二宮和也『マイファミリー』考察。実行犯と黒幕の関係は「亜」がカギ?東堂(濱田岳)の動きはやはり怪しい
「犯人と対面!」の煽り予告で放送されたTBS系ドラマ『マイファミリー』6話。ラストにその対面シーンが来て、首から下を映してその続きはまた来週……というパターンを覚悟していたが、ハッキリと誘拐の実行犯の顔を見せてくれた。視聴者に対するフェアなスタンスが嬉しい。
そもそもこのドラマは、思わせぶりなミスリードで煙に巻かず、謎のためのあざとい謎もなく、むやみやたらと話を複雑化もさせない優しいミステリーだ。だからこそ役者の小さな演技や違和感に注目し、味わいたくなるというものだ。
犯人の動機は金じゃない?
5話で三輪優月(山崎莉里那)誘拐事件が解決。しかし、鳴沢温人(二宮和也)は、身代金の2割に相当する1億円を送りつけられ、犯人から電話越しに「ファミリー」として共犯者扱いを受けてしまう。さらに犯人は、阿久津実咲(凛美)を誘拐したと告げ、またしても温人を交渉人役に指名した。
誘拐について阿久津晃(松本幸四郎)・絵里(森脇英理子)夫妻以外に話さないよう指示されるが、犯人からの電話を切った直後、段ボールに詰められた1億円は、隠す間もなく妻・未知留(多部未華子)に見つかってしまう。
そもそも金の入った段ボールを豪邸に忍び込んで勝手口に置くなんてリスキーにもほどがある。もし、これで「約束を破りましたね。実咲ちゃんを殺します」とか言い出していたら理不尽極まりない。それとも、未知留は警察には言わないと信用しているのだろうか?
リスクと言えば、今回の実咲誘拐の身代金の受け渡し方法だ。10億円を1億円ずつ10日にわけて毎日受け渡せという。こんなの犯人にとってなんの得もない、捕まる可能性が高くなるだけの方法を提案している。
犯人は鳴沢友果(大島美優)誘拐で5億、優月で(温人への報酬を除いて)4億を稼ぎ、そして今回の実咲で10億、短期間で合計19億円を稼ごうとしている(温人への報酬を2割支払う予定ならば17億円)。複数犯だとしても最初の5億で満足してもよさそうなもの。それでも大きなリスクを背負って誘拐するのには、金以外の動機が隠されていそうだ。
「ハルカナ」黒幕説では動機不十分
では、金以外の動機とはなんだろう。まず、考えられるのは「ハルカナ・オンライン・ゲームズ」の利益。友果誘拐騒動のお陰で買収の危機から抜け出したことは大きい。6話のラスト、温人が身代金を受け取った車を追いかけると、そこにいたのは「ハルカナ」のプログラマー・鈴間亜矢(藤間爽子)だった。ハッキリ顔が映ったのだ。
亜矢は過去の友果誘拐の時も、オンライン会議で背景を変えて居場所を隠していた。彼女が連続誘拐事件の実行犯だったとしたら、黒幕は温人のビジネスパートナー・立脇香菜子(高橋メアリージュン)か、財務を握る取締役の備前雄介(渡辺邦斗)か、それともその両者か、ということになるだろう。
しかし、「ハルカナ」だと他の誘拐の動機がわからない。まあ、実咲の誘拐については、最初の友果誘拐の身代金をつくるために、実咲の父・晃の「NEXホールディングス」に「ハルカナ」の株を大量に売ったことが関係しているのかもしれない。そのダメージを金で奪い返すという目的だと解釈できないこともないが、優月はなぜ狙われたのだろう。さらに言うと、5年前に誘拐された東堂樹生(濱田岳)の娘・心春(野沢しおり)も、「ハルカナ」とは無関係に見える。この誘拐の犯人も新たな誘拐事件とつながっていないわけがない。
やっぱり東堂が怪しい
5話でも考察したが、動機は、心春を誘拐した犯人を捕まえるためというパターンも考えられる。一連の誘拐事件の中で心春だけが帰ってきておらず、今でも東堂は心春の居場所を探している。つまり、東堂があえて心春誘拐の模倣犯となり、犯人をおびき出そうとしている。友果誘拐についての暴露本を出版したのも同じ目的だ。
そう考えると、心春と同じ学校に通っている生徒ばかり狙うのも合点がいく。犯人が近い場所にいると考える東堂は、友果、優月、実咲を誘拐し、その周りを洗っていく。
今、東堂が一番疑っているのは、阿久津夫妻ということだ。身代金の受け渡しを10回に分けようとしたのは、それだけ交渉の機会を増やしたかったから。温人ひとりを受け渡し人に指定したのは、関係者を少なくして夫妻を泳がせ、尻尾をつかむため。
そうなると、身代金を受け取った実行犯の鈴間亜矢と東堂の関係が気になる。ネットでは、鈴間と東堂の妻・亜希(珠城りょう)の姉妹説が推されている。根拠は2人の名前に「亜」がつくというもので、まだほぼ登場していない亜希が後に絡んでくる可能性は非常に高い。
予告動画を見る限り、今夜放送の7話ではまたしても温人が黒幕と対面する。温人の「犯人はお前なのか?」という言葉には、ある程度の親しみが感じられた。全ての黒幕というわけではないだろうが、あのシーンには東堂が登場する気がしてならない。
なお、3話のレビューで、阿久津のゲームのアカウント名が犯人と一緒だったことを根拠に「阿久津犯人説」を考察しましたが、去る5月16日、ドラマ公式Twitterが<第一話の放送に登場した、阿久津晃がプレイするリビットウォーカーのアカウントIDが誤っていたことが判明しました。正しくは『akutsu01』です>と訂正を発表しました。残念ながら「説立証ならず」でした。
毎週日曜よる9時〜
出演:二宮和也、多部未華子、賀来賢人、高橋メアリージュン、濱田岳、玉木宏 他
脚本:黒岩勉
音楽:大間々昂
主題歌:Uru『それを愛と呼ぶなら』
演出:平野俊一、田中健太、宮崎陽平、富田和成
プロデューサー:飯田和孝、渡辺良介(大映テレビ)
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