「『わかりあえない』を出発点に」性のプロが語る忖度力
●忖度上手になろう
「わかり合えるわけがない」前提に
そもそも、他人同士がわかりあえることなんてない、っていうことが大前提にあると思うんですよね。いつか相手とわかり合えると思っているから「こんなにしてあげたのに、どうして何もしてくれないの」と見返りを求めるようになっちゃうんです。おごりが生まれる。「わかりあえるわけがない」という絶望がありつつ、「少しでもわかり合いたい」と努力していくことが、人間関係には大事なんじゃないかなって思います。
想像力・共感力を駆使して
わからない部分は想像力・共感力で補うしかないんですよね。例えば女性の生理。僕は男性なので、体験しようとしてもそれはできない。なので、あらゆる情報を集めたり、聞いたりしてみました。その結果、ぼくは、これは極端な例かもしれないですが、股から腕を突っ込まれて、腹をぐりぐりされるような感じなのかなと想像したんです。それは歩けないわ、機嫌も悪くなるわ、本当につらいんだなというのがわかったんです。
だから、不機嫌な女性を見ると「あ、生理なのかな。優しくしなきゃな」と忖度するようになりました。でも、最初はその態度も良くなかったみたいで「不機嫌な理由を生理に責任転嫁するな。相手が何に怒っているのか考えろ」と言われたこともありました。これは悪い忖度の例です(笑)。
相手が否定しやすい質問を
忖度の意味である「気持ちを推し量る」とは違ってしまうかもしれないんですけど、相手の気持ちがわからないときは聞くしかないのかなって思っています。
大事なのは聞き方。相手が本音を言いやすいように聞く。つまり否定しやすい言い方。「気持ちいい?」「大丈夫?」だと「気持ちよくない」って答えにくいよね。だけど、「痛い?」「休もうか?」だと「ストップ」って言いやすい。これは体のコミュニケーション以外にも言えると思います。
とにかく相手を否定しない。そして、前提に「他人がわかりあえるわけがない」ということを忘れない。僕は初対面でとても親密な行為をするわけだけど、どんなに変わった女優さんがきても、むかつくことはないんですよ。もちろん、なんでこういうことするのかな? って思うことはあるけど、違う人間なんだから仕方ないなって思ってる。相手の気に障ることをしたらすぐに謝る、そして、相手に聞くようにしています。
●森林原人(もりばやし・げんじん)さんプロフィール
1979年生まれ。神童として最難関中学に進学するも、東大受験に失敗し、紆余曲折を経てAV男優に。AV男優歴19年、経験人数は8000人超で1万回以上のセックスを経験。16年に初の著書「偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論」を出版した。現在は、性を考え・語るオンラインサロン「森林公園」を運営している。