受け流した方が得」と信じながら、彼氏のDVや同僚のストーキングに遭い会社を辞めてきた藍里(高畑充希)、父のせいで壊れた家族を支えるために命がけだった千佳(松岡茉優)、東大出身でベンチャー起業を夢見るも、出資先と聞いた場所で女を求められひどい目に遭う結実(二階堂ふみ)……。この3人が第6話でただ買い出しにいくだけの描写がある。買い出しの帰り、3人は公園で、スマホでシューベルトを聞きながら買ったばかりのラテを飲む。余分なセリフはほとんどない、モンタージュで紡がれる情景。その中で千佳が「生きててよかったな。生きような」と呟く。生きてきた道のりも、考え方も全く違う女性たち。けれども女性であるだけで傷つくし、大変な目に遭うし、疲弊することだけは同じだ。そんな3人が束の間通じ合う。ただ一緒にいて、暖かいものを飲むその時間に心を癒し合う。たぶんこれからも楽なだけの道のりではないけれども、前を向くーー。これは、ドラマ史に残る美しい名シーンだと思う。

「問題のあるレストラン」
フジテレビ、2015/FODにて配信中
脚本:坂元裕二
出演:真木よう子、東出昌大、二階堂ふみ、高畑充希、菅田将暉、松岡茉優、臼田あさ美
https://fod.fujitv.co.jp/s/genre/drama/ser4629/

 

「その女、ジルバ」「すいか」で年長者が教えてくれること

幾多の経験を乗り越えてきた女性が、今を生きる私たちを導いてくれることがある。

「その女、ジルバ」は、その最たるものだ。アパレル会社で働いていた新(池脇千鶴)は婚約者に裏切られ、リストラで倉庫勤務に。そんな新が出会ったのはアルバイト応募の条件に「40歳以上」とあるバー「OLD JACK & ROSE」。年齢を重ねて、結婚もせず何も持たず、仕事さえも風前の灯。2020年代の今、決して現実にも少なくない女性がシビアに描かれる。けれどこのドラマには、40歳がひよっこに見えてしまう人生の達人たちが続々と登場する。彼女たちのたくましく美しい姿はそれだけで希望だ。戸惑いながらも、40歳にして「ピカピカの新人」を満喫する新と、「女は40歳から!」「ううん50歳から!」と生きる喜びを全身で表現する年長者たちがまぶしい。

魅力的な年長者といえば、「すいか」に登場する大学教授・夏子(浅丘ルリ子)。信用金庫で働き続け、30代半ばにして行き詰まってしまった女性・基子(小林聡美)が、「ハピネス三茶」というまかないつき下宿屋でちょっと変わった人々と暮らすうち、自分を見つける物語だ。夏子はいつも、示唆に富む言葉でハピネス三茶の住人たちの心の支えとなっている。

夏子 「アナタ、この世に、そんな女がいるとは信じられないって思いましたね、今」
基子 「はあ」
夏子 「それは違います。色々、居ていいんです」
基子 「私みたいな者も、居ていいんでしょうか」
夏子 「居てよしッ!」

現実には、夏子みたいにかっこいい先達はなかなかいない。けれども自分なんていなくなってしまえばいいと思った日にも、心の中の夏子が「居てよしッ!」と言ってくれる。
そんな夏子自身、自分の人生という旅の途中だ。最終回では納得のいかない理由で大学を辞めざるを得なくなる。けれども夏子はどこまでも前向きに同居人たちに語り、去っていく。そんな夏子の姿勢を、人生の道標にしたい。

「何だって、遅すぎることなんてないのよ。私たちは、何だってできるんだから」

「その女、ジルバ」
フジテレビ、毎週土曜23:15〜放送中/FODで配信中
脚本:吉田紀子
出演:池脇千鶴、江口のりこ、真飛聖、中尾ミエ、草笛光子ほか
https://fod.fujitv.co.jp/s/genre/drama/ser4t77/

「すいか」
日本テレビ、2003/Huluで配信中
脚本:木皿泉、山田あかね
出演:小林聡美、ともさかりえ、市川実日子、浅丘ルリ子 他
https://www.hulu.jp/suika

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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