二宮和也『マイファミリー』考察。ID“haruto1212”一致問題、怪しい捜査一課長……
二宮和也×多部未華子の『マイファミリー』(TBS)は、3話で一区切り。密度の高い誘拐サスペンスホームドラマだったが、どうやらこの先に展開される本筋の序章にすぎなかったようだ。解決していない、もしくはちょっと気になった部分が後半に生きてくる仕組みになっているのだろう。なんて面白そうなんだ。
誘拐犯に残された“得体の知れない悪”感
娘の友果(大島美優)を誘拐され、犯人から「警察を排除しろ」と命令された鳴沢温人(二宮和也)、未知留(多部未華子)夫妻は、自分たちの力で娘を奪還しようと決意する。しかし、警察は、秘密裏に温人の母の麻由美(神野三鈴)と未知留の父の正文(大友康平)を内通者にして、状況の把握を図った。
警察を排除して誘拐犯の信頼を勝ち得なければならない温人は、連絡手段として自社の人気ゲームアプリ『リビットウォーカー』内のチャット機能を提案する。誘拐犯と手を組まざるを得ない「被害者&誘拐犯VS警察」という図式は新鮮で、本来味方であるはずの警察との駆け引きが行われた。
温人は、麻由美と正文に身代金の5億円を持たせて犯人の指示に従わせる。当然警察は、内通者である麻由美と正文の動向から誘拐犯とのやりとりを傍受できる。警察は、5億円を受け取った男を追い詰めることに成功するが、突入してみると、その男は金で雇われただけのレポ(受け子)で、誘拐犯は、受け取り現場である部屋を生配信させていた。またも警察の介入がばれてしまった。今度こそ友果は殺されてしまうのか?
温人の計画!
だが、温人の計画は警察と犯人双方の上を行くものだった。実は、麻由美と正文が警察署と繋がっていることを察知していた温人は、警察を欺き、別の5億円を持って行動していた。『リビットウォーカー』の「すれ違い機能」を使って、誘拐犯の位置を特定。身代金は奪われ、犯人も逃してしまうが、なんとか友果を取り戻す。めでたしめでたし。
「被害者&誘拐犯VS警察」という図式の優れた点は、警察だけが負けた雰囲気になり、誘拐犯に格落ち感が出なかったことだ。このおかげで、新章に同じ犯人が出てきたとしても“得体の知れない悪”のままだし、さらなる凶悪な事件を起こしかねない予感もある。
また警察も、警部の葛城圭史(玉木宏)が温人に対して「犯人を逃したことを後悔する」と意味深なセリフを言い放ったことで、威信を取り戻した。これで警察は、「世間体を気にして手柄を立てたいだけの集団」というだけでなく、「事件の裏側を見て行動していた」という位置に収まったのだ。
“haruto1212”とサンドウィッチマン富澤が怪しい
ドラマは「その383日後」に飛ぶ。
温人が「なんでこうなるんだよぉお!!」と崩れ落ちている。どうやらまた家族が何かしらの事件に巻き込まれたらしい、葛城の「犯人を逃したことを後悔する」はこれを予見しての言葉だったのだろう。葛城は、友果誘拐事件を4年前に起きていた事件を関連づけて考えていた。おそらく今回の事件も同じだ。
事件が一体どんなものなのかは不明だが、前回の事件に黒幕のヒントがあると考えられる。この時点で特に気になる部分、人物を挙げておきたい。
・ゲームID“haruto1212”
話題になっているのが、犯人が使っていた『リビットウォーカー』のIDが“haruto1212”だったこと。なんとこのID、事件解決にも協力したNEXホールディングスの阿久津晃(松本幸四郎)が第1話のエンディングで使っていたIDと同じなのだ。
これをまんま受け取れば、犯人は阿久津で間違いない。しかし、さすがに犯人がずっと使っていたIDで事件のやりとりをするとは思えない。さらに1話の時点では43レベルだったのに、3話ではレベル1になっていた。通常のゲームと同じシステムならば、上がることはあっても下がることはないはずだ。
さらにさらに、3話で阿久津はakutsu01というIDでプレイしているシーンがあった。もちろん別のIDでプレイしていることは考えられるのだが、これがまた不可解なことに、akutsu01のレベルは1話のharuto1212と一緒の43だったのだ。
阿久津がharuto1212からakutsu01にIDを変更し、空いたharuto1212を犯人が使ったと考えられるのだが、なぜ犯人は阿久津のIDを知っていたのだろうか? なぜ阿久津がIDを変更したのかもわからない。そもそも阿久津はなぜharutoの名前を使っていたのだろう? これから『リビットウォーカー』が出るたびにIDを注視していきたい。
ちなみに温人のIDは、haruto1001。1001と1212という数字には、誕生日や結婚記念日など何か特別な意味がありそうだ。
・捜査一課長・警視の吉乃栄太郎(富澤たけし)
ノンキャリアで叩き上げの捜査一課長・警視の吉乃栄太郎。温和な性格で信頼も厚い設定のようだが、こいつが怪しい。3話では5億を持ち去った男が囮(おとり)である可能性を考えて「友果ちゃんの救出を最優先する」と指示を出していた。
にもかかわらず吉乃は、友果の存在を確認せずに「(犯人のいる小屋に)突入しろ!」とリスキーすぎる決断をしている。今回の警察のミスは、吉乃のミスと言っても過言ではない。良い人のフリをしながら事件を都合よく操作しているように見えてならない。
・友果が誘拐されたタイミング
資産家の娘である友果の誘拐は、当然計画的に行われたもののはず。しかし3話では、たまたま未知留とケンカをして、たまたま塾に1人で行ったタイミングで誘拐されたことが発覚した。以前から1人になる瞬間をうかがっていたという可能性もないとは言い切れないが、それならもっと別なタイミングがありそうだ。
となると未知留か友果のどちらか、もしくは2人が犯人と繋がっていることもあり得る。自作自演だと、よっぽどの仕掛けや衝撃展開がないと視聴者の期待を下回ってしまいそうな気もするが、ないわけではない。また、近所に住んでいる阿久津なら、友果が1人になるタイミングを用意周到に待っていたとも考えられる。
特に気になったのは以上の3つだが、細かいところは他にもある。プログラマーの鈴間亜矢(藤間爽子)は、犯人の位置情報を特定するオンライン会議で1人だけ背景を変えて居場所を隠していた。三輪碧(賀来賢人)と東堂樹生(濱田岳)が未知留の車で起こした学生時代の事故にも何か秘密があるはず。東堂が警察を辞めた理由だって、大きな鍵を握っていそうだ。
公式ホームページの4話あらすじは、ビックリするくらい内容が書かれていなかった。大事な情報をあらすじであっさり明かしちゃうのはドラマあるあるだが、今作のガードは固い。一体、今夜何が起きるのだろう。
毎週日曜よる9時〜
出演:二宮和也、多部未華子、賀来賢人、高橋メアリージュン、濱田岳、玉木宏 他
脚本:黒岩勉
音楽:大間々昂
主題歌:Uru『それを愛と呼ぶなら』
演出:平野俊一、田中健太、宮崎陽平、富田和成
プロデューサー:飯田和孝、渡辺良介(大映テレビ)
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