芸人で2児の母、横澤夏子さん、リアル「お母さんネタ」に共感の声
――2児の子育てをしながら、芸人活動をされています。どのように日々を回しているのでしょうか。
横澤夏子さん(以下、横澤): 朝8時半に保育園に子どもを預けて仕事に行き、夜迎えに行って食事を作ってお風呂に入れて寝かしつけるという、共働き家庭ではごく普通の一連の流れですが、これをこなすのが大変で…。
夜のバタバタをなくすために、前倒して、朝行く前に夜ごはんを作ってから出かけます。日曜日にスーパーに行って1週間分の食材を買っておいて、お肉の賞味期限に合わせてノルマを設定して、月曜日朝から夕食作りをはじめて……という感じです。
子どもの健康管理は、ダイレクトに仕事に影響しますね。予防接種はあらかじめスケジュールに入れられますが、風邪で熱を出すなどの予期できないことが起きた時は大変です。病児保育には登録していますが、ギリギリの状態ですね。保育園から子どもが風邪で熱を出した時は、最初に私に電話がかかって来ることになっています。そして、私が本番の撮影中などで出られない場合は、夫に電話がいくことになっています。どちらかがお迎えに行き、その後、病院へ連れて行くことにもなるので、こうなると1分1秒を争う状態になります。
先日、子どもが熱を出して保育園に早い時間帯に迎えに行ったのですが、同じように呼び出されてお迎えに来ていたお母さんが、玄関で「明日の病児保育受付できますか」と電話していました。その後、病院へ行ったら、今度は別のお父さんが「明日休み貰えますか」と会社へ電話していました。みなさん同じようにギリギリの状態で毎日を送っているのですね。
「働くために預ける」「子どもを育てるために働く」。すべてつながっていることなので、どこも削れません。毎日が綱渡りの状態ですが、みんなそうなんだと思ってがんばっています。
結婚に向いている男性とは?
――芸人さんの世界は、「生き馬の目を抜く世界」なのではないかと思います。出産に迷いはなかったのでしょうか。
横澤: 芸人になることも夢でしたが、お母さんになることも夢でした。でも実際産んでみると、夢見ていた世界とはギャップがあって…。やはり、風邪や予防接種など子どもの健康問題で、予想外に仕事をお休みすることが多い。また、働く時間帯も限られます。「この時間帯は働けない……」という壁に毎回ぶち当たっています。
もっと簡単に「働いて子育てして」と思ってましたが……。私自身の両親も共働きだったので、大丈夫だろうと思っていましたが、こんなに大変だったんだということを初めて知りました。
――家事は夫婦でどのように分担しているのでしょうか。
横澤: 睡眠時間を平等に確保するために家事は分担してやっています。役割分担を最初からしっかり決めた方が気持ちが楽なんですよね。
平日は私が朝ご飯を担当し、土日の朝ご飯は夫が担当しています。土日の朝、子どもが泣いていると、私がつい、起きてカバーしてあげたくなってしまいます。でも、そこであえて何もしないんです。この時間帯は夫の担当だから夫にやってもらう、と。
そこでカバーしてしまうと「何で土日やってあげたのに、平日やってくれないの?」と自分の中に不満が出てきてしまうのも良くないからです。
ママ友さんに聞いた話ですが夫に「洗い物と洗濯、どっちがいい?」と選んでもらうのも効果があるようです。選んでいるからこそ「分担している」という意識も芽生えるのだとか。相手に気分よくやってもらうことも大切なのですが、私も気分よくありたいので、そこは対等な関係を維持していきたいと思っています。
――「オオカミ」シリーズでは毎回、若者たちの恋愛模様を見ていますが、結婚に向いている男性の特徴はあるのでしょうか。
横澤: 自分の両親に、素直に紹介できる人だと思います。「この人を実家に連れて行って紹介したい」と思った人が、その人にとっての運命の結婚相手なのではないでしょうか。イケメンかどうかではなく、「実家に連れて行きたい」と思った時点で、いい男なんです。
憧れで作った母親ネタ
――母親であることはお笑いのネタに影響を与えてると思いますか。
横澤: あるとは思いますが、私がお母さんになりたくて憧れていたころに披露していた「お母さんネタ」は、実際にいざ自分がお母さんになってみると、リアルではなかったなぁと。「エスティマに乗るお母さん」というネタがありますが、以前は、エスティマに子どもを乗せて走り回りたいという願望があったので、そのネタを作ったんです。でも実際には一人で子どもを車に乗せて連れ回すなんてかなり体力がいる。ノリノリでエスティマに乗っていたネタの中のお母さんには程遠いものでした。
最近、保育園の先生に我が子の様子を伝える連絡帳をインスタグラムに載せたところ、「我が家も同じです」というお声をいただき嬉しく感じました。たとえば、子どもが食事中に落としてしまった食べ物を私が拾っている瞬間に、食べ物を触りまくったベタベタの手で私の頭をポンポンされるんです。私の頭はベタベタ。そんなこと我が家だけかと思いきや、「うちもです」「今朝同じことをされました」などとコメントを頂くと、みんな同じように頑張っているんだ!と勇気をもらえます。
――芸人さんの世界でも、育児へのサポート体制はあるのでしょうか。
横澤: 吉本興業はとても理解があると思います。やはり森三中さんをはじめとした先輩方が道を切り開いてくれたのだと思います。妊活の時代から、すべてのスケジュールをマネージャーは把握していました。定期的に検診に行かなくてはならないので、病院からスタジオに行くまでの時間も計算してスケジュールを組んでもらっていました。
――仕事か結婚・出産か、に悩むtelling,世代に向けてメッセージをお願いします。
横澤: 仕事か結婚か、という二者択一は考えなくていいと思います。結婚は生活の一部なので共同生活を送る上で、それまでと変わることはたくさんありますが、「仕事を辞めてくれ!」というお相手ではない限りは、お仕事を続けていけるのではないかと思います。
一方、仕事か出産か、となると、そこはまた別の問題になります。職場との関係が大きく影響するのではないでしょうか。事前に育休産休などの福利厚生の制度を調べておくことが大切ですよね。また、妊娠発表の際の上司の反応や子どもを産んだ後の休み方の頻度なども含めて、 ベテランの女性の先輩に話を聞いてもいいかもしれません。妊娠・出産後の働き方を事前にリサーチすることも必要になりそうですね。
味方になってくれそうな人がいたら「その時は教えてください」と伝えておいてもいいと思います。
仕事はもちろん、結婚・出産・子育ても自分ひとりではできませんが、「何が大切なのか」 を明確にして、柔軟に取り組めば上手く行くと思います。考え過ぎずにリラックスに頑張っていただきたいです。
横澤夏子(よこさわ・なつこ)さんのプロフィール
1990年生まれ、新潟県出身。高校卒業後、NSC東京校に入学。19歳でよしもと∞ホールで初舞台を踏む。2011年、2015年の「R-1ぐらんぷり」では準決勝に、2017年は決勝に進出。2017年7月に交際していた男性との結婚を発表、2児の母に。芸人活動の他、ドラマやCM、情報番組にも出演。ABEMA『オオカミ』シリーズではシリーズ開始以来、司会を務める。