考察『逃亡医F』犬を救い、外国人集団に匿われる天才医師の運命は? 追っ手の正体がわからない
非常事態だからこそ「医手一律」を貫く
恋人・妙子(桜庭ななみ)を殺したという無実の罪を着せられた主人公の藤木(成田凌)が、追手から逃げながら行く先々で医者として人々を救う『逃亡医F』。4話では犬をまさかの緊急オペで救い、5話では不法滞在の外国人に匿われる展開だった。
3話ラストで警察の包囲を振り払ってまで藤木を連れ出した妙子の兄・拓郎(松岡昌宏)。殺さんばかりの勢いで自白を迫るが、藤木はなんとか逃げ延びる。妙子の残した言葉に従い、都波(酒向芳)に会うため、東京へ向かおうとする藤木はトラックに忍び込む。そのトラックに乗っていた間宮(渡辺いっけい)と昌明(森永悠希)は、犬を盗んで運ぶ途中だった。検問をなんとかくぐり抜けるもやはり警察が追ってくる。そんな中でも、藤木は目の前の苦しんでいる相手を見過ごせない。それがたとえ犬でも。一方、間宮に脅され仕方なく犬を盗んだ昌明は、間宮と取っ組み合いになり、ケガをさせてしまう。
4話は藤木が妙子から教えられて以来、自分の信念としている「医手一律」が際立って見えた展開だった。犬と人間、どちらも苦しんでいる状態でどちらを先に助けるか。命の軽重などなく、より緊急性の高い方から救うのが藤木なのだ。
もうひとつ、自分の目的を果たすことより、苦しんでいる人を助けることを優先するのも藤木だ。これまでも追っ手が迫ってきているなか、手術を続けてきた。5話では、自分を匿ってくれた不法滞在の外国人たちと一緒に暮らすチュンヤン(森迫永依)が苦しんでいると聞き、都波に会うため向かっていた道を引き返してまで救おうとする。チュンヤンは廃団地に隠れ住む外国人グループのリーダー、モー(中村蒼)と愛し合う仲だった。
「僕の好きな人はもうこの世にはいない。救えなかった。だから君の好きな人でいい、救わせてくれ」
愛する人を失う悲しみを知るからこそ、藤木はどうしてもチュンヤンを捨て置けなかったのだろう。
藤木を追う人たち、その絡み合い
4、5話では追っ手にも大きな変化があった。藤木を逃してしまった拓郎が、奪った携帯をたよりに美香子(森七菜)に近づき、ともに藤木を探すことになったのだ。さらに都波、筋川(和田聰宏)と4人で、藤木が都波に会いに来るのを待ち構える流れに。藤木の敵と味方が混じり合うというまさかの展開。
「藤木さんの潔白を証明するのも、罪を暴くのも、みなさんやることは同じなんですから。チームになって団結しましょう!」
美香子の言葉が心強い。しかしさらにもう一組、藤木を追っている存在があった。バイオベンチャー企業・バイオネオの佐々木(安田顕)や烏丸(前田敦子)たちだ。彼らの社内には、実は意識を失いながらも生きている妙子がいる。妙子の研究データのありかを探るため、藤木を探していたのだ。烏丸は藤木に接触し、妙子の部屋から盗んできたテープを渡す。テープの中身は烏丸が聞いたときと同じ謎の昭和歌謡だったが、しかしラベルの「F」の部分が「KK」に変わっていた。これは何を意味するのだろう。
烏丸は元々藤木の知り合いだったらしい。尾行して藤木の居場所を突き止めた彼女に最初こそ最大限の警戒をする藤木だが、ちょっと話しただけでいつの間にか藤木が烏丸に「信じてくれ!」と言うほど立場が逆転していたのには驚いた。烏丸の駆け引きのうまさがこの先どう物語に影響していくのかも気になるし、妙子の言葉を守って「誰も信用しない」と決めているはずなのに純粋な藤木のこの先が心配にもなる。
そうそう、5話で藤木に必要な薬を届け、「ようやく僕を頼ってくれましたね」という医者の後輩・長谷川(桐山照史)も、今のところほんとうに藤木を心配して、彼の助けになろうとしているように見えるが、本当のところはどうなのだろう。
追っ手とともに協力者も増えていく
5話では、日本人が外国人を見下し、差別しているなかでWi-Fiが入りやすい場所だけは都会のオアシスよろしく仲良く交わっているというシーンがあった。本筋には関係のない、こんなちょっとしたシーンが心を揺さぶってくるのだから、このドラマは気が抜けない。
さまざまな追っ手に追われ続ける藤木だが、ゆく先々で人々と向き合い、人々を助けることで、協力者を増やしてもいる。2話で助けた子どもの父親・松田(林泰文)のおかげで検問を切り抜けられたり、不法滞在の外国人たちに自転車やバイクを用意してもらったり。藤木の信じ、貫き続ける「綺麗ごと」がさまざまな悪意と罠を乗り越えることで、彼の潔白が証明される日がくるのだろうか。
■日本テレビ系 毎週土曜夜10時〜
出演:成田凌、森七菜、桐山照史、前田敦子、安田顕、松岡昌宏 他
脚本:福原充則
音楽:今堀恒雄
原作:伊月慶悟、佐藤マコト(作画)『逃亡医F』(Jコミックテラス)
主題歌:奥田民生「太陽が見ている」
演出:佐藤東弥、大谷太郎 他
チーフプロデューサー:三上絵里子
統轄プロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:藤村直人、本多繁勝
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