【古谷有美】きらいだったピンクを好きになったのは、自分が強くなったから。
●女子アナの立ち位置。
年齢とともに好みが変わるのは、めずらしいことではありません。私は、ずっときらいだったピンクを好きになりました。どうやら、心境の変化にも関係しているみたいです。
ピンク=女の子の色、という決めつけがいや。
昔から、ピンクが好きになれなかったんです。とくに「ピンクや赤は女の子の色、青や水色は男の子の色」と決まっている理由が、ちょっとわからなくて……。
小学生になるとき、絵の具セットを買いますよね。ケースの色がピンクと水色があって、本当は自由に選んでいいはずなのに、なぜか性別によって決められちゃってる空気。でも、私はどうしてもピンクがいやで、女の子で一人だけ水色の絵の具セットを使っていました。「有美、なんで女子なのに水色なんだよ~」って、男の子にからかわれた記憶もありますね。
ランドセルは、お下がりでいただいた赤。でも、入学式から数日使っただけで、すぐにお気に入りのカバンに変えちゃいました。ピーターラビットみたいに写実的なうさぎの絵が描いてある、淡い柿色のバッグ。コーデュロイの質感がとってもかわいかったなぁ。
大人になっても、ずっとピンクを避けてきました。かわいい色を着るのがなんだか恥ずかしくって、ワードローブは白や黒、ブルー系が中心。「女子アナらしいファッションってなんだろう…?」でも書いたように、フレッシュ感を大事にして、女の子らしい衣裳を着ていた時代もあります。でも、自分で選ぶのは寒色ばかりだったから、スタイリストさんも次第にそういう色を増やしてくれました。
必要以上に女の子らしく見られたくなかった。
なんでピンクがきらいだったのかというと、たぶん、必要以上に女の子らしく見られるのがいやだったのかもしれません。「ふんわりとかわいい女の子であれ」みたいな押しつけも、なんとなく感じていたと思います。ふんわりかわいい女の子……まさに、女子アナのイメージ、だけど。
でも、ここ数年で「ピンクも悪くないですねぇ」という気持ちになってきました。プライベートで初めて手にしたピンクのお洋服は、スカート。オンラインのセールを見ていて、シルエットもキレイそうだし、いいかもなぁと思って買ってみたんです。そうしたら驚くほどしっくりきて、まもなくピンクのセーターも買いました。いまでは、全身ピンク色を着る日もあります。今日は、バッグやネイルもピンク色。iPhoneケースも、ちょっとスモーキーなペールピンクでお気に入りです。
どれだけ見た目が甘くても、私はもう大丈夫。
そう感じるようになったのはきっと、中身がブリブリのラブリー女子じゃないってことを、自分でちゃんと伝えられる大人になったからだと思います。どれだけ見た目が甘くても、自分をしっかり持って、やるべきことをやってます、みたいな。女の子らしい色をかたくなに拒否していた子どものころは、外見に引っ張られて自分が揺らいでしまう気がしていたのかもしれないですね。
女子アナをしていると、女性らしさを求められる場面は少なくありません。でも、それだけでは続けていけない仕事でもあります。周りを見渡してみても、ぶりぶりかわいいだけの女子アナなんて、全然いないんですよ。女性としての役割は割り切ってこなしつつ、それを楽しみながら、ガッツを持って働いている人たちばかりです。
そんな毎日で、いまはピンクを身につけると優しくなれる。ピンクの良い面だけを享受できる自分になれたんだな、って思います。