「結婚相談所」を介してみるという選択
●婚活をナナメから見る
結婚相談所は婚活をどのようにサポートしているの?
華やかな音楽パフォーマンスから始まった「IBJサミット」は、「IBJ日本結婚相談所連盟」を運営する株式会社IBJが主催した会合で、会場である千代田区のイイノホール&カンファレンスセンターには200社以上の結婚相談所が集まりました。会場の熱気から婚活の機運の高まりを感じさせられました。
会合で印象的だったのは、相談所のアドバイザーによる成婚エピソードの紹介。
・相手と会う時はどんな服装がいいのか
・どんな会話をしたらいいのか
などをデートの前に綿密に打合せし、婚活者とアドバイザーの二人三脚で成婚にこぎつけた例が紹介されていて、そのきめ細かなサポートに驚きました。
選択肢が多様な今、逆に自分に合う選択ができない人もいる
一方で、実際にとある企業が運営する相談所を使ったことのある人に取材してみると、サポートに満足できなかったとの声もありました。
婚活中のE子は以前、ある結婚相談所に登録していました。彼女によれば、入会するとはじめに1時間ほどアドバイザーとの面談があり、その内容をもとに、プロフィールと他己紹介文をつくってもらいます。紹介文を本人も手直ししたうえで相談所が運営するウェブサイト上に登録。男女ともに気になった人にコンタクトを取り合うというシステムです。
払う金額によって、サービス内容が異なります。月額15000円を払っていた彼女は、最低でも月に1回はアドバイザーから男性を紹介してもらえるという契約を結んでいました。何度か会った男性もいたものの、アドバイザーによるサポートがほとんどなかったことや、登録後に相談所のサービス内容が変化してお金を払うメリットが感じられなくなったことから次第に解約を考えるように。結局彼女は1年で退会し、婚活パーティ主体の婚活に切り替えました。
相談所のサポート体制について、相談所を経営するある女性は
「相談所によってはマニュアル通りの説明が多く、アドバイザーやカウンセラーとのコミュニケーションがうまくとれていないケースもある」
と話します。
また、仲人となるアドバイザーが一人ひとり紹介していた時代と違って、婚活者自身がパソコンを使って相手を選ぶことも多くなり、「理想の相手と結婚したくて結婚相談所に登録したのに、出会えない」という不満が多くなったり、特定の婚活者に人気が集中したりして、成婚までの期間がどんどん長くなっているという印象もあるそう。
「情報が簡単に多く手に入るようになり、自分が今おかれている立場が分からない方が多くなった」とも。選択肢が増えたことで逆に自分に合う選択ができないというジレンマがここには見られます。
「だからこそ、やりがいがある」と熱意あふれる相談所の経営者たち
一方で別の相談所を経営する女性は、「そんな状況だからこそ仕事にやりがいを感じる」と言います。写真の技術が発達し、プロフィール写真がみんな同じように見えて決断しにくいなど、ハードルが高い案件で、自身のサポートによって成婚に至った時の喜びは自分自身の自信にもつながると話します。
個人で相談所を経営している方たちに話を聞くと、一様に「やりがいがある仕事だ」との答えが。相談所もさまざまです。婚活のサポートは人と人とのやりとり。相談所やアドバイザーとの相性で婚活の印象がかなり変わりそうです。
取材中、ひときわエネルギッシュな経営者たちに出会いました。全員が関西で相談所を経営する女性で形成された、その名も「チーム輝き」。平均年齢は72歳。彼女たちは定期的に相談会を開くとともに、地道なポスティング活動などで顧客を得ているそう。一見して感じたのはその人間味あふれる印象。この方たちだったら支えてもらえそうだなあ、という頼もしさを感じました。
平均年齢72歳、「恋愛や結婚っていいものですよ」
婚活で選ばれずに自信をなくしてしまったら? との問いにも、
「言う時ははっきり言いますよ、姿勢を正して相手の目を見て話す、などの具体的なアドバイスとともに、仲人が選んだ方とお見合いしていただき、ご自身を知ってもらう」などの方法で、自分の立ち位置を理解してもらうようにしています」
また、「結婚や恋愛はバラ色である」ということを伝えてモチベーションにつなげていくのだそう。断りを入れておくなら、現代において恋愛や結婚をするしないは個人の自由。それをふまえた上で、結婚や恋愛はいいものだ、と背中を押してもらうことは、婚活においては大事な支援なのかもしれません。
経営者自らの経験を踏まえた真摯な思いで婚活をサポート
彼女たちの熱い思いは自身の経験に基づいています。
藤井安子さん(80)は夫から反対されながらも30年以上、相談所の仕事をし続けてきました。一度は専業主婦になりましたが、息子の幼稚園でPTA会長をしていた時に知人の結婚相手を探したことがきっかけで仲人業に興味を持ち、結婚情報サービスの元祖といわれるドイツのアルトマン・システム・インターナショナルに入社。その後独立して自宅開業し、今に至ります。
「私は家庭で主婦業だけをすることに虚しさを感じて、自分のために生きたいと思ったんです。人様のお世話がこんなにも楽しいものかと、夢中になりました。今も、会員様に相談されると自分のことのように真剣に共に悩み、苦しみ、人生の生きがいとなっています」(藤井さん)
広告代理店などでキャリアを積んだのち、婚活事業を立ち上げた木村惠さん(54)は、自身の離婚や不妊治療の経験から、今婚活中の女性に「自分のライフプランを今一度考えてほしい」とメッセージを送ってくれました。
「自分が本当に仕事で生きていくのか、結婚したいのか、結婚したら子どもがほしいのか? 自分ひとりでできることはいつでもできる。たとえば、仕事・資格取得など。でも、結婚したいと思っても結婚だけはひとりでできません。そして出産には、適齢期があます。後でもっと早く結婚すればよかった、と後悔することのないような婚活をしてください」(木村さん)
婚活中の方を取材すると、1人で婚活を乗り切るのはなかなか大変だと感じます。相性のよい相談所を見つけてサポートしてもらうのも、ひとつの方法かもしれません。