『マイファミリー』未知留誘拐の電話が東堂ではない決定的理由。結局誰の「ファミリー」問題なのか? 最終回直前考察
いよいよ『マイファミリー』(TBS系)が最終回を迎える。
「真犯人の正体は?」「その動機は?」「東堂心春(野澤しおり)は無事なのか?」。気になることは山ほどあるものの、ここで注目したいのは公式サイトに記載された「『サスペンス』『ミステリー』という枠組みのものではない」「“ファミリー”エンターテインメントである」という文言だ。
視聴者を振り回す見事な考察ミステリーっぷりを見せつけてきた『マイファミリー』ではあるが、あくまでテーマは「家族の絆」ということなのだろう。鳴沢温人(二宮和也)たちはもちろん、真犯人側にも「ファミリー」というテーマは掛かっていると予想できる。そのへんも踏まえて、最終回の展開を考えていきたい。
もし、香菜子が黒幕だとしら?
阿久津晃(松本幸四郎)の娘・実咲(凛美)が、監禁場所から脱出しようとして転落し、意識不明の重体に。その場に居合わせた温人は、誘拐幇助などの容疑で逮捕される。後に弁護士の三輪碧(賀来賢人)の尽力で釈放されるのだが、世間からは「誘拐犯」と見做されてしまい、温人が社長を務める「ハルカナ・オンライン・ゲームズ」の株価は暴落、さらに阿久津の「NEXホールディングス」からは業務提携を解消されてしまう。
副社長の立脇香菜子(高橋メアリージュン)は、会社を守るために温人の社長を解任を決断する。
ところどころで怪しく見える香菜子だが、誘拐事件で得したようには思えない。温人に代わって社長の座についたとしても、「ハルカナ・オンライン・ゲームズ」が事件で受けた被害は甚大で、悪いイメージをそう簡単に払拭できないはずだ。香菜子にとっては会社こそが一番優先したい「ファミリー」なので、犯行に踏み切るメリットは今のところ見当たらない。最終回予告動画でまた怪しいところを切り取られていたが、ミスリードと捉えていいと思う。
待ってました!温人と葛城の共同戦線
一方、神奈川県警内部では捜査一課の日下部七彦警視(迫田孝也)が熱弁を奮っていた。5年前の東堂樹生(濱田岳)の娘・心春誘拐は東堂の妻・亜希(珠城りょう)による「狂言誘拐」、今回の実咲誘拐は「温人と東堂が身代金目的」と決めつけた。ここへ来ての突然の暴れっぷりが怪しさを醸し出していたが、日下部には動機に「ファミリー」の影すら見えないので、容疑者から外していいだろう。
葛城圭史警部(玉木宏)は事件を違う角度で見ていた。身代金を10回に分ける不自然な受け渡し方法から、目的は金ではないと考える。さらに、阿久津家の防犯カメラの映像が2分間途切れていた事実を見つけ出し、実咲が持っている重要なデータを盗もうとしたと推理した。捜査から外されてしまっている葛城は、温人に5年前の心春誘拐事件について娘の友果(大島美優)から聞き出すように頼む。
かつては敵同士だった温人と葛城の共同戦線! 悟空とベジータ、アンパンマンとバイキンマン、ルパンと銭形、古今東西の名作激アツパターンだ。誘拐された辛い過去を乗り越えつつある友果は「心春と実咲が親友だった」「心春が実咲にだけ悩みを打ち明けていたようだ」という新事実を明かす。友果が実咲から借りているタブレットに重要なデータが隠されている可能性があると聞かされた温人は、家にいる妻の未知留に連絡する。しかし、未知留はタブレットごと何者かに誘拐されてしまう。
妊婦である未知留に非通知で電話がかかってくるのだから心臓がギュッてなる。さすがに悲しい未来にはならないだろうが、それでも妊婦がクロロホルムを嗅がされるシーンは辛い。
エンドロールが流れているのにエンディングテーマが流れない不穏な演出が効いていた。
電話をかけてきたのが東堂ではない決定的な理由
未知留の誘拐シーンにはおかしな点があった。「未知留、俺だ」と機械音声でかかってきた電話を未知留はすぐに東堂からだと信じたが、そもそも東堂が地声を隠さなくてはいけない理由はない。オレオレ詐欺のように、勢いで未知留を信じ込ませたように見えた。
決定的なのは、電話の主がタブレットの存在を知っていたこと。「タブレットを渡すな。もし誰か取りに来たらそいつが犯人だ」と言っていたが、東堂はタブレットが鍵になっていることを知らないはず。よって、電話の主は東堂を偽った真犯人であると考えられる。
誘拐からほどなくしてインターフォンが鳴り、玄関先には新米刑事の梅木司(那須雄登)が立っていた。
警察内部にいる真犯人が梅木を偽装として動かしたのか、それとも梅木が動いたのを知って、未知留に「勝手口から逃げろ」「警察も信用できない」と指示したのか。
いずれにしても、裏口で待ち構えていた真犯人ないし共犯者は、未知留誘拐に成功した。
真犯人と動機
この連載でずっと言い続けてきたが、真犯人はやはり捜査一課長の吉乃栄太郎(富澤たけし)だと思う。真犯人が情報を得る速さは警察内の人間であることを示しているし、吉乃の顔を見た実咲は怪訝な表情をしていたし、温人逮捕時には1人だけ姿を見せていないし、疑う理由しかない。
9話でも、葛城が「タブレット」と口にした瞬間「タブレット!?」と聞き返していて、「そんなのあったの!?」というニュアンスに聞こえた。部屋に盗みに入った時には見つけることができなかったということだろう。だが、このミスは凶悪犯らしくない、無理矢理手伝わされている人にも見えてきた……。
もう1人怪しいのが、東堂樹生(濱田岳)の妻で行方をくらましている亜希(珠城りょう)だ。おそらくタブレットには、吉乃と亜希が映った写真が残されているはずだ。それに違和感を覚えた心春が、「秘密だよ」と実咲に相談したのだろう。
おそらく吉乃と亜希は共犯なのだが、それが亜希自らの意思なのか、それとも強制されているのかは不明だ。強制されているのだとしたら「娘である心春の命と引き換えに」ということか。
仮に自らの意思だとしたら、2人にはなんらかの関係性があるはずだ。手っ取り早く不倫が思いつくが、それだと吉乃に「ファミリー」のテーマを設けることが難しそうだ。また、9話で日下部が心春の誘拐のについて「(亜希が)不倫相手だかなんかと」と言っていた。まさか最終回直前でネタバレを口走ったりはしないだろうから、不倫ではなさそう。
僕が推しているのは、前話の考察でも触れた「吉乃と亜希は家族のような存在」というパターンだ。亜希に両親がいないことは明かされているので、施設育ちの可能性が高い。そこで吉乃も一緒に育っていて、恋愛とはまた違った「ファミリー」のような関係性を持っているのだ。
そして吉乃は、仕事にかまけて家庭を蔑ろにする東堂から、大事な「家族」である亜希を救ったという流れだ。だが、ひとつ問題があるとしたら、それだと妹の鈴間亜矢(藤間爽子)が吉乃を知らないのはおかしい。そこにもうひとつ何か新事実が欲しい。
結婚前に2人は付き合っていて、心春の本当の父親は吉乃……という可能性はありそうだ。これならテーマにも沿っているし、東堂が心春のことを終始「ちゃん付け」で呼んでいる理由にもなる。ただ、心春に別の父親がいるのなら、東堂はそこを真っ先に疑いそうな気もする。
では、逆のパターンはどうだろう? 亜希が主犯で、吉乃が手伝わされているのだ。家族を蔑ろにする東堂に嫌気がさした亜希は、ほんの脅しのつもりで狂言誘拐をする。しかし、娘の遠足の場所さえ知らなかった東堂に本気で愛想を尽かし、心春と一緒に出ていった。その捜査過程なりで、家族についてなんらかの弱みを握られた吉乃が、共犯者にされているのだ。これなら「タブレット!?」のミスも納得が行く。とはいえ、その「吉乃の家族関係の弱み」は全く思いつかないのだが。
考えれば考えるほど、決定的には結びつけ切れない吉乃、亜希、家族。
他にも、身代金の取引時にたびたびクイズにされる遠足にもなにか意味がありそうだし、過去に東堂と三輪が起こした事故もなんらかのファクターになっている気がする。
今夜放送の最終回は15分拡大スペシャル。複数の要素がどう結びついてどんな真実が現れるのか。楽しみでならない。
毎週日曜よる9時〜
出演:二宮和也、多部未華子、賀来賢人、高橋メアリージュン、濱田岳、玉木宏 他
脚本:黒岩勉
音楽:大間々昂
主題歌:Uru『それを愛と呼ぶなら』
演出:平野俊一、田中健太、宮崎陽平、富田和成
プロデューサー:飯田和孝、渡辺良介(大映テレビ)
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