教えて!弁護士センセイ 「法律未満の何でも相談」08

浮気調査でGPSって使っていいの?

仕事でモヤモヤ、夫にモヤモヤ、人間関係でモヤモヤ。もしかしたら、法律を味方にすれば少しだけ生きやすくできるかも! 弁護士の澤井康生先生が、日々の困りごとを易しく解説します。今回のテーマは、浮気。どうやら夫が浮気してそう…証拠探しにGPSを使っていいの? 実際の裁判例をもとに考えます。 A子:MM商事営業部 B子:A子と同期の法務部主任

前回記事「SNSでのなりすまし被害」はこちら

●教えて!弁護士センセイ telling,の「法律未満の何でも相談」08

B子:A子、お疲れ様。

A子:あ、B子さん、お疲れ様、ちょうどいいわ、またまた相談したいことがあって。

B子:最近やけに相談が多いわね。今度はどうしたの?

A子:実は最近うちの旦那が浮気してる気がして……私、ネット通販でGPS発信機を買って内緒で夫の車に仕込んでおいたのよ。

B子:まじ? まるでスパイ映画みたいね。それで?

浮気の証拠写真撮影に成功

A子:GPSのおかげで夫が相手の女P子と2人でラブホから出てくる現場を押さえて証拠写真を取ることができたのよ。

B子:ショックだったよね……それでどうなったの?

A子:「やっぱりな」って悲しかったけど、ずっとモヤモヤしてるよりは、ね。相手の女P子に慰謝料請求してやろうとしたんだけど、「昨年出された最高裁判決で、GPSは違法とされているから、GPSで得られた証拠写真も違法として認められない、だから慰謝料の支払いには応じられない」って言うのよ。

B子:なるほど、聞きたいことっていうのは浮気調査にGPSを使ってもOKかってことね。

A子:そうそう、さすがB子、理解が早いわね。

B子:確かに昨年最高裁でGPS捜査は違法だからやっちゃいけないって判決が出ているわよ(令状なしのGPS捜査が違法であるとされた平成29年3月15日の最高裁判決を簡略化しています)。

A子:やっぱりそうなの? 私いけないことしちゃったの?

警察のGPS捜査は違法

B子:いいえ、違うわよ、その最高裁の判決は警察が犯罪捜査をするときに容疑者にGPSをしかけるのは違法だと言ったのよ。警察という国家権力が個人のプライバシーを過度に侵害することになるからよ。だから一般人のあなたが浮気の証拠を探すために旦那さんやP子にGPSをしかけることは、この判決とは関係ないわよ。

A子:よかった、じゃあ私はセーフね。

B子:でも警察がからんでいなければ何でもアリ、ではないよものすごく反社会的な方法や、相手の人格を否定するような方法で集めた証拠は、証拠能力が認められないから(秘密録音テープの証拠能力が問題になった東京高裁昭和52年7月15日判決を簡略化しています)。私、大学のゼミでここらへん卒論書いたから詳しいのよ。

A子:B子、めっちゃ優秀ね!なんでこの会社にいるの……で、私の場合はどうかな?

B子:旦那さんの車にGPS発信機をしかけること自体は違法でも何でもないから、たぶん証拠として認められると思うよ。

浮気調査のためのGPSは違法ではない

A子:やった~^^ 浮気調査のためのGPSはやりたい放題なんだね。ネット通販で追加で10個注文しちゃおうかな♡

B子:こわ……!!A子ったら、どんだけ~~・・・(-_-;)

■澤井康生先生のプロフィールはこちら
元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。弁護士でありながらMBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所非常勤裁判官、東京税理士会インハウスロイヤー(非常勤)も歴任。公認不正検査士の資格も有し企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。東京、大阪に拠点を有する弁護士法人海星事務所のパートナー。代表著書『捜査本部というすごい仕組み』(マイナビ新書)など。

元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。MBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所非常勤裁判官、東京税理士会インハウスロイヤー(非常勤)も歴任。
法律未満の何でも相談