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【グラデセダイ42 / かずえちゃん】あなただけに言うね…僕がオンラインサロン「かず部屋」を始めた理由

「こうあるべき」という押しつけを軽やかにはねのけて、性別も選択肢も自由に選ぼうとしている「グラデ世代」。今回はYouTubeを通してLGBTQのことを発信している人気YouTuber、かずえちゃんのコラムをお届けします。今回はオンラインサロン「かず部屋」を立ち上げた理由について。

●グラデセダイ42

みなさん、オンラインサロンって聞いたことありますか?
はじめて聞いた方は是非「オンラインサロン」とググってみてください。
ひと言で言うと「ファンクラブ」のようなものかなと思います。
しかし、従来のファンクラブと違うのは、主催者側が「発信」し、ファンが「受信」というカタチではなく、そのサロン(ファンクラブ)のメンバーひとりひとりが発信者であり、受信者であるということです。
そしてメンバー同士で、そのコミュニティを創っていく…そんなイメージだなと感じています。

僕は2020年6月1日 オンラインサロン「かず部屋」を立ち上げました。
オンラインサロンに興味を持ったのは、昨年の夏ごろでした。
「同じ想いを共有できる仲間がいれば、もっといろんなことができるかもしれない……」
海外生活を通して感じた自分らしく生きることの大切さ、そしてLGBTQであることは恥じることでも、悪いことでもないということ。
「LGBTQってもっと身近にいるよ」「あなたはひとりじゃないよ」ということを多くの人に知ってほしい!
そんな想いで2016年7月に始めたYouTubeも今年で丸4年になります。
この4年間を振り返り、強く感じることは「すべては知ることから始まる」ということです。

セクシャリティ / 性別 / 年齢 / 職業…など関係なく集まったメンバーで結成されたオンラインサロン「かず部屋」

カナダで生活していた頃に知り合った日本人のトランス女性がいます。
彼女(以下、Aちゃん)とは、日本に帰国したタイミングが同じだったこともあり、一緒に旅行したり、食事をしたり、帰国してからも仲良くしていました。
Aちゃんは「男」のカラダで生まれました。
でも、Aちゃんはなんで周りの人は自分を「男」として扱うのかわかりませんでした。
Aちゃんはトランスジェンダー(MTF)です。
生まれたときのカラダの性と【性自認】(自分が自分を認識する性・こころの性)が一致しません。
僕はLGBTQでいうと「G」のゲイです。
YouTubeを始めるまで、「G」以外のセクシャリティの人とはあまり会ったことがありませんでした。
だからAちゃんに初めて会ったとき、「トランスジェンダーって聞いたことはあったけど本当にいるんだ……」と思いました。

僕はAちゃんといろいろなことを話しました。
一度、Aちゃんと恋愛の話をしたとき、「Aちゃんってどんな【男性】が好きなの?」と尋ねました。
「私は【女性】が好きなの」とAちゃんは言いました。
僕はAちゃんが「女性」ということは、Aちゃんが好きになる性別は【男性】だと思い込んでいました。
なんというか……すごく申し訳ない気持ちと自分の無知を恥じました。
そして思いました。「自分は、これまでの人生のなかで知らず識らずのうちに人を傷つけていたのではないか」と……。
Aちゃんの【性的指向】は【女性】だったのです。
※性的指向(自分はどの性を好きになるか)

メンバーとは定期的にzoomで交流会や勉強会を開催している

YouTubeを始めたころは、動画をアップすることがメインの仕事。
しかし、時代の変化もありLGBTQの講演会や勉強会、イベントなどの仕事もだんだん増えていきました。
そして、同じことを伝えたとしても「届けるツールが違えば、届く人も違う」ということをあらためて感じました。
例えば、新聞やTVから情報を得る人、オンラインニュースから情報を得る人、SNSから情報を得る人……というように、情報を発信するツールが増えれば、情報を収集する手段も、人それぞれ違ってくる。
YouTubeで発信して返ってくる「声」と、新聞やTVで取り上げてもらった(発信した)ときに返ってくる「声」は、同じテーマであったとしても、若干違う「声」で返ってくることを感じました。
そして発信する場所(ツール)が多ければ多いほど、より多くの人の元に、自分が伝えたいことを届けることができると感じました。

「91.1%がアライになる必要がある」

以前、とある講演会で聞いた忘れられない言葉です。
2018年 電通ダイバーシティ・ラボが行った調査で8.9%(約11人に1人)がLGBTという結果がでました。
8.9%の人たちが声をあげることも大切だけど、残りの91.1%の人たちが共に声をあげることもとても大切だということです。
自分自身、カミングアウトする前と後で大きな変化があったとすれば、それは「怖くなくなった」ということかもしれません。
LGBTQのイベントに行きたいけど知り合いに会ったらどうしよう。職場でゲイってバレたらどうしよう。
カミングアウトする前の自分に、「今のように声をあげることはできた?」と尋ねても、「怖くてできなかった」と答えたと思います。

「かず部屋」のキャラクター「アライ熊」。ALLYステッカーで「私はアライ」を見える化する

現在「かず部屋」には、約50人のアライがいます。
僕が思うアライとは「セクシャリティや性別、年齢、職業……etc.」そんなものに囚われず、自分にできることは何かを考え、行動できる人だと思っています。
LGBTQの「G」の僕は、お隣さんの「L」さん「B」さん、そしてそのお隣さんの「T」さん「Q」さんのことを以前は全く知りませんでした。
そして「LGBTQの友達がいること」と「LGBTQの知識があること」は全く別だということを、Aちゃんとの経験を通して痛感しました。

すべては知ることから始まります。

いつか「LGBTQ」そして「カミングアウト」という言葉がなくなる……そんな日を創るためには「ひとりひとりの行動(アライ)」が必要なのです。

「かず部屋」はこちらから

1982年福井県生まれ。高校卒業後、ウエディングプランナーとして働く。その後24歳で転職。仕事の休みを利用しながら色々な国へ。「いつか海外で生活したい」という思いから、30歳でカナダへ語学留学。同性婚が認められているカナダで約3年間生活した。「LGBTQがもっと暮らしやすい日本にしたい」という思いから、帰国後2016年からYouTubeで動画配信を始める。現在アドレスホッパーとして生活中。 Youtubeチャンネル登録者数7.8万人(2019.9月現在)
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