家事プレッシャーを手放そう。苦手ならどんどん人に頼んでいい

家事は自分でやるもの。家事は女性がやるもの。家事代行は、子育て中の働く人が使うもの――。無意識のうちに、そんな固定観念にとらわれていませんか? でも、ちょっと待って。実際は、家事を女性だけがやらなくてもいいし、大変なときは誰だって家事代行に頼ればいいのでは? 家事へのプレッシャーを手放して心の余裕を取り戻し、軽やかに生きる人たちに会いに行きました。

ネイルより精神安定をもたらしてくれる

 大手人材広告会社で働き、都内で一人暮らしをしているSさん(28)が家事代行サービスを使い始めたのは3年前。月に1~2回、1回3時間来てもらい、平日にたまった洗濯や掃除をまとめて片付けてもらっているそうです。今では「まつ毛パーマやネイルよりも精神安定をもたらしてくれる」と言います。

「洗濯が嫌いなので、可能な限り洗濯機をまわしてもらっています。あとはゴミ捨て、床掃除、水回りの掃除もお願いしています。平日は疲れて帰って家事する気にならないし、土日はゆっくり遊びたい。ブランドものの服は買わないし、旅行にも行かないので、家事をアウトソースできるなら、ためらわずにお金を使います」

平日たまっていく家事に「やだな」と思うこと自体が嫌だったというSさん

 とはいえ、家事を人に頼むことに当初は抵抗があったそう。「他人を家に入れてお金をかけて家事代行なんて、やっちゃっていいのかなと思っていました。でも、仕事が忙しいときに、土日が家事で半日つぶれるのがすごく嫌で。1回やってみようかな、と思いきって頼んだのが始まりでした」

美容院>家事代行>まつ毛>ネイル>ジム

 家事代行にかけるお金は、月に1万円前後。ほかにも美容院は欠かせないし、ネイル(1回8千円)やまつ毛パーマ(1回5千円)、ジム通いにもお金がかかります。もしどれかを削らなければいけなくなったら、家事代行の優先順位はどのへんにくるのでしょう?

 Sさんの答えは、美容院>家事代行>まつ毛>ネイル>ジムの順。「ジムはすぐ削れる。ネイルはテンション上がるけど、家事代行はないと生活が困るレベル。今よりちょっと年収が下がっても、使うと思います」

一人暮らしの女性も、じつは結構使っている

 Sさんが初めて利用したのは、家事代行大手の「ベアーズ」でした。その後、もう少し安価に使えるところはないかと探し、現在は「CaSy(カジー)」を利用中。CaSyは1時間2190円からで、スマホアプリで予約できる手軽さが気に入っているそうです。

CaSyはスマホアプリで、派遣されるキャストとのチャットもできる

 実はCaSyの会員5万人のうち、3割超を単身者が占めています。広報担当者は「プライベートの時間は趣味や自己投資に充てたいと考える女性が多い。自分の時給に換算すると、家事をアウトソースした方がコスパがいいと考える人もいます」と話します。年代別では20代から40代がほとんどですが、なかでも30代が半数近くを占めているそう。会員登録数は2017年9月からの1年間で約2倍に急増中で、最近は土日の申し込みに対応しきれないこともあるといいます。

 ちなみに家事代行会社には、ベアーズやCaSyのような会社が雇用するスタッフを派遣する仕組みだけでなく、家事を代行する人とお願いしたい人を仲介するマッチング型の会社もあります。マッチング型の「タスカジ」の利用料金は、「業界最安値水準」という1時間1500円から。個人間をマッチングするプラットフォームの提供にとどまるので、人材育成などの管理コストがかからないのが安さの理由です。

 案外、一人暮らしの人も利用している家事代行サービス。とはいえ、初めて使ってみるにはまだまだハードルが高いと感じるかもしれません。後編は、会社の福利厚生として全社員が無料で家事代行を使える制度を整備した、あるスタートアップ企業についてレポートします。そして私も、実際に初体験してみました。

2011年に朝日新聞社入社。記者として大阪、鳥取、東京経済部を経験。最近ウェブメディアの部署に異動し、右往左往する日々。