グラデセダイ

【グラデセダイ37 / Hiraku】 社会的終息に向けた、私のポストコロナライフ

「こうあるべき」という押しつけを軽やかにはねのけて、性別も選択肢も自由に選ぼうとしている「グラデ世代」。今回は、中村キース・ヘリング美術館プログラム&マーケティングディレクターのHirakuさんのコラムをお届けします。今回はHirakuさんが考えるポストコロナライフとは?

●グラデセダイ37

少し前ですが、5月10日にニューヨーク・タイムズの記事で、パンデミックの終息は歴史的に2種類あると読みました。社会的終息と医学的終息。社会的終息とは、世の中が行動制限や自粛に我慢できなくなり、ウイルスと共存することを選び、終わりを宣言すること。一方、医学的終息とは、ワクチンや治療薬でのウイルスの根絶や感染者の完治による終わりです。そしてなんと、歴史上のパンデミックのほとんどの終息が社会的なものなのだそうです。
新型コロナウイルス・パンデミックにおいて、日本では社会的終息を選択したようです。
参考:How Pandemics End<https://www.nytimes.com/2020/05/10/health/coronavirus-plague-pandemic-history.html

もともと菌やウイルスに関して少し潔癖な部分があった私は、新型コロナウイルス感染症がニュースになり始めた今年2月から、徐々に行動を制限し始め、3月からは完全に山梨県で自主隔離を選びました。5月に緊急事態宣言が解除され、会社の意向で仕事も完全再開。6月になると世の中が社会的終息に向かい始め、人口の多い都内にはその月の終わりに、やっと戻りました。
私の自粛生活は約4ヶ月。この4ヶ月間、いろいろな思いが巡りました。
今回は、社会的終息に向けた私の「ポスト」パンデミックライフについて書きたいと思います。

混んでいるレストランには行かない

そもそも昔から列に並ぶのが苦手で、並んでまで欲しいものや入りたい場所はありませんでした。ですが、日本に住み始めると、どこに行っても列だらけ。飲食店に行けばほとんどは待ち時間がありますよね。そして、さらに日本の飲食店の特徴は、テーブルが狭い上に、席間隔が狭い。どんなに広いレストランでも、できるだけお客さんを入れたいというビジネスストラテジーなのでしょうか、隣の人の会話が聞こえてきたり、荷物がこっちのスペースに入ってくるほどの距離感です。また、日本人って日中はおとなしくても、日が落ちるとお酒を飲む人が多いせいか、声が大きく笑い上戸になるんです。大音量で笑いながら話すと唾も飛びやすくなり、特にウイルスと生きて行くには危険な環境なので、混んでいる飲食店は避けます。
経験上、午後5時、6時くらいに行くと、ほとんどのレストランは空いています。早めに夕食を取る習慣を身につければ、リスク回避に役立つかもしれません。

大勢や知らない人がいる密室には行かない

コロナ前、初対面のグループとの飲み会や初対面のグループとカラオケなどに友だちからよく誘われました。去年のクリスマスについてのコラム<https://telling.asahi.com/article/12940180>で書いたように、私の20代はとにかく初対面の人たちと毎日会っては騒いでという人生でした。なので、今更新しい出会いを求めていないのが正直な気持ち(彼氏は欲しいですが)。見知らぬ人との飲み会やカラオケは苦手だったので、これを機会に罪悪感なく誘いを断れる口実ができました。

映画館に行けないのはとてもつらいですが、しばらくはやめておきます。窓もなく、ドアも閉まっていて、さらに隣の席と後ろの席のあの近さはかなりの配慮がないとリスクが高いですよね。たまにプレミアムシートがある映画館があります。新宿ピカデリーのプラチナシートなら隣とは結構な距離が置かれていて、さらに背もたれが高く、後ろからは頭も見えないくらいなので、唾液が飛んでくる心配もないのかなと思います。高額ですが、プラチナルームはプライベートです。

ジムも退会しました。密室で体を動かし、息も荒くなる環境で、マスクなんてしていられないし、私の通っていたジムは早朝でも案外、人が多かったのでもう諦めることにしました。

電車には乗らない

日本といえば満員電車で有名な国。駅員さんが乗車する人たちを車両に押し込む衝撃的な写真を見たとき「そんなことないでしょ」と思っていました。しかし、本物の光景を目にしたとき、唖然としました。緊急事態宣言が発表され、変わらず電車に乗って出勤している(せざるを得ない)人たちの様子がソーシャルメディアで話題になっていました。

それから日本に住み始めてカルチャーショックだったのは、電車など公共の場での咳、くしゃみ、あくびのエチケットでした。アメリカでは人前で口を覆わずに咳やくしゃみ、あくびをすることはマナー違反だとされ、時には赤の他人から注意を受けることもあります。ところが日本では、電車のような密閉された場所でも平気でこの3つが口を覆わずに行われます。今までずっとこの日本の咳エチケットに違和感を感じていましたが、これからウイルスがどんな変化を遂げ、どんな感染経路を辿るのかも未だ分からない今、私はついに自転車を買い、なるべく電車を避けるようにしました。
しかし都会で生活をする上で、どうしても電車に乗らなければならないときがあると思います。そんなときは、マスク、手袋をつけて完全防備で乗車するしかないですね。
ちなみに山梨から特急に乗るときは、手すり、壁、窓などすべて除菌ワイプで拭いています。

PPE(個人用保護具)を常備する習慣をつける

アメリカの健康保険制度は複雑で、特に若い人たちの多くは保険に入れていません。そのため、大きな病気に一度かかってしまうと、何十万、何百万円も自己負担しなければいけないのです。そのせいか、周りもみんな外から中へ入るときは必ず石鹸で手を洗い、手指消毒ジェルを持ち歩く習慣がありました。
日本のトイレにはハンドソープがないことが多く(ちなみにニューヨーク州でこれが保健所に見つかると、減点されて改善するまで店を閉めなければいけない場合もあります)、外出すると困っていたので以前から消毒ジェルは持ち歩いています。さらにこれも前から所持しているのですが、ニトリル素材の使い捨て手袋、アルコール除菌ワイプ、マスクを常に持ち歩いています。
先日4ヶ月ぶりに仲のいい友だちカップルと再会し、席間隔の広いレストランへ行きました。席に着くとまず消毒ジェルで手を消毒し、除菌ワイプでテーブルとカトラリーを拭きあげます。そのあとトイレで手を洗って席に戻り、注文をするという手順でした。これ、かなり大変に聞こえますが、会話しながらササッとやってしまえるので、そんなにおおごとでもないのです。
ただ、デートでこれをやると、相手はどう思うかはわかりませんが。デートもしばらくお預けですね。

部屋を片付ける

ビデオチャットをする頻度、みなさんも増えていませんか?私はあまり好きではないのですが、年に1、2回だったのから月に2、3回程度に増えました。また、仕事関係でビデオ会議も増えたので、そのときは家にいても上半身は何かしら見られても恥ずかしくない格好でいるように気をつけています。また、特に仕事関係の人には散らかった部屋を見せるわけにはいかないので、部屋の中は整理するように心がけています。友だちと話しているときも、スクリーンショットしてソーシャルメディアに投稿されたりすることもあるので気をつけています。

お金の使い道を変える

見知らぬ人やただの知り合いなどとの不要不急な関わりを避けることにより、外食費、ギフトや出かけるための洋服に使うお金など金銭面でも出費が少なくなりました。また、ジムの退会なども含め、今まで定期的に払っていたものも減りました。代わりにジムに行かずに部屋でエクササイズできるためのトレーニングベンチやダンベル、部屋の整理整頓用、環境改善のために収納ケースや観葉植物、家電などに投資。自粛中に起こった数々の事件などによって改めて考えさせられた人権問題の影響もあり、これからは社会活動団体にも個人レベルで金銭的協力をしていくべきだと思っています。そこで、毎月払っていたジムの会員費を、まずは自分に身近で、さらに自分が加害者の立場<https://telling.asahi.com/article/13429437>にいる可能性のある「Black Lives Matter<https://blacklivesmatter.com/>」へ毎月回すように登録しました。

今回挙げたコロナ社会的終息に向けた心得の中には、そのうちそこまでする必要がなくなるものもあると思います。ですが、医学的終息を迎えるまで、ウイルスとの共存は現実であり、あくまでも社会的に「終息」とするだけなのです。周りの雰囲気が変わっても、新型コロナウイルス感染の危険性が減るわけではありません。特に今の時期はまだ感染拡大第二波の可能性も十分にあります。この状況について、政府が問題視せずに経済や国際的な評判に集中するのであれば、自分の身は自分で守り、注意を払っていくしか他に方法はないのです。

おそらくこの環境下で、私の恋愛は当面先のことになってしまうと思いますが、まずは心も体も自分が健康でなければ何も始まらないので、そちらに集中します。

どうかみなさんも健康で、できるだけストレスフリーな2020年後半を過ごせますように。

ニューヨーク育ち。2014年まで米国人コスチュームデザイナー・スタイリスト、パトリシア・フィールドの元でクリエイティブ・ディレクターを務め、ナイトライフ・パーソナリティーやモデルとしても活動。現在では中村キース・ヘリング美術館でプログラム&マーケティングディレクターとして、自身が人種・性的マイノリティーとして米国で送った人生経験を生かし、LGBTQの可視化や権利獲得活動に積極的に取り組んでいる。
グラデセダイ