#ミレニアルズのモヤモヤ考察

料理は誰がするもの?「男性・女性のどちらでもいい」が6割。“適財適助”のススメ。

働く女性たちを徹底研究している「博報堂キャリジョ研」のメンバーが、同世代のミレニアル女性たちのモヤモヤについて、熱い思いと豊富な分析資料を交えあれこれ考える連載。第9回は料理について。家事代行サービスなんかも生まれている昨今、自宅での料理は一体誰がするもの?

●#ミレニアルズのモヤモヤ考察09

料理は、自分でやらなくてはいけないもの?

博報堂キャリジョ研も取材協力させていただき大ヒットとなったTBSの火曜ドラマ「私の家政夫ナギサさん」では、家政夫のナギサさんが作る料理、通称「ナギごはん」が人気になった。体への思いやりが詰まったご飯に、わたしも家に帰ったら「ナギごはん」があったらいいのに、と思ったほど。コロナ禍で外食しづらかった間、外食の宅配サービスを使うことがより一般化した。最近はお惣菜の定期宅配サービスや時短ができるミールキットなども登場し、利用者も増えてきているように感じる。
とはいえ、ドラマの主人公・メイちゃんが最初は家政婦に家事を頼むことに抵抗があったように、わたしたち女性はどこかで「料理は自分で作らなくてはいけないもの」と思っているのではないか。

男性も女性も、料理が得意・苦手は約半数に。

今回、20~30代の男性女性合計200名に、料理に関するアンケートを実施してみた。
料理が得意かどうかを聞いてみたところ、「料理がとても得意だ」と答えたのは、なんと男性のほうが多い結果に。そして、男性も女性も料理の得意か否か、という点では大きな差がないことも分かった。約4割が「とても得意」もしくは「まあまあ得意」と答え、約6割が「あまり得意ではない」「苦手だ」と答えている。わたしたちが実感しているように、“女性だから料理が得意”なんてことは、ないのである。

料理を担当するのは、「どちらでもいい」という回答が6割。

料理を担当するのは誰がいいと思うか聞いてみたところ、男性も女性も「どちらでもよい」が約6割で一番多かった。正直、ここまで大きな数値が出るとは思わなかった。「どちらかというと女性だと思う」という回答は2割を超えているが、その3倍もの人がどちらでもいいと答えているのだ。料理の性役割はなくなり、どちらがやっても良いと男女ともに考える時代がついに到来したようである。

高まる夫の家事参加意識。しかし実態は妻に偏り。

ここで参考までに、夫婦の家事分担の実態を見てみたいと思う。
博報堂生活総合研究所の「家族調査」によると、「夫も家事を分担するほうが良い」と考えている人は、この30年で38.0%から81.7%へと急増した。前述のアンケートと似た傾向がうかがえる。

実態を見てみると夫の家事への参加は、妻のそれとは大きく乖離している。とはいえ、右肩上がり。女性の数字は大きく落ちる傾向はなく、料理を含めた家事を男性もする未来が見えてきている。

家事は、立派な「仕事」である!

しかし、家事は誰でもすぐにできるようになるものではないと思う。恥ずかしながら、実家を出て長い年月が経つ私も、あまり得意ではない。「家事代行」という職業が成立し、特に料理に関しては、日本料理店や中華料理店などに「料理人」がいるように、「プロ」が存在している。例えば、料理人の修行に、長い時間がかかるのは周知の事実だろう。師匠に弟子入りし、最初は野菜の皮むきや下ごしらえなどから始まる。そして、トライ&エラーを繰り返し、試行錯誤し、コツをつかんでいくのは、わたしたちの仕事と同様だろう。これは、料理だけではない。家事はすべて、努力を重ねることでうまくなる。つまり、習得に時間がかかるものなのである。
内閣府の経済社会総合研究所が2018年に発表した「無償労働の貨幣評価」によると、1カ月140時間の家事をする専業主婦の月給相当額は、「20万3000円」(=1450円×140時間)であり、年間に直すと約250万円だそうだ。やはり家事は立派な「仕事」と言えるだろう。

令和の時代は、「家事分担」から「家事協力」へ

男性たちの家事参加意識が変化してきている中で、私たちは家事とどう向き合えばうまくいくのだろうか。
家事の役割分担という言葉があるが、夫婦の場合「分担」ではなく、これからはいかに「協力」し合えるかが大切ではないだろうか。「分担」の場合は、やるべき家事の総量を100と置くと、それらをどのくらいの割合で分け合ってやるのかという視点になる。家にいる時間の長さや仕事の忙しさなどに応じて振り分けるため、偏ると不平等と感じ不満も出やすいだろう。一方、「協力」となると、できるときにできる量だけお互いがやることになる。もし苦手な領域があれば、二人で一緒にやるのも良いだろう。すると、「今週は60できた」「次の週は120もできた」と、できたところに目が行き互いを称え合う――そういう気持ちになるのではないだろうか。夫婦を1つのチームと考えて、無理のない範囲で、できることを「協力」し合ってやっていく。こういった、積み上げ型の発想にしてみるのは、どうだろうか。

「適財適助」しませんか?

それでも家事の手が足りない場合や苦手な場合は、外の力を借りてしまうのが良いだろう。仕事が忙しいときや子育てが大変な時期などはもちろん、思い切って毎週でも毎日でも頼ってしまってよいのではないか。「家政夫のナギサさん」が、家事のスピードがとても早くて上手であったように、彼らは圧倒的な家事仕事のプロなのだから。必要なところにお金をかけて、助けてもらう。そう、適材適所ならぬ、「適財適助」をすることも、私たちの選択肢の一つになるのではないか。

これからの時代は、料理も家事も「女性がやらなくてはいけない」時代は終わり、性別関係なく「自分たちだけでやらなくてはいけない」という時代も超え、「外の力も借りながら、みんなで協力してやっていく」時代へと変わっていくことができたらいいなと思う。様々な家事サービスが、より手軽に受けられる環境が拡大してほしい。同時に、私たち自身が家事分担の呪縛から解き放たれ、自分たちのできること一つ一つに目を向けてそれを褒め合い、できないことは頼る。そうすることで、「家事を誰がやるべきか」などという議論そのものが、この国からなくなる日が来ることを、願うばかりである。

グラフ出典:
●博報堂キャリジョ研 自主調査 2020年9月実施 インターネット調査(全国)20~30代男性女性200名で分析
●生活総合研究所「家族調査」 (首都圏630世帯、夫・妻 各630人)

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「働く女性」(キャリジョ)をテーマに、博報堂&博報堂DYメディアパートナーズの女性プランナーやプロデューサーで立ち上げた社内プロジェクト。女性のトレンドを集めたインサイト分析や有識者ヒアリング、定性・定量調査やクラスター調査などから「働く女性」を徹底的に分析し、日々のマーケティング・プランニング業務に生かしています。