婚約者がEDだった…！ EDは、婚約破棄の正当な理由になる？

前回記事「浮気調査でGPSって使っていいの？」はこちら

●教えて！弁護士センセイ telling,の「法律未満の何でも相談」09

Ｂ子：Ａ子、お疲れ様。

Ａ子：あ、Ｂ子さん、お疲れ様、今日はちょっとシリアスな相談があって。

Ｂ子：今度はどうしたの？

Ａ子：いや、私じゃなくて友達Ｙ子の話なんだけどね。実はその子が付き合っていた彼氏Ｘと婚約したんだけど、交際期間中からＸとの間でそういう関係になったことがなかったんだって。婚約後に何度もトライしてみたんだけど、やっぱりＨできなかったのよ。

Ｂ子：それは彼氏ＸさんとＹ子のどちらに原因があるの？

Ａ子：Ｘがその……性的に不能というか、要するにEDなのよ。

婚約後に、性的不能が発覚…

Ｂ子：え～、婚約するまで分からなかったの？

Ａ子：交際期間中、Ｘがなかなか手を出してこなかったんだけどＹ子は大事にされていると思っていたんだって。それでようやく婚約までしていざ致してみたらだめで……。病院で診てもらったら医学的にもEDだったらしいのよ。

Ｂ子：それで、その２人は別れることになったのね。

Ａ子：Ｘは「別れたくない」と言ったんだけど、Ｙ子の方から婚約を破棄して別れたのよ。

Ｂ子：それでどうなったの？

Ａ子：実はその後、ＸからＹ子に対して「婚約の不当破棄だから慰謝料を払え」って請求が来たのよ。

Ｂ子：なるほど、今回の相談はEDが婚約破棄の正当な理由になるかどうかね。

Ａ子：さすがＢ子、優秀ね＾＾

婚約破棄の正当な理由として認められる？

Ｂ子：EDは正当な理由になると思うよ。過去の裁判でも、性行為できない肉体的欠陥は、婚約を解消する正当な理由になると判断されているわよ（高松高裁昭和46年9月22日判決を簡略化しています）。昔、大学のゼミで習って、印象的だったから覚えているわ。

Ａ子：よかった～、じゃあ、慰謝料払わなくていいのね。

Ｂ子：性的不能は離婚の正当な原因としても認められているくらいだからね（最高裁昭和32年2月6日判決）。その前段階の婚約破棄でも正当な理由になるのよ。

Ａ子：なるほど、そういうことね。Ｂ子ありがとう！ でもネット通販で大量に買ったバイアグラが無駄になっちゃったわ（小声でボソボソ）。

Ｂ子：え？ そのＹ子って、もしかしてＡ子のことじゃないよね？

Ａ子：あら、もうこんな時間だわ、それじゃ、またね(-_-;)

Ｂ子：待ってよＡ子！ まだ話終わってないのに逃げ足早っ……。

次回<貸したつもりのお金が返ってこない…取り返す方法は？>はこちら

• 「法律未満の何でも相談」シリーズを読む

■澤井康生先生のプロフィールはこちら
元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。弁護士でありながらMBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所非常勤裁判官、東京税理士会インハウスロイヤー（非常勤）も歴任。公認不正検査士の資格も有し企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。東京、大阪に拠点を有する弁護士法人海星事務所のパートナー。代表著書『捜査本部というすごい仕組み』（マイナビ新書）など。

• 弁護士法人海星事務所東京事務所
• 弁護士ドットコムプロフィール