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「積み重ねた10年が『なかったこと』に」私が#同窓会スルーしたい理由

年末年始。地元で過ごす人の中には、学生時代の同窓会のようなものに顔を出す人も少なくないかもしれません。久しぶりに会う友人たちとは、どんな話題で盛り上がりますか? 普段している仕事の話、苦労や頑張ってること、次の目標……を、バリバリ話し合える昔の仲間はあなたにはいますか? 今回は、「なぜか同窓会になると、結婚や出産や、未婚者の婚活話ばかりになること」にもやもやし、「#同窓会スルー」したくなっている32歳・女性のコラムです。

「何も変わらない光景」への違和感

先日、大学時代の友人たちと10人ほどで集まる機会があった。卒業以来の顔ぶれもいて、転職した友人がどんな仕事をしているかも聞きたかったし、共通の友人が職場で活躍している話なんかでも盛り上がりたかった。

しかし、話題は誰が結婚したとか、子供が生まれたとか、そういうことが中心だった。
そういう話も楽しいけれど「○○ちゃん結婚したんだって」「へぇ、だれと?」「会社の人と」「そうなんだ〜」が繰り返される会話は、なんとなく時間がすぎるのを長く感じさせた。

飲み会が終盤にさしかかると、出席者のうちのひとりがどうしたら結婚できるかに話題は集中した。
「飲み屋で知り合うとかは?」「結婚相談所に入会すれば一発」「そもそも、あと5キロ痩せなよ」

既婚者の友人たちは男女問わず、どこか上気したような雰囲気さえ醸し出しながら、熱心にアドバイスをしていた。
それは学生時代、いじられキャラだった相談者と、いつも嬉しそうにそのキャラクターに“甘えて”いた周りと、何も変わらない光景だった。

変わっていないことが、私には違和感だった。

「結婚しているかどうか」だけがフォーカスされる

卒業から10年、地方赴任を孤独に乗り切った友人も、新卒の配属先が「ブラック職場」で辛酸を舐めた友人も。子育てと向き合う彼女も、そしてなんとか日々やっている私も。
それぞれの10年がある、積み重ねてきたものがある。
なのになぜかそれはなかったことになって、「結婚しているか」「していないか」だけがフォーカスされる。してない人は当たり前に「アドバイスされる側」へとまわされる。
女性だけでなく男性既婚者たちも、久しぶりの「恋バナ」が楽しいのかもしれない。得意げにあれこれと提案という名の指図をしていた。

私はその場の空気を変えたくて、「最近はどんな仕事をしているの?」なんて話を振ってみたりもしたけど、それぞれに適当な反応をしては、またすぐに「恋バナ」へと話題は戻っていった。

彼らのことはもらった名刺以上のことはほとんどわからないままだった。

同窓会で、恋愛や結婚以外の話をするのは難しいのだろうか。たとえば仕事の話なんか。確かに、職種が違えば皆の活躍は想像しづらいかもしれない。でも、それでいい。頑張ってることを知りたい、頑張れてないなら愚痴ってくれていい。たまに会うだけだ、かっこ悪いなんて思わない。
結婚や出産も喜ばしいトピックではあるけど、それ以外にも、会わない間に山ほどいろんなことはあったはずで、聞きたいこともたくさんあったのに。

もしかすると、仕事の話はどこかマウントに聞こえてしまって遠慮している人もいるのかもしれない。「○億のプロジェクトを動かしている」「こんな人といま仕事をしている」……。
では、「夫がやさしくてこどもが可愛くて」と家族写真を見せられることはマウントにならないのか。
少なくとも未婚の私にとってはやや耳が痛い話題もあった。自分だけが人生ゲームの、まだ「そこ」にたどり着けていない遅れをとった駒のように思えた瞬間もあった。
「キャリア」や「してきたこと」が加味されないそのゲームにおいては、少なくとも私は劣等生だった。

「変わらない仲間」のふりは疲れる

どれだけ歳を重ねて、素敵な仕事の経験や思い出を積み上げていっても、古い友人たちの前ではそのバックグラウンドはリセットされる。人物相関図がアップデートされることはない。
「結婚してない人」は焦ってるふりをし、「“ちゃんと”結婚できた人たち」の助言をありがたく受け取る(ふりをする)。
学生の頃の「いじられキャラ」とか「仕切り屋」だとかの昔の属性に逆戻りして、自分の歩んできた道や、同様に、みんなが歩んできた道もまるで無視されて。

色んな経験をして確実にみんな変わっているはずなのに、「変わらない仲間たち」のふりをするのって、ちょっとだけ疲れる。
変わったみんなのことを知ったり、受け入れるほうがよっぽどラクなんだけどな。

そんな同窓会が、この年末年始にも待っている。
1分1秒と地元に近く度に、少しずつ自分のやってきたことが剥がれていく感覚を覚えながら、電車に揺られていくのだろう。

20~30代の女性の多様な生き方、価値観を伝え、これからの生き方をともに考えるメディアを目指しています。
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