本という贅沢。

究極の3択。「枯れる(レス)か、切れる(離婚)か、騙す(不倫)か」

毎週水曜日にお送りする、コラム「本という贅沢」。10月のテーマは満を持して(?)「不倫」です。男と女の永遠のテーマを考える1冊を、書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんが紹介します。

●本という贅沢。27

『目もと隠して、オトナのはなし』 (LiLy/宝島社)

先日、取材を受けました。なぜファッション誌のライターを辞め、書籍ライターに転向したのかという取材です。その原稿が昨日上がってきたのですが、タイトルまわりに「彼女はいかにして天職と出会ったか」と書かれていました。

この、「天職」という言葉を見た時、ちょっと違和感を感じたんですよね。
確かに私は書籍ライターという仕事を現在とても面白いと思っている。今の私のスペックで私の年齢で取り組む職業としては、とてもフィット感が高い職業だと思っています。
でも、人生100年時代、体が動く限り働き続けたいと考えるなら(考えている)、このままずっと書籍のライターをやっているとは思えないんですよね。
だから私にとって書籍ライターは「天職」というよりは、「現時点においての天職」くらいなものです。

で、このささやかな違和感を、どうやって取材してくださった方に説明しようかなあと考えていたところ、「あれ?この感じ、何かに似てる」と思ったのですよ。
そう、アレ。
結婚式とかでよく言われる「生涯の伴侶」という言葉に感じる違和感だ。

生涯の伴侶と言われると、一生添い遂げるのが当然感ありますけれど、伴侶だってまあまあ仕事と同じだと思うわけです。
人生100年時代。20代にベストな伴侶(仕事)と、40代にベストな伴侶(仕事)と、70代でベストな伴侶(仕事)は、それぞれ違うのが、普通に考えれば当然だと思う。
でも、職業選択の自由はあっても、婚姻中の恋愛に自由はないところが、若干、法律が片手落ちだよなと感じるところです。

副業解禁もそのうちスタンダードになるであろう昨今、結婚制度ももう少しフレキシブルになってもいいんじゃないの? 高プロ制度も導入すればいいんじゃないかと思うのですが、まあ、そうもいかないか。

さてさて。
telling,では「結婚制度爆発」的な企画が多いので、若干感覚が麻痺するんですが、普通、こういうことを大きな声で言うのはタブーなのでしょう。
でも、歴然として今ここにあるタブーに、目元を隠してモザイク入れながら、切り込んでくれているのが、このLiLyさんのエッセイでございます。

本文中にあるように、恋を「寝る=(SEX、刺激)」、愛を「眠る=癒し」と定義するならば、多くの夫婦は
①恋愛します → 恋ピーク。
②結婚します → 恋減少、愛増加。(ココ、つかのまのベスポジ)
③レスになります → 恋壊滅、愛増加
という時系列を辿るわけですよね。

正確に言うと、③の時点では、恋も愛も壊滅している可能性もあるのですが、その場合はちょっと脇に置いといて。

「夫に愛情はある。しかしSEXはできない」という場合、我々はその後の50年間、究極の3択を迫られるわけです。

A)枯れる(レスのまま一生を終える)か
B)騙す(こっそり不倫する)か
C)切れる(不倫するくらいなら離婚する)か

LiLyさんは、ここでC)を選んだ人。潔いと言えば、めっちゃ潔い(ちなみに3を選ぶ経緯は前作の「ここからは、オトナのはなし」に書かれています)。

この3タイプの割合は、どんなもんでしょうかね。
A:B:C=2:6:2くらいかなあ……。

  • LiLyさんの世界観が好きな人には、LiLyさんも愛読されている山田詠美さんの小説をおすすめ。1冊に絞り難いのだけれど、やはり『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』でしょうか。ちなみに私は山田詠美さんの『ぼくは勉強ができない』の主人公、秀美君のママ、仁子さんが人生の目標です。

それではまた来週水曜日に。

ライター・コラムニストとして活動。ファッション、ビューティからビジネスまで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『髪のこと、これで、ぜんぶ。』『書く仕事がしたい』など。