タブーとの対決。毒親をどのように棄てるか
●本という贅沢。18
読んでいることがバレると気まずい本ってありますよね。
数年前に『こじらせない離婚』(原口未緒著/ダイヤモンド社)という名著(と関係者ですが言い切ります)をお手伝いしたことがあるのですが、このタイトルは、読んでいることを夫に知られるだけで結構気まずいというか、修羅場になる可能性もある。
今回紹介する本もそのタイプ。
奇しくもわたくし現在帰省中で、このコラムを書くために読んでいたのだけれど、読みながらうっかり寝落ちしちゃった時、起こしにきた母親に多分、ちらっとタイトル見られたみたいなんだよな。がらにもなく、焦りました。
その名も『毒親の棄て方』であります。強烈であります。
前回のコラムで、『逃げたい娘 諦めない母』(朝倉真弓 信田さよ子/幻冬舎)を紹介しました。思ってもいなかった人たちから感想をいただきました。私が想像していた以上に、見えざる場所に母との関係性に葛藤を抱えている人が多いことを実感した本でした。
前回の書籍が、母と娘の困った関係性に気づき自覚的になる一冊だとしたら、今回紹介するこの本は、よりディープ。
まさに「毒親」と決別するという、タブー中のタブー(と思われているからこそ根が深い)に切り込む一冊です。
第1部は、娘は毒母によってどのように自信を失い人生を損なっていくのかについて、5つのタイプの母親の娘たちの告白が続きます。
時には胸が苦しくなるような記憶の吐露もあるけれど、それぞれの娘たちの告白に対して、著者のスーザン(セラピスト)が逐一「それは、あなたのせいではない」「それは、怒っていいのよ」と、合いの手を入れてくれているので、この部分を読むだけでも傷が癒される人がいるのではないでしょうか。
そして、第2部は、その段階からどうやって自信を取り戻し自分の人生を再構築していくか、具体的な方法がアドバイスされています。
過去の記憶とどう向き合うか。実際に母親にどんな言葉を伝えればよいのか。絶縁するしかなくなった場合、どう罪悪感をなくすべきか……etc.
特に私がなるほどと思ったのは、母親から刷り込まれた「嘘の自分」と、「真実の自分」を、両方書き出すワーク。これは、母親との関係に悩んでいるor否にかかわらず、自分に自信がもてないあらゆる人に有効な手段のように感じます。
めちゃくちゃ多くの人に必要とされる本ではないかもしれない。
でも、必要な人にとってはおそらく、人生で一番重要な一冊になると思います。
あとね。
友人が苦しんでいたら、そっと渡してあげてほしい。
- 「実は訳者も母との関係がうまくいかないひとりです」と書かれた、訳者の方のあとがきが素晴らしいです。あとがきも必読。
それではまた来週水曜日に。
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