横澤夏子さん「恋はするものじゃない。落ちるもの」 『オオカミ』シリーズでMC
――「オオカミ」シリーズは今、10代女性の2人に1人が見ているとされる人気番組です。なぜこれほど人気があると思いますか。
横澤夏子さん(以下、横澤): メンバーの中に恋愛をしない「“嘘つき”オオカミ」がいるルールが存在する番組ですが、日常生活でも起こり得ることが番組内に出て来るところが面白いのではないでしょうか。
恋愛において、騙すつもりはなかったけど、気持ちを悟られなくなかったので、結果的に嘘をついてしまうことはありますよね。一定のルールのもとでやっている番組ではあっても、見ている人が現実世界にも投影しやすいことが人気の理由だと思います。
それから、私の年代でも、青春真っただ中の20歳前後の美男美女のキラキラした恋模様を見られるのが、純粋に楽しい。
――いつもはシニカルな芸風の横沢さんですが、番組中では感情移入して涙を流すこともありますね。
横澤: 彼らが、まるで自分が生んだこの子どものように見えて愛おしいんです。どういう気持ちでオーディションに挑んで、ここに出るようになって、誰が誰を好きで…ということを考えるうちに彼らの人生の背景が見えるというか。
「オオカミくん」も「オオカミちゃん」もいる中で、全員が「誰を信じればいいの?」という状態になっています。この不安や悲しさ、切なさが如実に表情に出る。思いっきりやっているのが伝わるので、応援しがいがあります。
――モテるタイプの特徴はあるのでしょうか。
横澤: 相手に合わせることのできるコミュニケーション能力の高い子はモテますね。例えば、人によって話し方を変えているような子です。八方美人ということではなく、相手が明るくてよく話す子なら、自分もテンションを上げて話す。相手がゆっくり話すのであれば、自分もゆっくり話す。きちんと沈黙も味わえる。そういう子はすごくモテます。
波長を合わせてくれる空気感がある子は、相手は一緒にいて包み込んでくれるような気がするのかもしれません。一緒にいて安心できるし、心を開きやすいのではないでしょうか。
振られた時には、「男性貯金」を
――以前、著書『追い込み婚のすべて』が話題になった横澤さんですが、ご自身の10代20代の恋愛を振り返ってみて思うことはありますか。
横澤: 「もうちょっとガツガツ行けばよかったな」と思いますね。その時代にしかできない恋愛があったなと。振られることを恐れずに、いろんな人と付き合ってみればよかったなと。
例えば「何かちょっと違う」と思っただけで、すぐに心を閉ざして拒絶反応してしまうのはもったない。まずは一回一緒に飲みに行ってみる、まずは付き合ってみる。そこからすべてが始まります。
それから「こういうセリフ言ってみたかった」というような願望はすべて試せばよかった。今はもうできないので…。
――「好きになった人にひどい振られ方をして立ち直れない」というような女性もいると思いますが、恋愛を人生の糧にするコツはあるのでしょうか。
横澤: 婚活をしていた頃、100回婚活パーティーに行ったのですが、自分と運命の赤い糸で結ばれていない男性は、全員「踏み台」だと思っていました。
とても素敵な男性がいたとして、自分では手が届かないと感じた時はとても高い踏み台を登っていると思えばいいと。次に出会う男性は、もっと上ということなので。
振られても「振ってくれてありがとう」と思えばいい。この踏み台を乗り越えて、もっとよい新しい男性に出会えそうだなって。振られた経験はプラスになると考えて「男性貯金」と呼んでいました。かなりコツコツ貯めましたね…。
例えば、「オオカミ」シリーズでも、振られた時に、別の子が、優しい言葉を掛けてくれることがあるのですが、その優しさは振られなければ、気が付かなかった。その優しさに気が付けてラッキー、と。振られることにも意味があります。
人生で一番感情が揺さぶられる経験を
――横澤さんにとって「恋愛」とはどのようなものでしたか。
横澤: 疲れることもありましたが、楽しかったですね。あんなに感情が揺さぶられる経験はもう二度とできません。その「揺さぶられる感じ」は「オオカミ」シリーズに詰まっています。
以前、番組内で「自分が好きだった人には幸せになって欲しいけど、今度は君に向き合ってみたい」と発言した男の子がいました。そういえば、かつて私自身は、「元カノに幸せになって欲しい」と言った男の子には腹を立てていたな…とか、忘れかけていた感情を思い出しました。
「オオカミ」シリーズに出演している子たちはいま、一生で一番気持ちが揺さぶられる、記憶に残ることを経験できているのではないかと思っています。
――この番組には恋をしない「オオカミくん」や「オオカミちゃん」が登場しますが、現実社会で同じスタンスで生きている人についてはどう思いますか。
横澤: その生き方もアリだと思います。この番組には「恋愛しないでください」と番組側から言われている男女が各1人以上いますが、結局は人を好きになってしまう。「恋は落ちるもの」ということなんです。
実生活でも「今まで全く意識していなかったけれど、ひょっとしたらこの人のことが好きかもしれない」と感じることは、よくあります。恋愛は「しなければならないもの」ではなく、「してしまうもの」なんです。しようとしなくても、するときはしてしまう。なので無理に恋愛しようとしなくてもいいのではないでしょうか。
恋愛と結婚、その違いとは?
――横澤さんは婚活中、今のパートナーとは結婚を意識してお付き合いを始めたそうですね。
横澤: 「恋愛しないで結婚したの?」とよく聞かれますが、出会いが婚活パーティーだっただけで、恋愛をしてからの結婚です。婚活パーティーも出会い系アプリも、知り合う場所という意味では結局は知人の紹介と変わりません。きっかけとしてどんどん利用した方がいいと思います。
今の夫と結婚を意識してから付き合い始めたのは、真剣に付き合っているのか、そうでないのか、わからない状態をズルズル続けるのは嫌だったからです。きちんと確認してから次の段階に進みたかった。なので、事前の確認が必要でした。
――ご著書では、結婚や出産を報告し合うという意味で、同窓会は「発表会」という表現が登場します。
横澤: 同窓会は「人生の発表会だ」ということを、あるドラマで教えてもらって、それ以来、発表会に向けてがんばらなければ、と思っていました。今振り返ると当時は、「結婚」「出産」は人生のカードの一つだと思っていて、発表会のためにそのカードを集めたかったのかもしれません。
でも、いざ結婚して子どもが生まれてみると、とにかく生活を回すことが第一。結婚も出産も育児も、まさにすべてが「日常」で、カードの一つだとか友達に言うとか言わないとかの問題ではないなと。
例えば、友人が「子どもと一緒にディズニーランドに行った」「お雛様を買って飾った」とインスタグラムに投稿していることが独身時代はとても羨ましかった。でも、実際に子育てをしてみると、ディズニーランドに行くことを励みにして日々をがんばっていたんだなとか、子どもを実際に育てていてその成長を願うからこそ、お雛様を買ってお祝いしていたんだなとか。ただ自慢したかったわけではなかったんだと思いました。
自分が経験してみて、ようやくその投稿の背景がわかるようになりました。すべては「生活の一部」なんです。結婚してみてやっと気付けたことでした。
横澤夏子(よこさわ・なつこ)さんのプロフィール
1990年生まれ、新潟県出身。高校卒業後、NSC東京校に入学。19歳でよしもと∞ホールで初舞台を踏む。2011年、2015年の「R-1ぐらんぷり」では準決勝に、2017年は決勝に進出。2017年7月に交際していた男性との結婚を発表、2児の母に。芸人活動の他、ドラマやCM、情報番組にも出演。ABEMA『オオカミ』シリーズではシリーズ開始以来、司会を務める。