「彼といると、芸人といても生まれないものがたくさん生まれる」紺野ぶるまさんが共通の話題すらなかった相手と結婚を決めたワケ

2019年に一般男性と結婚した紺野ぶるまさん。出会いのきっかけは居酒屋でのナンパで、最初は共通の話題がひとつもなくて困ったそう。ところが今は、芸人を続ける上で大きな支えになる存在だと言います。仕事や結婚、出産など次々とライフイベントが訪れる30歳前後。賞レース優勝を目指し「お笑い」の仕事に向き合っているぶるまさんが、彼との結婚を決めた理由とは?ぶるまさんから見たパートナーの魅力をうかがいました。

大失敗が決め手。「この人は大丈夫」と思えた

――『「中退女子」の生き方』の中で描かれている旦那さんとの出会いが衝撃的でした。最初は全然好みのタイプではなかったそうですが、「特別な存在」だと意識したきっかけはどんなことでしたか?

紺野ぶるまさん(以下、ぶるま): 最初の頃は共通の話題がひとつもなくて、見つかる予兆すらなくて、正直ずっと一緒にいたいという感覚はありませんでした。彼への見方が変わった一番のきっかけは、彼の部屋に一人でいるとき探し物をしてたら偶然見つけた「元カノが作った思い出アルバム」ですね。画用紙とかシールで丁寧に作られたアルバムが3冊くらい出てきて。昔の恋人との写真は本来気分のいいものではないはずなのに、いかに彼が素晴らしい人間かプレゼンされているような気持ちになったんです。好きなところが箇条書きされてたりして。元カノからの彼のトリセツみたいな。出会いがナンパだったので不安なところもあったのですが、「愛されていて、ちゃんとした大丈夫な人なんだ」みたいな(笑)。何となく公式な感じがしたんですよね。すごくヤバいこと言っている認識はありますが、本当にそう思ったんです(笑)。

――モテる男性のほうが魅力的に見える、という感じですか?

ぶるま: まさにそれもあります(笑)。当時、彼が新宿の近くに住んでいて、ライブ帰りや深夜の稽古の後によく遊びに行っていました。でも、もし彼が都心から遠くに住んでいたら、こんなに連絡してただろうか、近いから会いに行ってるのではないだろうか……。そんなゲスな葛藤そのままネタにしたら、『女芸人No.1決定戦 THE W』の決勝に行けました。芸人をやる上で、「もしかして、いいパートナーなのでは?」と(笑)。

私は服を着ていても見えるところに、子どもの頃に手術した大きな傷があるのですが、彼はそれを見て「余命数カ月」と心配したり、置きっぱなしにしてたコップに髪の毛が入っていたのに、「お茶がもったいないから」と髪の毛を避けて飲んだこともありました(笑)。そういうのも素直におもしろいなと思ったんですよね。彼といると、芸人仲間といても生まれないものがたくさん生まれます。

――まったく「運命の人」感はなかったんですね。

ぶるま: ところが、「今までの人とは違う」と思える出来事が起きたんです。一緒に家で飲んでいたとき、私が酔っぱらってお手洗いで倒れてしまって。お尻丸出しなのに、彼が起こしてくれました。「やってしまった!終わった!」と思ったのに、「僕がついてるから大丈夫だよ」って布団まで運んでくれました(笑)。もうここまで来たら、何を見られてもいいですよね(笑)。それで「この人は大丈夫だ」とすごく安心したんです。

――すごいエピソードですね(笑)。

ぶるま: 言葉にするとひどいですね(笑)。最近だと、私の新刊を買うのが楽しいらしくて、休日のたびに本屋に行って何冊も買ってきたりします。でも、読まないんですよ。変ですよね(笑)。

彼は芸人を続ける上で、メンタルを支えてくれる人

――仕事に夢中になっていると、恋愛や結婚を直視できず後回しにしてしまう女性も多いと思います。ぶるまさんは彼とお付き合いしながらお笑いにも真剣に取り組み、賞レースで決勝に進出しています。どのように両立させたのですか?

ぶるま: 私の中では、全然両立できていません。本当は賞レースで優勝して、結婚・出産しても戻ってこられる「席」を作りたかった。私が芸人になった当初は、ブスっていじられてなんぼ、モテない方がおもしろいのがスタンダードとしてあったので、女芸人は結婚すると「セミリタイア感」が出てしまうのではないかと怖かったというのもあります。結婚して子どもを生んで、その上でガッツリ賞レースとかお笑いに関われることが難しく感じてしまって。本当は、結婚する前にもっと結果を残したかったという思いがあります。

私は2回卵巣嚢腫の手術をしていて、定期健診のときに「(子どもを生むまでの)時間がないです」とハッキリ言われてしまいました。それで、腹を括らなきゃいけないなと。今は結婚や出産をしてもとことんお笑いをやるという道を自分が切り開きたいという考えに落ち着きました。

――パートナーに病気のことを正直に伝えるのは、勇気がいりますね。

ぶるま: 言ったら逃げちゃうかもしれないですよね。彼といると安心できて、けっこう何でも言えたんです。むしろ「私には時間がない」とか、上から言っていたかもしれません(笑)。

――「結婚相手は彼でいいのか」と悩むことはありませんでしたか?

ぶるま: どちらかと言うと結婚して本当に自分は幸せになれるのかなと言う思いの方が強かったです。それに、もしこのあと、異国の石油王とかに見初められるような奇跡が待ってるかもしれないのに、本当にここでGOでいいのか!とか(笑)。その思いをそのままネタにしました。

「1人目は居酒屋でバイトしている俳優志望、2人目はカフェ店員の歌手志望、3人目はいたずらに夢なんて追わないテレアポの契約社員、4人目は印刷会社のコウちゃん。あとフリーのシステムエンジニアを2人くらい挟んだら、2軍のサッカー選手くらいいけると思うんだよ」というネタで。実は彼が印刷会社勤務なんです。

このネタを初めて披露する単独ライブに、彼も友だちを誘って見に来てたんです。手伝ってくれていた後輩に、「本当に彼の前で言うの?芸人である前にひとりの人間なんだよ、良心は痛まないの?」って言われてしまって……実際に私も「4人目」のセリフを言うべきか迷ったんです。でも結局、堂々と言ったんです。

――彼は怒らなかったんですか?

ぶるま: LINEで「みんな終始笑ってたよ!二軍のサッカー選手とサラリーマンはそんなに収入変わらないはずだからネタとしてそこだけ変えた方がいいよ」と。こういうことで動じないのもいいなあと思いました(笑)。さらに、私はこのネタで『R-1ぐらんぷり』の決勝にいけたんです(笑)。彼は、私が何を言っても「結局、君は僕がいないと生きていけないと思うよ」って言うんです。彼は私にとって「お笑いを続ける上でメンタルを支えてくれる」存在ですね。

何かに負けていても、比べないだけで勝っている

――本の中で、先に売れていく後輩に嫉妬したエピソードが書かれていました。ぶるまさんは人と比べて悩んでしまう人にどんな言葉をかけますか?

ぶるま: 人と比べて落ち込むことは、日々あります。でもそれは、一生終わらないと思うんです。ひとつクリアしても、すぐに違う敵が出てくる。私もいつも人と比べていましたが、ある日疲れて「多分これ、一生比べるんだ。でも比べながら死ぬのは嫌だな」と思いました。もしかしたら、死んだ後も比べるのかもしれない。

みんな比べながら生きてるんだとしたら、「比べないだけで幸せなんじゃないか」と気付いたんです。たとえ何かで負けてたとしても、「比べない」という一点では勝ってるのかなって。

男性も、自分のちんこに悩みを抱えてたりすると思うのですが、一長一短。全部が優れてる人はあまりいないし、どうでもいい差だったりしますよね。あいつの方が大きいとか、俺は木の実くらい小さくてもキンタマは松ぼっくりくらい大きいとか……。これが、「どんぐりの背比べ」の語源らしいですよ(笑)。

■紺野ぶるま(こんの・ぶるま)さんのプロフィール
1986年9月30日生まれ。東京都出身。17歳のときに高校を中退。21歳で松竹芸能の東京養成所に入り、お笑い芸人の道へ。どんなお題でもすべて「ちんこ」で解く“ちんこ謎かけ"を得意とする。第38回ABCお笑いグランプリ(2017年)」、「R-1ぐらんぷり(17年、18年)」、「女芸人No.1決定戦 THE W(ザ・ダブリュー、17、18、19年)」で決勝進出。「アメトーーク! 」の“高校中退芸人"くくりに出演し、その後、「しくじり先生 俺みたいになるな!!」に“高校中退して大後悔しちゃった先生"として出演。19年4月25日、会社員の男性と結婚を発表。

『「中退女子」の生き方』

著者:紺野ぶるま
発行:廣済堂出版
価格:1,430円(税込)

紺野ぶるまさん「辛いことや悲しいことを“笑い”に変えられるのが、芸人という仕事の魅力」
フリーランス。メインの仕事は、ライター&広告ディレクション。ひとり旅とラジオとお笑いが好き。元・観光広告代理店の営業。宮城県出身、東京都在住。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。