【古谷有美】古谷有美「仲良しこよしでなくていい。友情のお作法は“つかず離れず”」
●女子アナの立ち位置。
長い付き合いの女友達って、不思議な存在です。アラサーともなると、ライフスタイルや価値観の変化で、疎遠になることもありますよね。それはそれで仕方ないけれど、長く友情を尊重していくためには、気持ちのあり方が大事かな、って思います。
自分の分身みたいなお友達の人生も、尊い
私は、中学・高校時代に仲が良かった4人組で、いまだによく集まります。
みんな東京に住んでいるけれど、2人は結婚して子どもを産み、専業主婦になりました。もう1人は仕事を楽しむ★系のキャリアウーマンで、私は女子アナ。ある意味「よーい、どん!」で同じ場所からスタートした4人が、いまは全然違う人生を歩んでいるんです。
でも、もしかしたら、自分があの子の人生を生きていた可能性だって、なくはない。「あっちがよかった」「そっちになりたい」なんてことは全然ないけれど、面白いものですよね。相手の人生を、自分の人生の一部みたいに感じながら見ているのは、いっしょに育ってきた仲間だからだなと思います。
先日、私がみんなを好きだなと思ったのは、こんな瞬間。
次の約束を決めるためにLINEでやりとりしていたとき、キャリアウーマンの子はとても仕事が忙しかったみたいで、ちょっとトゲトゲモードだったんです。私を含めた3人は、一瞬「この言い方は冷たいよ~」なんて思ったけれど、それだけ。ひとまずそのときは、会える人だけで会うことにしました。
大人になって“つかず離れず”のお作法が、身についてきたのかもしれません。

事実と感情をうまく切り離せなかった10代
実は私、昔は誰かを傷つけることに、ちょっと鈍感だったと思います。たとえば大学受験のとき。さっきの4人組で、本命や滑り止めがちらほらとかぶっているなか、私は軽い気持ちで「第一志望校がダメだったら、こことここが滑り止めかな」なんて言っていて。
お互い自分の目標に向かって頑張っているだけなんだから、志望校を変えたり、黙っているほどのことではないはず、と考えていたんでしょう。……まあ、たしかに事実はそうかもしれないけれど。当時はみんなそれに一生懸命だったんだから、私はもう少し相手の感情に配慮した言い方をするべきだったと、いまは思うんです。
結果、私も含めて3人が浪人をしました。受験まではぎくしゃくしたけれど、浪人中に一緒に勉強をするうちに、また少しずつ空気がほどけていったような気がします。
でも、お互いになんとなくわだかまりは残っていて……そのときの話を避けたまま、時間が経ちました。改めて話したのは、ほんの数年前のこと。傷つけたのは言い方が悪かった私ばかりだと思っていたのに、相手は「あのとき、私たち怒ってひどいことしちゃったよね」と言ってくれました。

距離をとることも、友情を大切にすることの一部
私たちはそれぞれの立場でいろんな人生経験を積んで、自分の真実だけでなく“相手の真実”を想像できるようになってきました。誰が間違っている、誰が悪い、ではなくて、どれもその人の真実です。
それを踏まえながら「おや?」と思ったときには、うまく距離をとる。「事実」と「感情」を、切り離して向き合う。お互いのタイミングがくるまで、無理に近づこうとしない。それだけでずいぶん、友達付き合いって違います。
あとは、相手のいいところはまっすぐ褒めること。長年のおっちょこちょいが垣間見えた場面で「また出た~」ってばかにしながらも「そういうところ、ほんと好きだわ!」が言えるのって、いい関係ですよね。出かけた先で友達をふと思い出して「○○のことが急に思い浮かんだんだけど、いつもありがとね」なんてメールを送ることもあります。
年齢を重ねたりライフスタイルが変わっていくなかでも、本当にいい友達なら大丈夫。昔のように、四六時中ずっと仲良しこよしでいる必要なんてありません。まっすぐな愛情表現と“つかず離れず”で、大人の友情を楽しく育んでいけると感じています。
