27歳独身女子。家を買って手に入れたのは“自分で自分を幸せにする覚悟”

働く独身女性は、実家や賃貸の部屋に住んでいるのが一般的。家を買うのは結婚してから……と考える人も多いでしょう。一方で、おうち時間が増える中、考えを変えた人もいます。27歳独身、東京で働く顧さんは、家を買う決断を通じて見えてきたものがあったそうです。

コロナ禍、ワンルームでメンタルがやられて

早起きすれば、朝焼けも見えるリバーサイドビュー。2020年11月、コロナ禍の真っただなか、ベランダからのひらけた眺望に運命を感じて、35年ローンで家を買いました。2LDKの分譲マンション。名義は自分オンリーです。

2017年ごろから30平米ほどのワンルーム暮らし。一応住むエリアと安全性にはこだわったけれど、日当たりは最悪でした。
コロナが流行して昼間でも電気が必要な空間で終日過ごすことになると、みるみるメンタルが沈んでいったんです。「日が当たらな過ぎて、心がやられる!」 と家探しをスタートしました。

これまで賃貸に住んできた私は、当然のように賃貸物件探しを開始。しかし、「都心」「2階以上」に加え、コロナ禍で重視するようになった「日当たり良好」「2LDK」が揃う物件は、どれも予算オーバー。
ふと好奇心で中古マンションのローンのシミュレーションをしてみると、月々の支払いが賃貸より安かったのです。諸経費を考慮しても賃貸より安いし、持ち家は資産になる――。ノリと勢いで内見をしていくうちに、分譲住宅にどんどん魅了されていきました。

アクセスの良さと広さ、どっち?家探しで見えたもの

一般的に「中古マンションはリセールを考えてアクセスの良さを重視するべし」と言われています。

アクセスを重視すると、私の予算内では、広さへのこだわりを手放す必要がありました。ただ、コロナ禍の狭い部屋暮らしで、メンタルガタガタになった経験をふまえると、私にとって広さはマストです。

陽の当たるリビングのソファで本を読みながら寝落ちする週末、好きな本を並べまくった書斎――。そんな理想の暮らしを叶えてくれる、日当たり良好の広々とした空間を、どうしても妥協できない自分がいました。

結局買ったのは、63平米、2LDK。希望エリアから電車で約30分離れた、ローカル線の小さな駅が最寄りの物件。さらに駅からは徒歩10分です。アクセスが良いとは言えないし、近くには“いい感じの居酒屋”も“ちょっと気になる雑貨屋”もありません。代わりにあるのは、土手でかけっこをする子どもたちやランニングする人々がいる風景。晴れた日の昼間には、部屋中に日の光が差し込みます。

最終的に私が優先したのは「自分自身がホッとする空間かどうか」でした。広さと日当たりを重視して、都心からのアクセスや利便性を妥協したとき「“このエリアに住む自分というステータス”は、私にとっていらないものだったんだな」と、気づきました。

持ち家というのは多くの人にとって、人生で一番高い買い物でしょう。私の場合は35年かけて、数千万のお金をローンとして返します。でも、すべての条件を満たしてくれる家はありません。

限られた予算内で納得のいく買い物をするためには「そもそも私ってどういうものに価値を感じる人間なんだっけ?」という自問自答をし、“断捨離”をする必要がありました。それはまさに、人生の優先順位を見つめ直す作業そのものでした。

幸せにしてもらうのを待つほど、人生は長くない

今後の仕事や生き方、そしてお金のことを地に足つけて考え、自分の価値観に素直になった決断ができたこと。それによって、妙な自信と自尊感情も湧いてきました。「自分の人生に自分で責任を持つのだ」という覚悟が持てたのです。

一人で家を買う女性に対して、「パートナーとの生活などを諦めている」とか「婚期が遅れる」といった目線を向ける人がいることもわかっています。

たしかに私自身、家を買う前は30歳を目前に「年収や生活習慣などが、私の希望に合う相手がいたらいいな」と妄想することがありました。2人の名義で家を買う、もしくは家を買ってくれる相手がほしい、とも。「誰かに幸せにしてもらう」ことを、どこかで考えていたのです。

でも、コロナという不測の事態を経て、家で過ごす時間の大切さを無視することはできませんでした。住環境次第で、幸せとも、不幸せとも感じてしまう。いつ出会うかもわからない誰かに幸せにしてもらうのを待つほど、人生は長くはありません。

納得のいく決断ができたことを35年の支払いを通じて実感する。そう考えてみると、毎月の住宅ローンも若干愛おしく思えてくるような。「自分で自分を幸せにする手ごたえ」を、家が教えてくれた気がしています。

1993年生まれ。中国出身、東京都在住。慶應義塾大学で美術を学んだのち、外資系エージェンシーを経て現在は博報堂キャリジョ研所属。戦略プラナー/サービスデザイナーとして食品、トイレタリー、化粧品などの分野で、クライアントのコミュニケーション戦略や商品開発、新規事業立案に携わる。男女ともにフラットな社会を実現するため、プランニングに日々邁進。最近は筋トレとコーチングの学びにいそしむ。
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