「捨ててよ、安達さん。」安達祐実が井戸田の婚約指輪を捨てる展開は、ほんとにフィクション?

安達祐実が“自分役”に挑むリアル&フィクションストーリー「捨ててよ、安達さん」が話題です。安達さんが家のなかの不要不急のものを捨てるという、はからずも時代にマッチしてしまった本作。第6話で捨てられるのは元夫からの指輪。元夫、スピードワゴン・井戸田潤を思わせる展開の結末は?

女優・安達祐実が安達祐実本人を演じるテレビ東京系ドラマ「捨ててよ、安達さん。」は、ライフスタイル雑誌の企画で、安達が毎号ひとつだけ私物を処分するというストーリー。5月22日に放送された第6話では「前の夫の婚約指輪」と向き合う、元夫のスピードワゴン・井戸田潤を思わせる展開だ。元夫&処分される指輪の擬人化役を演じた渡辺大知の井戸田感はなかなかだった。

現実的な安達と浮かれる井戸田

第1話~4話までのテーマは「代表作のDVD」「輪ゴム&レジ袋」「初代ガラケー」「親戚のおばさんの手作り時計」。“無くても困らないけどちょっと捨てづらい”という断捨離あるある的なニュアンスを含んだ話だったが、第5話では「誰からも好かれたい気持ち」と精神性の問題に発展し、物語に奥行きを見せていた。

そして第6話は「前の夫の婚約指輪」。断捨離あるあるだし、精神的な問題でもあるし、元夫の井戸田潤を思わせるしで、要素たっぷりのチャレンジングな回だ。

この日も安達の夢の中には、謎の少女(川上凛子)と捨てられる予定の指輪(渡辺大知)が元夫の姿で登場する。結婚式の思い出から出てきたのか、指輪はビシッとタキシードで決めているのだが、安達と離れ離れになる寂しさからどうにも歯切れが悪い。

「捨ててください、安達さん!」

安達に幸せになってほしい指輪は、片膝をつき、まるで一世一代のプロポーズのように捨ててくれと懇願する。しかし安達は少し乗り切れない。そこまで思い出を重要視していない女と、勝手にいろいろストーリーをこじ付けて思い出をロマンチックなものに変えてしまう男、現実でもよくある構図だ。

さらに指輪は「思い出の海」(安達は覚えていない)に自分を捨ててほしいと要求する。男の思いを全部乗っけた婚約指輪が擬人化したら、これぐらいロマンチストになっても不思議ではないなと妙に納得してしまう。

感情ダダ漏れの渡辺大知

海に捨ててくれという要求を安達に「ドラマの観過ぎ」と全否定されると、指輪は「最後くらいドラマチックに終わらせてくれたっていいじゃないですか!」と声を荒げる。

「この人たちの生活費となり、血となり、肉となるわけだよ。海の底で眠るのとどっちがいいって話だよ」

しかし、謎の少女に質屋に売ると説得されると、今度は「俺、役に立てるんですね。安達さんとお嬢さんの役に立てるんですね!」と涙を流して喜ぶ。

真っ直ぐだけど浅はかで、思いは強いくせにやけに素直で、優しいのに相手の気持ちを察することができない、そんな役に渡辺大知がハマっていた。愛嬌のある大きな口と目のせいだろうか。喋ってもいないのに考えていることがいちいちダダ漏れで、喋り始めても自分の言葉でテンションが上がってしまうダメ可愛い感じ。ビシッと決めたタキシードがカッコ悪いギャップを生んでいて、いちいち表情を大きく変える様には井戸田感もあった。

「なんでこの2人が結婚を?」と若干不釣り合いにも感じる始まりだったが、その読みやすい表情と単純な性格で、どんな夫婦生活を送っていたのかを簡単に想像させてくれた。

ハンバーグ師匠も登場?

登場したのは元夫ではなく、あくまで“元夫がくれた指輪”。安達は指輪に「楽しかったね」と楽しい思い出の感謝を伝えた。離婚したぐらいなのだから何か嫌な思い出もあるはずだが、それでも綺麗な思い出としてお別れをする決意をしたのは、今が幸せだからだろう。そんな思い出たっぷりの指輪に、安達の娘がもうひとアクセントほど展開を加えてエンディングを迎えた。

元夫の話ということで、今回は特に攻めていた印象。フィクションとはいえ、安達祐実本人の話を元に作った部分もあると勘繰らずにはいられないし、細かい部分でも妄想させてしまう余白は多かった。思い込みかもしれないが、指輪の私服はちょっと井戸田っぽかったし、最後に安達が洗い物をしながら見ていたテレビも、ハンバーグ師匠のネタっぽかった。

本人出演のフィクション。この素材を存分に生かす思わせぶりな第6話だった。

企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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