稲垣吾郎さん「グループ時代は、凝り固まってた」解散後に出会った“新しい自分“
趣味や生活スタイル、20年前からぶれない
――フォトエッセイへの思いを聞かせてください。
稲垣吾郎さん(以下、稲垣): なんでもデジタルな世の中で、モノとしてちゃんと残すことや触れることの重要性を最近感じているので、紙媒体で出せてうれしいです。応援してくださっているファンの方々から、「写真集とかエッセイのようなものを発売してほしい」というリクエストも頂いていたので、応えることができた点も良かったですね。
――今回の出版で、新たな発見や気づいたことはありましたか?
稲垣: 考えや思いを記事にしてもらうことで、自分を見直すきっかけになりました。僕は基本的に若い時からそんなにぶれてなくて。その個性のおかげで、タレントをやってこられたのかなって思います。ぶれてないって自分で言うのも変ですけど、根本的には昔と変わってない。そんな自分を改めて確認して「間違ってなかったんだな」と思えました。
ずっと近くで一緒に時間を過ごしてきた応援してくださる方々にとっても、色んな発見や気づきがあると感じています。
――20代の時からぶれてない個性や価値観とは、どんなところですか?
稲垣: 趣味とか、好きな生活スタイルとか、ですかね。
クラシックカーが好きだった26歳くらいの時、雑誌の撮影でフランスの自動車メーカー・シトロエンが出したDSというモデルの車に乗って、写真を撮ってもらったんですよ。その写真は今でも大切に持っていて「乗ってみたいな」って見返すこともあるくらい。
着ているものも、流行りとかで多少テイストは変わるけど、ずっと同じです。今日の黒い服なんかも、昔から好き。僕は眼鏡が好きでよく掛けるんですけど、若い時からよく、伊達メガネをかけていましたしね、原宿の竹下通りとかに買いに行って。いまは目が悪いので伊達ではないけど、ファッションアイテムも結局、変わってないなって思います。
若い時はよく、原宿や表参道でちょっと古い建物を写真に撮っていたんです。その頃撮った写真はアルバムに貼り付けているんですけど、構図が、今も昔も全然変わってない。
センスとか好みとかは、本当に同じなんだなって感じます。20代のころに美意識が確立されていたというのも面白いと思ったり、逆に成長していないのかなと思ったり(笑)。知識は増えたと感じるんですけど、感覚や感性みたいな部分は変わってないですね。
あとは人との距離感も。フォトエッセイの帯にある「やりすぎない でしゃばりすぎない」っていう言葉が大好きで、これ僕のモットーなんです。この前、番組に出演した時に座右の銘を聞かれて、「あまり人に期待をしない」と答えちゃったんですね。人それぞれ捉え方はあるかもしれないけれど、僕は人との馴れ合いはあまり好きじゃないし、さらっとした人付き合いが昔からすごく好きなんです。熱い人には嫌われちゃうかもしれないけど(笑)。
いわゆる稲垣吾郎は、何も変わってないな。
ドイツに降りたのは空港だけでも…
――19年前のフォトエッセイとの違いは?
稲垣: 違うことといったら、花、でしょうか。19年前は潜在的には好きだったかもしれませんが、興味がなかったんですよね。でも最近、僕の生活の中で花が占める割合が大きいんです。今回のフォトエッセイには僕が撮った花の写真も載っていますよ。
――タイトルの『Blume』にはドイツ語で「花」という意味があるそうですね。
稲垣: 今回のフォトエッセイの出版には、ファンの方たちに今までの感謝の気持ちを込めて花束を贈るという思いもあります。「フラワー」とか「ブーケ」とか色んなタイトル候補があったんですけど、深い意味はなくドイツ語にしました。音の刺激というか、ちょっと硬質な感じというか・・・いま46歳なので、少し大人の男の雰囲気にしたかったんですよね。
僕自身、ドイツは空港に降りたことしかないんですが、音楽やアートなど好きなものが多いんです。趣味のワインもドイツ産はすごく好みだし、車やカメラもいい。このご時世だから難しいかもしれないけれど、いつか行ってみたいですね。ちょっと余談なんですけど、前世占いをやったら「ドイツ人だった」って占師に言われたこともあって。だから「Blume」にしたってわけじゃないけど、縁があるのかなと思ったりもしました(笑)。
ファンの姿、より身近になった
――3年前にグループが解散して、新しい地図としての活動を始められました。
稲垣: 新しい地図として活動するようになってから、新しいことをどんどん始められるようになったと感じています。稲垣吾郎らしさは昔から変わってないけれど、環境を変えてスタートしたことによって新しい自分とたくさん、出会えました。
グループ活動を否定しているわけではないですが、やっぱり何十年も同じグループ・環境で仕事をしていると、少し凝り固まるというか・・・パターン化して自分のスタイルみたいなものが決まってきちゃう部分もありました。
これまではトークをしたり、司会をしたりといった機会が、少なかったんですよね。グループの中でポジションがあって、喋りが上手なメンバーがいたから。僕はいじられたり、得体の知れない存在みたいに扱われたりする場面が多かったです。
20代前半で作家の村上龍さんと対談したときに「稲垣くん、話聞くの大変上手だね」って言われたことが、すごくうれしかった(笑)。でも対談やインタビューはそんなにやってきませんでした。僕が話す番組は、TBSの『ゴロウ・デラックス』くらいだったかな。
グループじゃなくなったいま、パーソナリティや司会といった仕事をするようになり、僕にとっては新鮮ですね。ABEMAの『7.2新しい別の窓』という番組の中でも、色んな文化人と語り合うコーナーがあります。最近では9月25日公開の草彅(剛)くん主演の映画「ミッドナイトスワン」の内田英治監督と対談しましたね。
――新しい地図として活動を始めてからは、ブログやSNSもやっておられます。
稲垣: ブログやインスタ、YouTubeを新しい地図では役割分担をしてやっていて、僕はブログ担当。始めてから、ファンの方々とのつながりを、より感じられるようになりましたね。テレビだと大勢のファンや視聴者は画面の向こう側。ネット上では一人一人コメントをくださり、それを僕が読める。一つずつ返信や「いいね」のボタンを押すことはできないんですが、一対一でつながっている感じがしています。
応援してくれる方々の“生きている姿”も感じられる。例えばライフステージがどんどん変わり、結婚、出産してお母さんになったりしながら、今でも応援してくれている女性のファンの存在も、僕らの方から見えるようになりました。
ファン同士のつながりも増えましたね。僕らが一つのプラットフォームみたいになってファン同士のコミュニティができる。本当に良いことしかないなって感じています。
だけど、僕らの主戦場はやっぱり生で、お客さんの前に立ってパフォーマンスをすること。ブログやSNS はその補足ですかね。いまはコロナの流行もあって、リモートでコンサートなんかもありますよね。色々と試行錯誤していかなきゃいけないと、思っています。
●稲垣吾郎(いながき・ごろう)さんのプロフィール
1973年、東京都生まれ。1991年CDデビューし、2016年12月まで男性アイドルグループ「SMAP」のメンバー。『稲垣吾郎の金田一耕助シリーズ』(2005~09)や、映画『十三人の刺客』(10)などで活躍した。解散後は香取慎吾さん・草彅剛さんと「新しい地図」を設立。主演映画『ばるぼら』が2020年公開されるほか、バラエティ番組『不可避研究中』、ラジオ『THE TRAD』『編集長 稲垣吾郎』、インターネット番組『7.2 新しい別の窓』などに出演している。
著者:稲垣吾郎
出版社:宝島社
価格:本体2500円+税
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