『マイファミリー』1話を整理。ガンガン展開するスピード感と「嫌でダメ」な二宮和也に期待

日曜劇場『マイファミリー』(TBS系)第1回放送は、25分の拡大版。ゲーム会社CEO(二宮和也)とその妻(多部未華子)の娘が誘拐され、要求された身代金は5億円! 犯人との駆け引きの末、夫婦はある選択をする。警察と家族と友人、会社関係を誘拐事件の進行とともにスピーディに描いた1話を振り返ります(ネタバレを含みます)。 

『山田太郎ものがたり』(TBS系)以来、15年ぶりに二宮和也と多部未華子が共演する日曜劇場『マイファミリー』。

秀逸なサスペンス映画のようなスピーティな展開に、連続ドラマらしく気になるひっかかりの数々をちりばめて見事だった1話。オリジナルの脚本を担当するのは『グランメゾン東京』(2019年)、『危険なビーナス』(2020年)、『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(2021年)と日曜劇場を多く手がける黒岩勉だ。

この先ガンガン展開していくよ!という意気込み

主人公は、「ハルカナ・オンライン・ゲームズ」のCEO・鳴沢温人(なるさわはると・二宮和也)。妻の未知留(みちる・多部未華子)と小学生の娘・友果(ともか・大島美優)と暮らしている。富、名声、すべてを手に入れた男だ。しかし、仕事の忙しさから家族と過ごす時間も短く、未知留とは仮面夫婦で、友果からも愛想をつかされている状況。仕事でも、主力のゲームアプリ「ハルカナ」人気が下降中で、やる気を失いかけているように見える。

ある日、夫婦のもとに「娘を誘拐した」「身代金5億用意しろ」と電話がかかってくる。「警察に言ったら娘を殺す」と脅されるが、温人は迷わずに通報。通報はしないほうがいいという未知留の意見を「俺とあなただけで交渉するつもりですか?」と嫌な敬語混じりで押さえ込む姿に、2人の関係性が表れている。

ここまでで冒頭の5~10分くらい。展開が速い。それぞれの具体的なキャラクターや人間関係は、誘拐犯との駆け引きの中で示されていく。例えば、警察犬の追跡のために友果の靴を要求されても、温人は普段履かない靴を差し出してしまう。娘がその日着ていた服ももちろんわからない。

ガンガン展開するスピード感に引き込まれ、この先色々転がしていくよ! という意気込みを感じる1話だ。また、結局はダメな奴とも嫌な奴とも言い切れない中途半端なキャラクターを演じる二宮和也が絶妙にリアルだ。

警察による誘拐マニュアルが興味深い

警察との関係性も生々しく描かれる。温人は迷わず警察に通報したくせに、自分が成功者だからか他人の仕事に懐疑的だ。未知留は通報自体に納得が行っていないので警察のやり方が不安でならない。未知留は、余計なことはせず、犯人の言うとおり5億さえ渡してしまえば友果は無事に帰ってくるのに!と思考を停止しているようだ。

警察も夫婦に対して警戒をしている。捜査一課長・警視の吉乃栄太郎(富澤たけし)は夫婦を「やっかいな二人」とし、警部の葛城圭史(玉木宏)は、「妻の未知留から取り込む」とまるで敵対関係にあるような口ぶりだ。被害者家族の動き次第で事件の難易度が変わるものだと、経験から痛感していることが伝わってくる。リアルだ。

警察の誘拐マニュアルが詳細に描かれたのが興味深かった。被害者家族の負担を減らすために家事を代行したり、身代金を警察が貸し出すシステムがなかったり(実際もこうなのだろうか? まるっきりの創作とも考え難い)。「誘拐のきっかけの9割がSNS」など、子供を持つ親が知っておきたい情報もあった。

ハルカナの由来を未知留はどう思っている?

身代金5億が必要、そんな時にビジネスパートナーである立脇香菜子(高橋メアリージュン)にメインバンクから融資停止の話が出ていると聞かされる。「ハルカナ」は、香菜子と温人が一緒に立ち上げた会社で、おそらく「ハルトとカナコ」から名前を取っていると考えられる。

とはいえ、会社がうまく行ってないからなのか、もともとそうなのか、温人の無責任な振る舞いに香菜子は不満が溜まっている様子。社会的勝ち組に見える温人だが、家庭にも会社にも、居心地の良い場所はないのかもしれない。

融資停止の唯一の打開策は、阿久津晃(松本幸四郎)がCOOを務めるNEXホールディングスに株の一部を売り渡すというもので、そうすると、会社を買収されてしまう可能性が高い。阿久津は温人と絶縁関係にあるが、ご近所さんであり、「未知留と友果とは家族ぐるみの付き合い」だという。何かしらの鍵を握っていそうだ。

しかし、身代金をどうしても作れない温人は、香菜子に黙って阿久津に株の買取を持ちかけ、なんとか5億円を用意する。誘拐の件は他人に言ってはいけないと警察にキツく言われていたからだが、これで香菜子との関係はさらに悪化。仕事も家庭もないがしろにしたツケが一気に回ってきた形だ。

温人&未知留、警察、誘拐犯の三つ巴

犯人の要求通りに温人と未知留は、5億円を持って取引場所へ向かう。だが、到着すると次の場所を指示され、「30分以内に来ないと娘を殺す」と脅される。この指示が繰り返され、2人は重い5億円が入ったケースを持って走り、階段を駆け上がり、久々に夫婦で力を合わせる。

金を運ぶ際に使用したベビーカーを見て、温人は「まだこんなの持っていたのかよ」と訝しむが、未知留は「もしかしたらまた使うかも」と温人が言っていたから残しておいたという。これは、2人目を意識した発言で、もちろんまだ夫婦仲が良かったころのことだ。

結局、温人は犯人からの「友果の小学一年の時の遠足の行き先は?」という質問の返答に失敗。さらに警察が介入していることを見抜かれ、「あなたの責任です」と交渉は決裂する。その後、犯人から「警察を排除すれば、交渉を再開する」とチャンスをもらうと、夫婦はとある大きな賭けに出た! というところで1話はおしまい。

気になったのは、温人がたびたび言われる「あなたの責任です」という言葉。果たして、犯人の目的は金だけなのだろうか? また、過去の誘拐事件や、未知留の友人・東堂樹生(濱田岳)が事件に関連している可能性も匂わされた。

25分拡大で放送された1話は、スピーディに展開し、しっかりと次話以降への含みも持たされた。期待してよさそうだ。

TBS 日曜劇場『マイファミリー』

毎週日曜よる9時〜
出演:二宮和也、多部未華子、賀来賢人、高橋メアリージュン、濱田岳、玉木宏 他
脚本:黒岩勉
音楽:大間々昂
主題歌:Uru『それを愛と呼ぶなら』
演出:平野俊一、田中健太、宮崎陽平、富田和成
プロデューサー:飯田和孝、渡辺良介(大映テレビ)

企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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