稲垣吾郎さん「中居正広さんの寄付、気持ちがうれしい」新しい地図のコロナ対策基金

「新しい地図」として活動している稲垣吾郎さん(46)の19年ぶりとなるフォトエッセイ、『Blume』(宝島社)が9月18日、出版されました。今回はコロナ禍でのエンターテイメントの重要性や有名人が果たす役割、寄付を募るファンドの設立などについて、お話をうかがいました。

厳しいときこそ、エンターテイメントが力になる

――新型コロナウイルス感染症の流行で、ご自身の生活スタイルや考えは変わりましたか?

稲垣: 世の中は本当に大きく変わったけれど、僕自身の生活にはあまり変化がないですね。不謹慎に思われるかもしれないんですが、みなさんが言う“おうち時間”みたいなのがもともと好きだし、家族と一緒に暮らしているわけでもないので。
仕事に関しては影響を極力受けないように、スタッフの方が環境づくりをしてくださっています。ラジオなんかも普通にやらせてもらってる。ただ、イベントやコンサート、舞台の中には延期になってしまったのもありましたね。
生活にはなかったですが、価値観の変化はありました。人に対する思いやりや感謝の気持ち、そして人とのつながりが、より大切だと感じるようになったんです。コロナがあるからというよりも、一人で考える時間が増え、立ち止まって色んなことを見つめ直すきっかけになったからだと思います。

――エンターテイメントは今後、どう変わっていくと思いますか?

稲垣: みんないま、模索している最中ですよね。もちろん生のよさがあって、舞台やコンサートは配信がある時代でも生で見てもらいたいし、お客さんも絶対、生がいいんだと思うんです。でもデジタルだからできることもある。
これから色んなエンターテイメントが、生まれてくると思います。生の楽しみはゼロにはしたくないけど、人それぞれ、生活に応じてピックアップできるのがデジタルの良さ。僕はデジタルとアナログの両方をまたいできた世代だし、それぞれの良さをちゃんとわかっていたいですね。「モノが好きでアナログを大切にしたい」というのは信条としてあるので、うまくチョイスしながらみなさんに届けていきたいです。

――今年はコロナの感染拡大があり、毎年のように大きな災害も起きています。災厄時の有名人の役割をどのように考えていますか。

稲垣: 東日本大震災の時に、「歌の力によってすごく救われた」との声をたくさん聞きました。あのとき、多くのアーティストが自分の生きる意味や、活動してきた価値を改めて感じたと思います。
僕もそうでした。出演していた番組で何度も被災地に行ったんですけど、「エンターテイメントが求められている」ということを痛感しました。
困ったときには現実から離れて、楽しい気持ちになりたいと思うことが僕もあります。音楽はメッセージを伝えることもできれば、腹抱えて笑いたいって気持ちに応えることもできる。ほかのエンターテイメントからも救われたり、勇気をもらったり、助けられたり、暇つぶしになったり…誰だって生きていたら厳しいことがある。そんな時の支えになる力が、あると思います。
届けた作品を喜んでもらえたり、誰かにとっての宝物のようになったりするなら、それ以上に幸せなことはありません。僕が何を求められているかは、人によってそれぞれだと思うけど、ちゃんと耳を傾けて、応えていきたいですね。

たくさんの賛同が得られたコロナ対策の寄付

――新しい地図は4月、日本財団とともに「LOVE POCKET FUND(愛のポケット基金)」を設立し、「新型コロナウイルスプロジェクト」では医療従事者などへの支援金の寄付を募集。賛同も多く、現在も続いています。

稲垣: 本当に多くの方が協力してくださり、たくさんの額を寄せてくださったことはすごくうれしかったです。寄付をしたくても、どこにしたらいいかわからない人も結構いたみたいで。作家の湊かなえさんも寄付してくださったのですが、「どこにしたらいいかわからなくて、うずうずしてた」とおっしゃっていた。タイミングがよかったですね。募金ファンドはずっとやりたいと思っていて、コロナが流行する前から計画していました。
まだまだ始まったばかりだし、世の中がこれからどうなっていくかわからない。この活動は意欲的に続けていきたい。それに寄付して頂いた皆さんのお名前はみなさんに知ってもらいたいと僕は思うので、定期的に公表していきたいですね。

――寄付をしてくれた人の中には、中居正広さんのお名前もありました。

稲垣: そうなんです。もう本当に感謝しかないですよね。
僕らが募金をしているからってわけじゃなくて、「寄付したい」っていう本人の気持ちがあって、僕らのファンドを選んでくれたんだと思います。「困ってる人の役に立ちたい」っていう中居さんの思いでやったこと。そういう風に愛を分けてくれたという話を聞いたときは、すごくうれしかったですね、
困っている人の力に少しでもなれたことを考えると、本当にやってよかった。何かしらお役に立てていたらすごくうれしいし、中居さんも多分、喜んでくれているんじゃないかなって思います。

男が花を部屋に飾ったっていい

――先が見えない状況が続いています。今回のフォトエッセイを手に取る方にはどんなことを感じてもらいたいでしょうか?

稲垣: 「女だから」とか「男だから」みたいな従来の価値観をなくしていきたいですね。あらゆることは、女性も男性も一緒に楽しめると僕は思っています。男だって花が好きでいいし、美容に興味があってもいい。「女性だからこうしなければいけない」っていうような考え方は好きじゃないんです。それが僕の個性であり、価値観。このエッセイでは、そこを楽しんでもらえるんじゃないかな。男性にもすごく読んでもらいたいですね。
花が好きなので花屋に行くのはルーティーンなんですが、コロナ禍で、花屋で男性に出会う確率が高くなりました。家で過ごす時間が多くなって、いつもの風景にちょっと一輪、花を飾ってみようと考える人が増えてきたんだと思います。お祝いごと向けの花は売れなくなっているようですが、「生活の中で花を取り入れる人が増えている」と花屋さんがおっしゃっていました。男性もすごく、変わってきていると感じます。

だから、女だから男だからというのは今の時代はない、と思うんです。女性も男性もみんな一緒に、素敵な年の取り方をしていければ、いいですよね。

●稲垣吾郎(いながき・ごろう)さんのプロフィール
1973年、東京都生まれ。1991年CDデビューし、2016年12月まで男性アイドルグループ「SMAP」のメンバー。『稲垣吾郎の金田一耕助シリーズ』(2005~09)や、映画『十三人の刺客』(10)などで活躍した。解散後は香取慎吾さん・草彅剛さんと「新しい地図」を設立。主演映画『ばるぼら』が2020年公開されるほか、バラエティ番組『不可避研究中』、ラジオ『THE TRAD』『編集長 稲垣吾郎』、インターネット番組『7.2 新しい別の窓』などに出演している。

Blume

著者:稲垣吾郎
出版社:宝島社
価格:本体2500円+税

1989年、東京生まれ。2013年に入社後、記者・紙面編集者・telling,編集部を経て2022年4月から看護学生。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。
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