セクハラ成仏座談会 02

泊まりで打ち上げってパワハラなの?

「男女平等」「女性の活躍」って世間は言うけれど、現実はどうでしょうか。telling,世代の女子たちは日々、上司や同僚によるゲスすぎるセクハラ発言や、グレーゾーンだけどモヤモヤする「セクハラ予備軍」に悩まされています。そんな有象無象の「セクハラ的な何か」を集め、編集部員の座談会によって”成仏”させようという「セクハラ成仏座談会」。第2回は、「仕事の打ち上げに“泊まり”はセクハラ?パワハラ?」について討論します。 〈座談会の顔ぶれ〉 ・成仏させる子(29): この企画の発案者。セクハラの横行する老舗企業で20代を過ごし、転職後、自らの「セクハラセンサー」が麻痺していたことに気づく ・猪突猛子(30):フェミニズムに興味を持つ突進系記者 ・データ信奉子(34): データに基づく冷静な分析を得意とする理論派 ・肩身狭男(37):ほぼ女性ばかりの編集部で肩身の狭い男性編集者 ・相談主子(33):本日の相談者

●本日のお題

半年ほどかけたプロジェクトの打ち上げが、温泉街への泊まりで行われることになりました。メンバーは上司2人も含めた男性7人、女性3人の計10人。そのうち一人の上司から、過去にセクハラされたことがあるし、休日に職場の人と泊まりがけで打ち上げ……とても苦痛です。これはセクハラ・パワハラにはならないでしょうか。

このお題について、セクハラの横行する老舗企業出身で長らく麻痺していた「セクハラセンサー」を起動させ、浮世にさまようセクハラ事例(セクハラ地縛霊)を成仏させるべく立ち上がった成仏させる子。フェミニズムに傾倒する突進系記者・猪突猛子 、データ分析が得意なデータ信奉子、黒一点の男性編集者・肩身狭男とともに臨みます。

耳元で「ちゅーしたい」

成仏させる子(以下、成仏): 上司から、どんなセクハラを受けたんですか?

相談主子(以下、相談): 5、6年前になるんですけど、部内の飲み会後に3人でカラオケに行ったとき、ふざけた感じで押し倒されたり、耳元で「ちゅーしたい」って言われました。全力で突き飛ばしましたが、翌日、その上司は記憶がなくて、それ以上声をあげたりもしませんでした。

肩身狭男(以下、肩身): 飲み過ぎて我を忘れるタイプはいるけど……。ぼこぼこに殴っちゃえばよかったのに。

猪突猛子(以下、猪突): これはもう明確にアウト!さすがに6年前のことを今、怒ることはできないけど、もしまた起こったらすぐ通報しましょう。

断ったら出世に響く?

データ信奉子(以下、データ): 難しいのはこの「泊まりで飲み会」がパワハラにあたるか、っていうことですよね。断れなかったんですか?

相談: 直接的に人事考課が下がることはないと思いますが、プロジェクト型の仕事は、リーダーがメンバーを指名してチームがつくられる。つまり、リーダーに好かれないと次の大きなプロジェクトに呼んでもらえない。そうしないと経験も積めないし、出世の道はないんです。
母親から、「会社の飲み会や宴会は繫がりをつくるのに大切だから、積極的に出なさい」とすり込まれてきた影響もあると思います。仕事にプラスになる、と思ってるんですよね。

猪突: でも、休みの日に行われて、しかも参加して当たり前、という雰囲気がいや。「子どもがいますから」とか言えれば、断りやすいのに。

相談: 断っても許されるランキングみたいなのありますよね。①子ども・介護する人がいる ②夫がいる ③ペットがいる ④恋人がいる……となると、彼氏なし・一人暮らしの私はほぼ断れない。「もちろん行くよね?」っていうふわっとした同調圧力があって、言えなかった。でも、後輩から「先輩がきちんと断らないから、悪しき文化はなくならない」と言われたことがあって、心にひっかかってもいるんですよ。

私のため?後輩たちのため?

成仏: この場合、相談さんが本当に大事にしたいのはどっちなんだろう。一つは、自分を守るためにストレスをなくすということ。目の前の自分の嫌なことをかわしつつ、時代が変わるのを待つのか。もう一つは、後輩たちのために悪しき文化を引き継がない、チームをよくしたいなら、自分の感情と切り離して「役割」として声をあげたほうがいいのかなって。

相談: 言ってることはすごくよくわかるし、共感する。でも、どっちも同時に実現するって難しい。自分の身を守れずに、他人を守ることはできないと思うし。これまで、私が幹事をした時は、無駄に高い会場を使ったり、新人に出し物をさせたりする悪しき文化を、徹底的につぶしていった。

肩身: 今回の問題の解決策が、行きたくない飲み会の幹事をする……っていうことなのでしょうか。それはつらいね。

成仏: 優しくて正義感のある人を、どうやって救えばいいのか……。

相談: 自分は、今は幹事をやることが静かな改革だと思ってます。今回の泊まり打ち上げは、私がチームに入った時には幹事がもう決まっていたから、出遅れたのが敗因なのかなと。

成仏: 元々は、打ち上げってプロジェクトが終わったことへの「ねぎらい」の場なんですよね。上司世代は、「飲み会」という形しか思いつかないんだと思う。

相談: あ、私の後輩は打ち上げで、動物園やディズニーランドに行ったって言ってました。

猪突: そ、それはそれで私は嫌だな……。

データ: どんな形がいいか、メンバーによって柔軟に考えられたらいいのにね。

【成仏させる子のつぶやき】

泊まりの飲み会が、パワハラかどうかについてはパキッとした答えや線引きは難しそう。「誰かが“嫌だ”と思った時点でアウト」という考え方もあるし、「個人の好き・嫌いでパワハラ認定していいのか?」とも思うからです。
今回の相談主子さんは、組織やチームを否定したいわけじゃない。「ねぎらいの方法をアップデートしていきませんか」という提案を上手く伝える方法があればいいのにな、と思いました。
ただ、過去の上司のセクハラについては、押し倒されたり、「ちゅーしたい」発言を考えると完全にアウト。今回の泊まり打ち上げは、セクハラ要注意人物がいるということを理由に、参加を断っても良いのかなと私は思いました。

  • ●あなたのセクハラ体験募集
    telling,編集部では、あなたがこれまでの人生で受けたセクハラや、はっきり断言できないけれど「これってセクハラでは?」と感じた体験談を募集します。telling,編集部員が座談会を通してあなたのモヤモヤを共有し、どんな対処法があったのか、どうすれば同じようなことが起きない世の中になるのかを考えます。
20~30代の女性の多様な生き方、価値観を伝え、これからの生き方をともに考えるメディアを目指しています。
パワハラ110番