編集部コラム

映画「パッドマン」を見て思った「私、出世しなきゃ!」

telling,編集部日記。火曜担当の伊藤です。インドの女性たちのために、安価なナプキンを作った男性の実話を描いたインド映画「パッドマン」を見てきました。タブーである「生理」に、男性が食い込むことで誤解や困難が次々と起きます。遠い国の、10年以上前の話では終わらず、この異性間のコミュニケーションの難しさは、今の日本でもそのまま起きているんじゃないかと思って、ぞわっとしました。

●編集部コラム

物語の始まりは2001年のインド、主人公は新婚の男性ラクシュミ。愛する妻が、生理の日の処置に雑巾のようなぼろぼろの布を使っているのを見て、驚きます。「こんな汚い布を使っていたら病気になってしまう」。そこで、ナプキンの自作を試みます。開発・リサーチのために、女性たちにナプキンの使い心地を聞くのですが「女性の足と足の間の問題に、男が口を出すなんて恥ずかしい」といって村を追い出されます。その後、ナプキンが完成し、ラクシュミが普及させようとしても、女性たちは門前払い。ここで救世主パリーが登場。ぽんぽんナプキンが売れ、普及していきます。パリーはどんなすご技を使ったのか。答えは「私は女だから」。女の言うことなら女も聞いてくれるというのです。

「女から女」にしか伝わらない言葉がある、という事実には頷かざるを得ません。
もちろん、男女で差をつけて話を聞くのはおかしい、というのは正論です。でもやっぱり、何かしらのバイアスはかかってしまう気がします。

「おっさんtoおっさん」に翻訳する

ここまで考えてハッと気づきました。
逆もしかり。「男から男」にしか伝わらない言葉もある。

私は社内用の資料を作るとき、皮肉をこめて「OtoOに翻訳する」と言っています。「OtoO=おっさんtoおっさん」。男性上司がさらに上の男性上司に説明しやすいような資料をつくること。会社の決定権者の多くが男性なので、この作業が発生します。

本当に「男から男」にしかわからない言葉があるのなら、女性だけに需要がある「ナプキン的なるもの」は生まれにくい。男性の言葉に翻訳をしながら、「ラクシュミ=女性の需要がわかる男性」の登場を待つしかない……のか?

「O to O翻訳」のいらない社会へ

先日、1986年の男女雇用機会均等法施行後の第一世代の女の先輩と話す機会がありました。その方は、自分のアイデアを会社に通すとき「めちゃくちゃ社内政治した」と言っていました。翻訳者となる男性探しをしまくった、ということだと思います。

一方で、30代の女性の先輩に聞くと、「社内政治はあんまりしていない。ただ、新規の企画提案を求められていなくてもやり続けたり、自分が論理的に説明できない部分をフォローしてくれる頼りになる先輩を見つけて、自分のアイデアを通してきた」と。
なぬ!私はまだ全然実感できないけれど、ちょっとずつ社会は変わってきているのか……。

とはいえ2018年。「女性活躍社会」がかかげられている割に、女性の管理職の割合はまだまだまだまだ低い。平社員をしていると、同期の男女比率もほぼ一緒だし不平等を感じることはありませんでした。でも、上を見上げると決定権者の多くは男性です。まだまだ私たちのやることは、「ナプキン企画を立ち上げる」ではなく「ナプキン企画に賛同してくれる男性を探すこと」になっちゃっている気がするのです。

みんな、出世しようぜ!

もちろん、男性でも性別にかかわらず、新しい意見を取り入れていく方が出てきている、のは理解しているのですけれど現実問題としては、まだまだ難しい……。
だから、「O to Oに翻訳」のいらない社会になってほしいと思います。

とりあえず、決意しました。私、出世しよう!と。同期の女友達にもこの映画を激推しして、「みんな、出世しようぜ!」とラインしまくりました。冗談だけど本気です。

とってもいい映画なので、インド映画好きさんだけではなく、多くの方に見てもらいたいです。そして、みなさんも一緒に出世しましょう。(?)

  • 「パッドマン 5億人の女性を救った男」
    TOHOシネマズ シャンテ他 全国公開中
    監督・脚本:R.バールキ 出演:アクシャイ・クマール/ソーナム・カプール/ラーディカー・アープテー 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 
    http://www.padman.jp/
telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
あの日のお悩み「せいりせいとん」