【グラデセダイ22 / かずえちゃん】世界はこんなに広いのに、僕らはとても狭いセカイで生きている
●グラデセダイ22
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2月17日は、朝から雪が舞う寒い日だった。
この日、福岡では111年ぶりに最も遅い初雪が観測された。
そして寒いのが苦手な僕は福岡にいた。
日本には法律上の性別が同じカップルが結婚できるための法律が今のところない。
わかりやすく言うと「同性婚」ができない。
2019年2月14日
「すべての人に結婚の自由を!」をスローガンに、日本に暮らす同性カップルたちが同性婚を認めないのは憲法が保障する「婚姻の自由」や「法の下の平等」に反するとし、国を相手に裁判(同性婚訴訟)を起こした。
そして初雪が舞うこの日、僕は福岡地方裁判所で開かれる裁判(九州訴訟)を傍聴するため福岡に来ていた。
37年の人生で初めて「裁判所」というどこか自分には縁遠いと思っていた場所に向かう僕は朝から緊張していた。
【「裁判所」ってどんなイメージですか?】(Twitterで聞いてみた)
「怖い」
「主張」
「認めてもらうための場所」
「現実」
「感情よりも法律にのみ支配されている」
「戦う」
「裁く」
「真実を見抜いて守ってくれるところ」
「正義」
「争う」
僕も同じようなイメージを持っていた。
そして「あまり行きたくない場所」
そう思っていた。
博多駅からバスに乗り、福岡地方裁判所に到着したときには、すでに多くの方が傍聴券を求めて列をなしていた。
初めての裁判所。
張り詰めた空気。
満席の傍聴席。
人々の険しい表情。
「なぜ僕はここに座っているのだろう?」
ふとそう思った。
そして原告の意見陳述が始まった。
なぜか涙が止まらなかった。
「悲しい」
「悔しい」
「つらい」
そんな感情の涙ではなかった。
でもひとつ言えることは、彼(原告)の語った言葉は僕そのものだった。
僕が傍聴席に座り、心に強く誓ったこと
僕は小学生のとき、自分の中にある「男性」への特別な感情に気づいた。
怖かった。
そして彼(原告)の言葉ひとつひとつが当時の記憶を鮮明に蘇らせた。
胸が締め付けられた。
過去の自分のために、そして過去の自分と同じ思いをしている子どもが少しでも減るように……。
「行動しよう!」
傍聴席に座わる僕は強く心に誓った。
こんなデータがある。
2016年に、宝塚大学看護学部の日高庸晴教授が全国のLGBTQ当事者約15,000人を対象に意識調査を行った。
その結果、10代の約50%が学校生活(小・中・高)において「いじめ被害」を経験したと回答。10代のトランスジェンダー(MTF・FTM )の「不登校」経験率は57~58%であった。
日高教授らが約2,000人の男女を対象に実施した別の調査によれば、ゲイ・バイセクシュアル男性の自殺未遂リスクは異性愛男性と比較して5.98倍だった。(2001年の調査による)
Ally(アライ)
「Ally」と検索すると「LGBTQを理解し支援する人」と紹介されることが多い。
解釈は人それぞれあると思うが
僕は「〇〇のために【何】が出来るか【考え】共に【行動する】こと」だと思っている。
最近とても感銘を受けた本がある。
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(ブレイディみかこ著/新潮社)
イギリスの公立中学に通う息子の学校で起こる人種差別・経済格差・貧困問題・ジェンダーなどさまざまな問題。
その問題にぶつかる息子の葛藤、そして困難にぶつかりながらも成長していく姿を描いた作品だ。
この本のなかで「Put oneself in someone's shoes(誰かの靴を履いてみること)」という言葉がある。
広い世界の狭いセカイ
SNSを使い、自分の意見を発信できる時代。
同じ考えや意見を持つ人に共鳴(いいね!)する。
「自分は正しい」と思い込む。
違う考えや意見を持つ人を批判する。
そして批判されている140文字を探し「自分は正しい」と思い込む。
そして対立する。
「自分には関係ない」って顔をした傍観者もいるだろう。
世界ってこんなに広いのに、この広い「世界」のなかには多くの狭い「セカイ」が存在する。
もし、互いに「なぜそう思うんだろう?」と考えることができれば、
そして、自分と違う理念や信念をもつ人のことを想像することができれば、
このセカイはきっと少しだけ「優しいセカイ」になるのかなって思う。
最後に、九州訴訟で彼(原告)が語った言葉を紹介する。
“今の社会には私のように「もしかしたら自分は同性を好きかもしれない」と感じて誰にも本当のことを言えず未来も描けず、必死にもがきながら生きている子どもたちがたくさんいると思います。
私とパートナー(※原文は名前が入ります)の未来を勝ち取ることで、その子たちに早く不安のない毎日や明るい未来を見せてあげたい。
そういう強い思いで私は原告になりました。そんな未来はすぐそこに来ていると信じています。”
そして、そんな未来をつくることができるのは、僕たち1人1人の想像と行動だと思う。
是非、あなたも誰かの靴を履いてみてほしい。
原告2人の動画もアップしました。ぜひご覧ください。
タイトルイラスト:オザキエミ
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