telling, Diary ―私たちの心の中。

営業先への接待。「はーよかった。美人な人が来て」に心が折れた。

telling,世代のライター、クリエイターたちが日々の思いや本音を綴る「telling, Diary」。telling,ではこれまでも「セクハラ的な何か」についてたびたび議論してきました。今回は、営業の仕事にやりがいを感じている女性(28歳)のお話。営業先の担当者との食事の席で投げかけられた、あまりに無神経な言葉とは――。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

会ったことのない取引先の男性にアポイントをとったのがはじまり

新卒で入った会社は今年で6年目。28歳になります。
学生時代はバリバリの体育会だったので、むしろちょっとハードなくらいじゃないと物足りない性分。営業の仕事は結構楽しいです。

兼ねてから契約をとりたい案件があり、先輩から担当者の連絡先を引き継ぎ、セールスのアポイントをとることにしました。
が、不親切な対応ではないものの、忙しいクライアントのようで、なかなか会うことは叶わず何カ月も電話だけでの売り込みが続きました。

ある時、突然その担当者から「一度会って話そう」と連絡が来ます。
指定された時間が夜というのは気になりましたが、その会社と私の会社は長くつき合いがあり会社の気質もよくわかっているので、「会社の飲み会の盛り上げ要員として呼ばれたのかな」と、ここは覚悟を決め、「弊社代表」という心づもりで指定されたお店へ向かいました。
ところが、私がすべき覚悟は全く違う所にあることがわかります。

やってきたクライアントが放った衝撃の一言

お店に到着すると、通されたのは薄暗いカウンターの2人席。
完全なるサシ飲み。
「うわぁ……。これは……」
それでも私、営業マンなんで。割と鈍感になれるんですよね。2時間我慢すればいい、なんかあったら上司にすぐ連絡すればいいって。
そこに40代半ばの男性クライアントが到着、私の顔を見た瞬間こう言ったのです。

「はぁーよかった。美人な人が来て」
「え?」
「いや、今日初対面じゃん?美人じゃなかったらどうしようかと思ったんだよね」

まるでマッチングアプリでひっかけた女の子を見るような目で私を見る。
しかも、マッチングアプリで会った子になら絶対に言わないようなことを(私がお願いする側の立場だから)言えちゃう。

「いやぁ。僕たちよくね、君の会社の若い子で誰がかわいいかって話するんですよ。君の名前結構あがってるよ。でもよかった、噂どおりの美人で」

それから2時間、仕事の話をすることはなく、散々容姿について話題にされ、自慢話を聞かされ、解散した。

翌日。正直、お礼の連絡をするか迷っていた。1秒だって仕事の話はできていない。あんなの、接待とも言えない。
すると、とどめを刺すようなLINEが。一言、

「美人でよかったです!」

もう、気が抜けて。何やってるんだろうなぁ自分、って思えて。

夜に会いに行った私が悪い……?

「なぜ、顔も合わせたことのないクライアントと夜に会ったのか」
「営業資料を渡すくらい、メールでやればいい」

全部、わかってることなんです。でも、仕事が決まらないのは直接会って話していないからだ、とか、大企業の管理職の人に自分の顔を覚えてもらって、他の仕事にも繋げるんだって、思っちゃうんですよね。

この人多分、相当慣れてるんだなって思います。
散々「かわいい」を連呼しても、自慢話を連ねても、初対面ではさすがに最後まで強引に手を出してきたりはしないんです。それがアウトなことはさすがにわかってる。

でも、2時間ずっと、やんわりと「お前を仕事相手として見てはいない。若い女としてしか見ていない」ことを、私に思い知らせようとしてくる。

上司に「セクハラされました」と報告するほどでもないような、ギリギリのラインを狙って、自分の晩酌のお供として横に置くだけ置いておく。
隣にいるのは誰だっていい。でもどうせなら知らない女の子より、自分の仕事を理解してる女の子の方が気持ちいい。

なんかもう。こういうのってずっと続くんですかね。
私どうすればよかったんですかね。

20~30代の女性の多様な生き方、価値観を伝え、これからの生き方をともに考えるメディアを目指しています。
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