「東京ラブストーリー」弱った心と身体におかゆがしみる。カンチ、“おかゆ女”に落とされる9~10話

90年代の恋愛ドラマの金字塔「東京ラブストーリー」が29年ぶりに帰ってきた!平成版の濃ゆいキャスト陣に変わって、伊藤健太郎、石橋静河、清原翔、石井杏奈という令和版キャストはシュッとした現代っ子たち。9~10話では、いよいよ関口さとみが本領を発揮!遠距離恋愛中で風邪を引いたカンチの部屋にやってきて、おかゆを作ってみたり……。ますます気になる三角関係のゆくえは?

1991年に放送され、最高視聴率32.3%を記録した伝説のドラマをリメイクした令和版「東京ラブストーリー」第9~10話。

三上健一(清原翔)と長崎尚子(高田里穂)の関係が大きく変化するが、そっちがどうでもよくなるくらい、カンチこと永尾完治(伊藤健太郎)と赤名リカ(石橋静河)の仲を引き裂く関口さとみ(石井杏奈)の行動に震え上がった!

平成の“おでん女”、令和では“おかゆ”でカンチを籠絡

第8話で、カンチが「リカは我慢させる側の人間だから」という最悪の発言をしたことで別れの危機を迎えていたふたりだが、カンチが謝罪をすることでアッサリ仲直り。リカをニューヨークに送り出すことに。
空港でキスしたかと思ったら、

「がんばれリカ!」
「愛してるよカンチ!」

なんて大声で叫ぶなど、だいぶ浮かれたバカップルっぷりを発揮していた。
日本とニューヨークという遠距離恋愛になって以降も、そこはスマホがある時代。毎晩、テレビ通話で深夜まで話し続け、リカから大量に送られてくる絵はがきを壁に貼って、にやけるカンチだったが……。
リカの渡米から半年過ぎる頃、カンチは会社内でオリンピック案件を任されるほどのポジションになっており(スゴイねー)、仕事の忙しさからか、リカとの通話も上の空になりがち。それでも、疲れているカンチが寝ることを許しつつ、

「カンチの寝息聞きながら作業するから」

電話を切らないでと頼むリカ。メチャクチャかわいくない!?
そんな時、カンチは風邪をひいて寝込んでしまう。こういう絶妙なタイミングでメールを送ってくるのが関口さとみなのだ。

「今晩、時間あったらご飯でも行かない?」

これ以前にもカンチを映画に誘ったりしていたが、いくら高校時代からの男友達とはいえ、彼女と遠距離恋愛中の男に対して、ちょっと距離感近すぎないだろうか。
結局、この日も自宅に上がり込んで、おかゆを作るさとみ。この、何も考えていないようでいて男心を的確に突いてくる感じが……。
心身共に弱っている時のおかゆが、まんまとしみてしまったカンチ。

「最初はさ、リカが言うように離れても全然大丈夫だと思ってた。だけどリカがいなくなって、リカと会わない方が、リカに振り回されない毎日の方がずっと気持ちがラクって感じるようになっちゃったんだ」

弱音を吐いて泣き出してしまう。それを抱きしめてあげるのまではギリギリセーフとしよう。しかしその後……キス!
このキスが、最近の地上波ドラマではまずお目にかかれないドエロさ。

「あっ、しちゃった」的なハプニングっぽいキスからの、ガチでディープなキスに展開。ベロンベロンベロンベロン……完全に“気の迷い”じゃないヤツ!

風邪で意識もうろうとしていそうなカンチはまだしも、さとみはさっきまで、

「これリカさんから? 見てもいい? なんか素敵だね、この時代に手書きの絵はがき。あっ、カンチ愛してるって書いてある!」

なんて言ってたのに、その直後にキスするか!
平成版では絶妙なタイミングでおでんを持ってきてカンチとリカの仲を引き裂いた“おでん女”と呼ばれたさとみだが、令和版ではおかゆでカンチを籠絡しよった。

「永尾くんとキスしたの」ってアナタが言っちゃうの!?

そんなタイミングでリカが突然帰国する。ここからの、女の静かな戦いに震えた!
せっかく帰国したのに、そっけない態度のカンチに女の勘が働いたのか、さとみの職場である幼稚園に現れたリカ。ここでさとみから、今週イチの爆弾発言が飛び出す。

「私、永尾くんとキスしたの。永尾くんが風邪で寝込んでるっていうからお見舞いに言ったんだけど、その時、色々悩んでいるみたいで、泣き出しちゃって。それで……」
「できれば、聞きたくなかったな」

正直に言わなきゃ的な誠実さをアピールしつつも、「カンチが悩んでいた」という情報を入れ込むことで微妙に責任は回避。そもそも、まだカンチが言っていない段階で、リカに話しちゃうって……ホントに恐ろしい女!
リカから、カンチのことが好きなのかと問われたさとみは、「今は、まだ分からない」との返答。“今は”という色々と含みを持たせた発言もズルイ!
これを聞いたリカの、色々な感情が死んだ、無の表情がつらかった。
リカに対してこんなことを言った上で、カンチを呼び出して「あの日からずっと、永尾くんのことばっか考えてる!」なんて言っちゃうあたりも……さとみ、ナチュラル・ボーン・ヤバ女だよ!

「自分が最低なこと言ってるってことも分かってる。どれだけきれい事を並べても、リカさんにとって私は、悪者でしかないことも……」

こうやって「悪いのは私」的に自己陶酔することも忘れない。
カンチと行った映画館で、三上と尚子に遭遇した際も、なかなかの爆弾発言を炸裂させていた。

「素敵なヘアアクセですね。三上君からのプレゼントですか? それ、私も欲しかったの」

言うねー! 原因は三上の浮気だったとはいえ、すがりつく三上の腕を振りほどいて別れを決意したのは自分。
それでも、「大好きな靴だったからさ、他の人にはかれるの悔しいじゃん」と語っていたように、三上が他の女と仲良くするのは許さない!

「三上くんと関わるとホント、ロクな事がないよ。自分のイヤな部分がどんどんあぶり出されてイヤになる!」

三上くんと関わっていない場面でも、まあまあイヤな部分を出してるよ、さとみちゃん……。さとみと関わるとホント、ロクな事がないよ!

明かされたリカの妊娠。結末は……!?

平成版で演じた有森也実の元には、大量のカミソリが送りつけられるくらい視聴者から嫌われていた関口さとみ。
令和版でも相変わらずのヤバ女っぷりを発揮しているのだが、それでも脚本家的に「さとみにだって共感してもらいたい!」という意図があるのか、「さとみは悪くないよ」要素がちょこちょこ入れ込まれている。
たとえば平成版では、さとみがおでんを持ってカンチの家を訪れた際、リカとの待ち合わせに行こうとするカンチを「行かないで!」と引き留めている。これは完全にさとみが悪!
一方、令和版ではカンチに「(遠距離恋愛中のリカとの関係が)何か……疲れる」と語らせることによって、「リカとカンチを引き裂いたのはさとみ」という要素を薄めている(あんまり薄まってないけど)。その代わり、カンチがだいぶダメ男になってしまっているのだが。
ちょっと前まで「リカは絶対、オレじゃなきゃダメ!」「グッモーニン、リカ!」なんて浮かれまくっていたのに、たった半年で「疲れる」ってどういうことだ。

「リカに振り回されない毎日の方がずっと気持ちがラク」というが、そもそもリカに振り回されてたイメージないけど……。約束をすっぽかしたり遅刻したりしてリカを振り回してたのはカンチだろ!
結局、三上との恋愛に疲れたさとみ、リカとの遠距離恋愛に疲れたカンチというショボイふたりが、手近なところで手を打った感が……。

「リカと、ちゃんと別れる」と言っていたカンチだが、ラストにはリカが妊娠していることが明かされた。

原作にはあったものの、平成版ではカットされていたこの妊娠エピソード。リカが妊娠しているかしていないかで、結末の印象がだいぶ変わってくるのだが、令和版には入れてきた。
原作と同じ結末に向かって行くのか、それとも変えてくるのか。最終回となる次回の配信が気になって仕方がない!

「東京ラブストーリー」
出演/伊藤健太郎・石橋静河・清原翔・石井杏奈、他
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「東京ラブストーリー」(1991)
出演/織田裕二・鈴木保奈美・江口洋介・有森也実、他
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1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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