福士誠治さんがバンドを始めて感じていること「やりたいこと、やらないと面白くない」

舞台や映画、ドラマなどで活躍している俳優の福士誠治さん(37)。2月6日からは、イスラエルとパレスチナによる「オスロ合意」の裏側を描いた舞台『Oslo(オスロ)』に出演します。芸能界に入ったきっかけや、30代半ばで新たに挑戦したことへの思いを聞きました。

オーディション雑誌から申し込み 何でもやってみたかった

――芸能界入りのきっかけは、雑誌に載っていたオーディション情報だそうですね。

福士誠治さん(以下、福士) :テレビに出ている人たちって自由な感じがして、憧れました。僕はもともと目立つのが好きで、学校の運動会での徒競走は一番になりたかったし、リレーではアンカーをやりたいというタイプ。
どうやったらテレビに出られるのか考えていたところ、雑誌からオーディションに申し込めるのだと知り、何もわからずに手探りで応募し始めました。本当は「スカウトされました」と言いたかったけど、誰も声をかけてくれませんでした(笑)。
モデルや歌手、タレント、何でもやってみたいという気持ちで、俳優になりたいかも定かではなかった。お芝居はやったことがなかったので……事務所に入ってからレッスンを受けさせてもらいました。面白くて、そこから勉強しながら、俳優のお仕事をメインでさせてもらっています。

朝ドラ、俳優人生の転機に

――2006年には、昭和初期から戦後にジャズピアニストを目指した女性の姿を描いたNHK連続テレビ小説『純情きらり』で、ヒロインの夫・松井達彦を演じました。朝ドラのオーディションは何度か受けたそうですね。

福士 :あの頃の僕はオーディションを受けてお仕事をもらうのが基本だったし、できる限り何でも出たかった。贅沢言って仕事を選べる立場でもなかったので、申し込めるものがあれば「じゃあ送ろう!」という感じでした。朝ドラは『純情きらり』の前にも2回、書類を送った記憶があります。
最終審査は、3人くらいだったかな。当日に連絡を頂いて、「ヒロインの相手役に決まりました」と。たくさん出番があると思っていなかったので、台本を開いて驚きました。マネージャーさんに「これ、重要な役だね」と言ったら「そうだよ」と言われたのを覚えています(笑)。

――朝ドラに出演したことで、その後の仕事に影響はありましたか?

福士 :半年の放送で、すごく多くの人に覚えて頂けましたね。僕自身もだし、達彦という役名で覚えてくださる方もいて。全国どこでも見られるから、地方に行ったときに出会う人たちも「見たよ」と声をかけてくれました。
オーディションではなく、仕事のオファーをいただけるようになったのも、朝ドラ以降ですね。やっぱりすごいですよね、影響が。僕の俳優人生の転機です。
僕が何の仕事をしているかピンときていなかった両親も、とても喜んでくれたし安心してくれました。「ちゃんと頑張ってるんだな」って。

何歳になっても、やりたいことをやる人は魅力的

――2年前には、ドラマなどの音楽を手がけている濱田貴司さんとバンド「MISSION」も結成し、ボーカルを務めています。

福士 :もともと音楽が好きで、俳優業をやりつつ、関連することもやらせてもらっていました。なんとなく自分の中に「歌いたい」という思いが、ずっとあったんですよね。そういう中で濱田さんとの出会いがあって、一曲一緒に作って、きっかけを頂きました。「どうせならライブをやろう」となり、「ライブをやるならバンド名必要だよね」という流れで、あれよあれよと形になっていった。

――30代半ばでの新たなチャレンジ。勇気がいりませんでしたか?

福士 :何でもできるじゃないですか、人間って。
「30代半ばだからバンドなんて組んでいる暇ない」ということよりも、やりたい気持ちがあるなら、それを優先した方がいい。やらないと面白くないし、うまくいかなかったとしても、多分それは失敗じゃない。そう思うから、僕はできたんでしょうね。
バンドを始めてから、ファンの方によく言うのは「やりたいことは、今からでもやりなよ」ということ。スキーやサーフィンみたいな遊びでも何でもいいのですが、何歳になっても新しいことをやる人って魅力的だと思うので。
俳優としての僕のファンの方が、MISSIONのライブに来てくれることもあって「ライブハウスは、初めて来ました」と言ってくれる。やっぱりうれしいですよね、その人に初めての経験をしてもらえたということが。
他の仕事がある中でライブをしているので、スケジュールを組むのは大変です。でもやるために動くことが大事なので、基本的にポジティブに考えています。

――今後どのように年を重ねていきたいですか?

福士 :何事も「楽しいな」と思いながらやりたいです。あらゆることが年々楽しくなってきている実感があるので、自分を信じて今後もやっていきたい。
僕は面倒くさいことにも積極的に首を突っ込むタイプ。「やりたくない」を口にせず、人様に迷惑をかけない程度にわがままに生きたいです。まぁ、多少迷惑をかけても、周囲の人は「楽しい」と思ってくれていると信じています。

●福士誠治さんのプロフィール
1983年、神奈川県生まれ。『ロング・ラブレター~漂流教室』(フジ系・02年)でドラマデビュー。06年、NHK連続テレビ小説『純情きらり』にヒロインの夫役で出演。近年の主な作品にNTV系「トップナイフ~天才脳外科医の条件~」(20年)。映画は『劇場版仮面ライダーゼロワン』(20年)や『ある用務員』主演(21年)などに出演。

舞台『Oslo(オスロ)』
2017 年、トニー賞演劇作品賞をはじめ、オビー賞、ドラマ・デスク賞など数々の演劇賞に選ばれた話題作の日本初演。1993 年、世界中の注目が集まるなか、イスラエルとパレスチナが初めて和平交渉に合意した「オスロ合意」。この奇跡の瞬間までに、何が行われていたのか――大きく寄与した一人の男と、彼の熱意に突き動かされた人々のドラマを描いた史実に基づくストーリー。2月6日から新国立劇場 中劇場で上演され、宮城、兵庫、福岡、愛知でも上演の予定。

1989年、東京生まれ。2013年に入社後、記者・紙面編集者・telling,編集部を経て2022年4月から看護学生。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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