セクハラ成仏座談会 03

相手は若い女と飲みたいだけ!「ムダ接待」がこの世からなくなればいいのに

「男女平等」、「女性の活躍」って世間は言うけれど、現実社会は有象無象の「セクハラ的な何か」であふれています。そんな事例を集めて編集部員の座談会によって”成仏”させようという「セクハラ成仏座談会」。第3回は、取引先の男性に食事に誘われ、立場を利用して「お酌」をさせられた営業女子のお話です。 〈座談会の顔ぶれ〉 ・成仏させる子(29): この企画の発案者。セクハラの横行する老舗企業で20代を過ごし、転職後、自らの「セクハラセンサー」が麻痺していたことに気づく ・猪突猛子(30):フェミニズムに興味を持つ突進系記者 ・データ信奉子(34): データに基づく冷静な分析を得意とする理論派 ・肩身狭男(37):ほぼ女性ばかりの編集部で肩身の狭い男性編集者

●本日のお題

新卒で入った会社で営業の仕事をして6年。兼ねてから契約をとりたい案件で、取引先の男性担当者から突然、「会って話そう」と連絡が来て、夜に2人きりで食事をすることに。
ところが相手は「はぁーよかった。美人な人が来て」と、私の容姿の話や自分の自慢話を延々続けたあげく、仕事の話もなく解散。強引に手を出してくるでもなく、上司に「セクハラ」と報告されないギリギリのラインを狙って私に晩酌のお供をさせたわけです。こういうのって、ずっと続くんでしょうか。私はどうすればよかったんですかね。

成仏させる子(以下、成仏): 私もこういうこと、経験あります。手は出してこないくせに下ネタをふってきたり、あとで「そばにいたい」みたいなスタンプを送ってきたり、キワキワのセクハラをしてくる。許せません。

猪突猛子(以下、猪突): 今どき、夜に接待したからって仕事をとれるほど世の中甘くない。本当に仕事ができる人は、夜の接待なんて求めてこないでしょう。こんな男性、相手にしてもしょうがないと思います。

データ信奉子(以下、データ): この男性の場合はそうでしょうが、私は、女を使って仕事をとれる自信があるなら使えばいいと思います。めちゃくちゃ切り札になるカードとしてそれを持っていて、最後の勝負どころで自分がハラを決めて使うんだったら、使えばいい。そこはあくまで、個人の自由。逆に、嫌なのに接待に行ってつらい思いをするくらいなら、最初からそんな場に行かなければいい。

猪突: でも、20代の頃は営業の作法も分からないし、人脈もまだまだない。どう頑張れば結果が出るのかってわからなかったりする。やみくもに動かなきゃいけないとなると、接待だって行かざるを得なくなりますよ。

成仏: 確かに。女の営業は男と同じ条件で動けないのが悔しいです。こちらは接待で相手とビジネス上の信頼関係を深めたいと思っていても、接待される側は「美人が来てラッキー」くらいの気持ちで異性として見てくる。そこで拒絶すると、「あの子とはコミュニケーションがとれない」と、仕事の場に遺恨を持ち込んできたりする。立場をたくみに使いわけてこられて、心底腹が立ちます。男性は、どう思っているんでしょう?

肩身狭男(以下、肩身): うーん……、まあ、若い子と話せてラッキー、とか、タダでキャバクラに言ったような感覚になっちゃう人もいるんでしょうねえ。いや、僕はそんなこと思いませんよ(汗)。

データ: そういう場面での男の側の脳内期待値補正がすごいというか。サシで接待飲みに行けただけで、本気で「この子は俺に気があるんだ」と思っちゃう人がいる。「合意したと思っていた」と性暴力に及んでしまう人と根底は同じ発想なんじゃないかと思っちゃいます。

成仏: もっと怖いのは、女性の側が「餌付け」されてしまうこと。地位のある人が大きな案件をぽんって、気まぐれに取引先の若い子に与えたりするのをたまに見かけることがあります。よく見ると案件は大きいけど、業務としては端っこの、上の人の裁量でどうとでもなるようなことだったりする。でもその新人にとっては「手柄」なわけだから、「私が仕事をとってきた!」っていう成功体験になって、「接待で仕事をとれるんだ」って刷り込まれてしまう。男性側も「俺が仕事を与えてやる」と恩を売り続けて、また接待させるわけです。

猪突: うわぁ。でも、それで得られるのなんて小さな案件だけだし、「成功体験」でも何でもないですよね。そういう仕事の仕方を覚えてしまうと働いていてつらくなりそう。そもそも接待なんかしなくてもいいように、「仕事ができる人」になればいいんじゃないでしょうか。

肩身: 確かにそうですね。でも現実はなかなかそうはいかなくて……僕たち男性社員の中では、「僕たちは仕事ができないから接待をする」って、名言のように言われていたりしますよ。

データ: なんか「いい話」みたいに言ってるけど、それって、成長を放棄しているってことなんじゃないですかね。自分の営業力のいたらなさは改善しないままになってしまう。

肩身: う……図星かも。とにかく飲んで情に訴えろってことですからね。

成仏: そういう風潮自体を、どうやってやめさせるかですよね。セクハラされてあとで上司に報告しても、「行ったお前が悪い、そんなの下心あるに決まってるじゃん」と、逆に怒られたりとか。本当に味方がいないと感じます。

猪突: せめて、上司や先輩などの周りが変わってほしいですね。若い子が入ってきた時に、もうそんなことやらなくていいからね、と言ってほしい。

成仏: 下心を持った男性の側を変えるのは難しいけど、もうそういう接待自体が意味ないし、時代遅れだよという文化にしていきたいですね。接待をしなくても良い結果を出している女の先輩がどうやって仕事をしているのかを見ならって、どんどん真似していくとか。私たちに今できることは、そんなことなのかなぁ。

【成仏させる子のつぶやき】
下心ありありの接待先の男性、本当に腹が立ちますよね。社会人をしていたら、多くの女性が似たような体験をしているのでは。すぐに変えていくのは難しいのかもしれませんが、これまで社会で「セーフ」とされていたことが実は「アウト」だったんだよ、みんな本当は嫌だったんだよ、と、まずは声を上げていくことが大切だと思います。そして、嫌な相手との接待に悩んでいる人は、思い切って断ってしまいませんか? きっとその接待なしでも、社会はこれまでと変わらず回っていくのではないかと思います。 

  • ●あなたのセクハラ体験募集
    telling,編集部では、あなたがこれまでの人生で受けたセクハラや、はっきり断言できないけれど「これってセクハラでは?」と感じた体験談を募集します。telling,編集部員が座談会を通してあなたのモヤモヤを共有し、どんな対処法があったのか、どうすれば同じようなことが起きない世の中になるのかを考えます。
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