ローランド流・後輩育成術「寄り添うくらいがちょうど良い」
レディーファーストをたたき込む
――そもそも、ローランドさんが後輩指導に力を入れ始めたのはなぜでしょう?
23歳くらいの時に、ある程度ホストの仕事を極めたなって思ったんです。次は、新しいスターをつくりたいと思いました。
――これまで何人くらいの方を面接してきたのでしょうか?
3000~4000人くらいかな。採用率は50%くらい。8割が3カ月以内に辞めますね。以前はそのたびに傷ついていたけど、今は「辞める前提」で割り切って指導をするようになりました。
もちろん、採用した時点で大事な従業員ですから、責任をもって指導できると確信した人しか雇いません。学校だったら授業料をもらえますけど、お金を払って働かせてあげるわけですから、あれこれ結構厳しく言いますよ。それが嫌で辞める子もいるかもしれません。
――どういうことを指導なさるんですか?
「レディーファースト」を教え込みます。これは父の教えなんですが、「女には一生勝てない。勝とうと思うことがナンセンス。俺を見てごらん。ママに謝って、プレゼントばかりしているだろう」って(笑)。
その教えを受けているので、女性が何より優先だと染みついています。後輩たちには、まずは店舗の中、営業時間の5時間だけでも、そうやって意識してみようと伝えています。
俺たちは、原価の10倍でお酒を提供するお仕事。お中元みたいに「つまらないもの」じゃだめなんです。容姿、スタイル、知識、接客、すべてに関して一流をお見せするのがホストなんです。
後輩に見せた下積み時代の「給与明細」
――とはいえ、やっぱり最初はうまくいかなくて落ち込んだりするわけですよね。そういう後輩にはどう声をかけるんですか?
下積み時代の給与明細を見せることがあります。売り上げ「3940円」。月給ですよ。俺も1年近く売れなかった。月6万円のワンルームに住んで、ママチャリでお店に通った時期もあった。当時から、「俺、ガキのおもちゃじゃないから。使いこなせないなら遊ばないでよ」と、生意気な売り方をしていて。だから、先輩から「お前、使えないから席につかなくてもいいよ」とか、氷とマドラーだけ入れたグラスを渡されて「そのマドラーで氷混ぜて、溶けたやつでも飲んでれば?」と言われたこともありましたね。落ち込んでいる子には、そういう話もします。
――ローランドさんに憧れて入ってきている人に、あえて過去のどん底を語るのはなぜでしょう?
ナンバーワンが「お前らもなれるよ」と励ますだけではリアリティがないんですよ。「俺も昔はお前らと同じ苦労したことがあるよ」って、寄り添うことの方が大事じゃないかと思うんです。
もちろん、「お前らも悔しかったらこういう生活してみろよ」と闘争心に火をつける指導の仕方もあるかもしれない。でも、俺はそこにピンとこなかった。俺との力の差なんて歴然としているのに、誇示する必要もなくて、歩み寄るくらいがちょうどいい。
俺の理想とする去り際は、育ってきた後輩たちに「もう邪魔だから下がってください」って言われること。自分が一番でいたいけど、そうやって言ってくれる子がいたら嬉しいだろうな。あくまで予想だけど。
絶対に自分にうそはつかない
――凡人は成長する後輩に脅威を感じるというか、嫉妬してしまうと思うのですが、どうしたらローランドさんの境地にたどりつきますか?
あー、凡人の思考はちっちゃいですもんね(笑)。うーん。
俺はたくさんうそをつきますけど、自分には絶対うそをつきたくない。うらやましいと思ったら、その感情に正直になる。それを「あいつは売れてるらしいけど、仕事ばっかしてて自分の時間なさそう」とか「良いもん食ってるけど、食べ過ぎて体悪くしそう」って負け惜しみを言い、「俺は俺で幸せなんだ」と開き直って無理に自分を納得させるのもカッコ悪い。もっと素直になればいい。純粋に、負けて悔しい、頑張ろうって思えばいい。
まあ俺が他人に対して「うらやましい」「くやしい」なんて思うのは1000年後くらいだと思うんですけどね。
- 後編ではローランドさんが後輩指導する上で気をつけていることをうかがいます。
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- ●ローランドさんプロフィール
1992年東京生まれ。高校中退後18歳でホストデビュー。20歳で当時所属していた店舗の代表取締役に。2013年KG-produceに、現役ホストとしては史上最高額の移籍金で移籍。自らは酒を飲まない接客で年間1億7000万円を売り上げる。テレビなどのメディア露出も多く、一般層にも認知された知性派ホストとして人気を集める。