『愛しい嘘~優しい闇~』1話を考察。望緒(波瑠)は、なぜ「中野幸」を「くん付け」したのか?

14年ぶりに中学の同窓会で再会した仲良し6人組。東京で漫画家アシスタントをしている今井望緒(波瑠)は、初恋の人、雨宮秀一(林遣都)にやはりときめいてしまう。しかし、その数日後、再会したばかりの岩崎奈々江(新川優愛)が遺体となって発見される。謎だらけのスタートを切った『愛しい嘘~優しい闇~』。第1話を振り返り、鑑賞のポイントを考察します。

1月14日、『愛しい嘘~優しい闇~』(テレビ朝日系)がスタートした。原作は愛本みずほの『愛しい嘘 優しい闇』。無料マンガアプリ「Palcy」(講談社)で連載中だ。

「超高速展開で二転三転する本格ラブサスペンス」を謳うだけあって、謎は入り組んでいるものの、伏線のフェイクが少なそうなシンプルなストーリー構成になっている。いかにもと言った感じで丁寧に布石を置くこともあるし、バレづらいようにそっと置くことも。今回は、メインキャストの怪しい部分を洗っていきたい。

誰も覚えていない中野幸

連載経験こそあるものの、現在は漫画家のアシスタントとして生活する望緒(波瑠)は、地元・山梨で開かれた中学の同窓会に出席する。東京でIT社長となった雨宮(林遣都)、同じく東京で弁護士として働く玲子(本仮屋ユイカ)、地元でワイナリーを経営する稜(溝端淳平)、名家に嫁いだ優美(黒川智花)、甲府でOLをする奈々江(新川優愛)ら仲良し6人組と再会。卒業時に埋めたタイムカプセルを掘り起こす。

中学時代に密かに憧れていた雨宮から積極的にアプローチされる望緒。玉の輿を狙う奈々江はそれが面白くないようで、望緒を敵視し始める。そんな矢先、奈々江は謎の転落死を遂げてしまう。

最大の謎は、タイムカプセルの中に「みんな忘れないよ」というメッセージを残した人物「中野幸」(なかのみゆき)だ。不思議なことに中野は卒業前に引っ越しており、タイムカプセルを埋めた時にはすでに転校していたという。望緒以外の5人はこの名前が出ると明らかに怪訝な表情をし、望緒はなぜか存在を思い出すことができない。また、他のクラスメイトたちは望緒と同様に「顔が思い出せない」。

ドラマは殺された奈々江も含めた6人と中野幸が中心に進められていくようだ。友人5人がとにかく怪しく、なんなら主人公であるはずの望緒すらも怪しい。布石として置かれたであろう6人それぞれの要点をまとめ、考察していきたい。

全員怪しい!「仲良し6人組」をまとめてみた

雨宮秀一
イケメンでお金持ちでスマートな振る舞いを見せる雨宮は、存在そのものが怪しい。「地味な女子」という設定の望緒に、唐突にアプローチしているのが謎だ。「久しぶりに会って綺麗だったから」という理由だとしたら、事前に望緒を同窓会の受付に選んだ理由がわからない。何か近づきたいワケが他にあったのではないだろうか。

また、同窓会を主催したのも、タイムカプセルを掘ろうと言い出したのも雨宮だ。稜に「お前なんか変わったな」と言われているが、もしかしたら別人がなりすましている伏線なのかもしれない。タイムカプセルに埋めていたのはいろいろ情報が詰まっていそうな「携帯電話」。中身を見た可能性のある奈々江を殺した……という可能性も。

本田玲子
真面目で優等生な印象だが、含みのある表情を一番見せたのが玲子だった。タイムカプセルが見つからず、みんなが諦めムードのなか、不自然なほどみんなにハッパをかけていた。見つけた後も中身は「大したものじゃない」と隠している。

恋愛に奥手な望緒に「本気で誰かを傷つけてでもこれだけは譲れないって思ったことある?」と唐突な説教もかましていて、精神的に不安定な部分がほの見えている。弁護士としての情報網を利用し、奈々江の企みを見破っているが、手回しが良すぎるのも気になる。

野瀬優美
優美の秘密は、夫の正(徳重聡)からモラハラを受けていることだ。優美は門限を設けられており、「7分過ぎたようだね」とネチネチと責められている。正のモラハラの影響で奇行に走る可能性は存分にありそうだ。タイムカプセルは「当時流行ったサスケのCD『青いベンチ』」。

岩崎奈々江
1話で殺されたからといって、これで終わりということではないだろう。殺される直前に何者かと会話をしているシーンがあるが、その相手が犯人である可能性が高く、何かを一緒に企んでいた可能性もある。本当は死んでいなかった……というのは考えづらいが、のちのち絡んでくることは間違いないだろう。タイムカプセルは「願い事を書いた手紙」。

また、奈々江には「私は私たちがしたことを忘れない」という発言があった。5人が忘れたい過去で、隠したい出来事のことだろう。シンプルに考えれば、中野幸に対してイジメを行っていたとかそういった線だ。だが、ただのイジメだとしたら他のクラスメイトたちが誰も中野の顔を覚えていないというのが不自然に感じる。

深沢稜
望緒の幼馴染で、思いを寄せている様子の稜。同窓会の時に6人で撮った集合写真について、望緒に「昔もこんな写真撮らなかったっけ?」と言われた際に誤魔化しており、何か特別なことを知っているようだ。

しかし、これは恐らく望緒以外の5人が共通して知っていることの可能性が高い。稜の望緒への好意を前提に考えると、「何も知らない望緒を巻き込みたくない」という表情にも見える。この考えが正しいとしたら、この6人で写真を撮った際に望緒に内緒で何かしらの悪事を働き、それが5人の秘密になっているのだろう。

また、過去の写真は画角的にタイマーではなく、人の手によって撮影されたものだ。知らない人にお願いしたのかもしれないが、シャッターを切った人物こそが中野幸なのかもしれない。タイムカプセルは、「ワインのコルク」。

今井望緒
望緒は、中野幸を覚えていない。5人と一緒に行動してたのなら、これほどおかしななことはない。さらに6人で撮った写真については、うっすら覚えているという曖昧な状態だ。

一番怪しいと感じたのは、「ナカノミユキ」という男性とも女性とも取れる名前を見て、「中野幸くん」と男だと断定したことだ。覚えていないフリをしているのか、それとも写真同様記憶が曖昧なのか。いずれにしろ、望緒が覚えていない理由こそがカギを握りそうだ。

また、望緒にはクロさんという熱心なファンが1人だけ存在し、重要そうな描かれ方をしている。ただのファンということはなさそうで、5人のうちの誰かなのかもしれない。もしくは、望緒が自分で自分にファンレターを送っている可能性もありそうだ。望緒は、視聴者にすら何かを隠しているタイプの主人公に見える。タイムカプセルは、いかにも重要そうな「日記」。

謎が散りばめられつつも簡潔な考察が楽しいタイプの作品となっている。しばらくはこのドラマに振り回される日々が続きそうだ。原作漫画は連載中で謎はまだ明らかになってない部分も多いそうだが、僕はドラマを楽しむために放送が終了してから全部読んでみようと思う。

金曜ナイトドラマ『愛しい嘘~優しい闇~

■テレビ朝日系 毎週金曜夜11時15分〜

出演:波瑠、林遣都、溝端淳平、本仮屋ユイカ、新川優愛、黒川智花 他
脚本:丑尾健太郎、神田優
音楽:横山克
原作:愛本みずほ『愛しい嘘 優しい闇』(講談社「Palcy」連載)
主題歌:神はサイコロを振らない「イリーガル・ゲーム」(劇中歌「あなただけ」)
演出:樹下直美、日暮謙、木内健人
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、中込卓也(テレビ朝日)、山本喜彦(MMJ)、小路美智子(MMJ)

企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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