阿部寛×横浜流星『DCU』1話。想像以上に陸のドラマ!「ハリウッド協力」はいったん忘れて楽しもう
1月16日に日曜劇場『DCU~手錠を持ったダイバー~』(TBS系)がスタートした。海上保安庁に新設された水中事件および事故捜査のスペシャリスト集団「Deep Crime Unit(潜水特殊捜査隊)」略して「DCU」が活躍するミステリードラマだ。
阿部寛、横浜流星、中村アン、山崎育三郎といった豪華俳優陣に加えて、舞台が海上保安庁、そして「ハリウッドとタッグを組んだ!」の煽り文句。前評判からは、映画『海猿』のようなスケールの大きな海上サスペンスを想像させられたが、蓋を開けてみれば『海猿』とは全くの別物。面食らった視聴者は多かったのではないだろうか。
放送前とイメージがちょっと違う
阿部寛演じる新名正義は、DCUの隊長に抜擢されたが、性格は不遜で傲慢。「目的のためなら手段を選ばない」というと聞こえはいいが、部下に警察にとにかくケンカを売りまくる。もはや目的遂行の妨げになっているのではないかと心配になってくるほどの俺様キャラだ。
そんな新名率いるDCUは水中捜査のスペシャリストなのだが、これが思っていた以上に陸にいる。予告映像はほぼ水際だったし、「ハリウッドと共同制作」「海上保安庁が全面協力」と聞くと潜水艦で何者かと戦いトラブルを解決していく……というストーリーを想像してしまうが、わりとスタンダードな刑事事件を水中に絡めて捜査していくといった形で展開された。
『富豪刑事』(テレビ朝日系、深田恭子主演)のノリで言うと「水中刑事」といった感じだ。「真実は必ず水の中にある」という決め台詞っぽいものも飛び出す。良い悪いの話ではなく、放送開始前の煽りとは隔たりがあったように思う。
山崎育三郎がドハマりする不安定な役柄
第一話で展開されたのは、群馬県のダム建設がらみの殺人事件。地元警察には手が出せない水深100mというダムの底に新名らDCUが潜り、事件解決の糸口を掴む。そしてダム事業を担当した建設会社の社長(中村芝翫)、どこか陰のある秘書(高梨臨)、会社の金を使い込んで消えた男(宮野真守)らが絡んだ、隠された真実を暴き出した。
これまた意外だったのは、糸口の掴み方だ。しつこいようだが「ハリウッド協力!」と連呼されていたのに、ヒントになったのは「釜飯に添えてあった、らっきょう」だった。非日常感たっぷりのDCUに、日常的で親しみのあるらっきょうがキーになるこのアンバランスさ! 良い意味で予想外だった。来週からは「ハリウッド」という言葉を頭から抜いて楽しもうと思う。
また、1人だけアニメに出てきそうなナルシスト演技をする公安一課の刑事、清水(山崎育三郎)も気になるポイントの一つ。「ジョジョ立ち」のように腕を組んで斜めに構え、強キャラ感を演出していた割には新名にあっさりとスルーされてしまう雑な扱い。しかし、決めるところはしっかりと決めていて、コメディ担当なのか、シリアス担当なのかわからない不安定な仕上がりは、山崎育三郎以外考えられないくらいにハマっていた。
15年前の事件の真相は?
ダム事件のように1話完結型の話と、「15年前の事件」という大きな縦軸で話は展開されるようだ。
15年前、海上保安庁の機密データをリークした疑いをかけられていた瀬能博士(西尾浩行)が、船の爆発事故で死亡した。新名のバディで、共に捜査に当たっていた成合淳(吉川晃司)は、壊れた船の中で瀬能博士が所持していた鍵を探す。鍵の存在は、瀬能博士の内通者でないと知らないはずだ。成合はスパイなのか?
だが、成合は浮上できずに殉職してしまった、といった成り行きが冒頭から読みとれる。
そして爆発事故に巻き込まれて海に放り出された瀬能博士の息子・陽生(成長して横浜流星)を救ったのが、現DCU隊長の新名。当時の記憶がハッキリしない陽生だったが、15年後、新名を慕ってDCU入りする。ダム事件では新名に次ぐ活躍を見せており、これからバディとして成長していくかに思われた。
しかし、ラストで陽生は、当時の記憶を蘇らせる。自分を助けたのは新名ではなく成合で、さらに成合の声で「お前(新名)がスパイだったのか」という言葉が。つまり、陽生は、今まで新名と成合を逆に記憶していたのだ。全てを思い出した陽生は、尊敬するはずの新名に飛びかかり、仲違いしてしまう。
鍵が意味するものは? ボートを爆破させたのは? 瀬能博士が握っていた機密情報とは? なぜ陽生に記憶違いが起きていたのか? 今のところこの事件については何もわからない。おそらく水中に眠る何かが、全ての謎を解くキモになってくるのだろう。
SNSで視聴者の声を見ると、今のところ縦軸である15年前の事件に注目が集まっているようだ。だが、どれだけ水中にからめた事件を作れるかが、1話完結のストーリが今作の出来を左右すると思う。
■TBS系 毎週日曜夜9時〜
出演:阿部寛、横浜流星、中村アン、山崎育三郎、趣里 他
脚本:青柳祐美子、小谷暢亮、谷口純一郎
音楽:木村秀彬
主題歌: Lizabet「Another Day Goes By」
演出:田中健太、青山貴洋、宮崎陽平
プロデューサー:貴島誠一郎、伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣
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