『DCU』3話。隆子(中村アン)の死と、新名(阿部寛)と瀬能(横浜流星)の因縁を繋ぐセリフに注目
TBS系ドラマ日曜劇場『DCU』が計り知れない。3話終了時点では、展開が読めないどころか、どういうドラマなのかすらまだ見えてこない。
新名正義(阿部寛)と瀬能陽生(横浜流星)の過去を縦軸として進めていくかと思われたが、1月30日に放送された第3話で方向性が一変する。誰も予想できなかったであろう衝撃展開を迎え、大きな縦軸がもう一本追加された。こうなったら最後まで視聴者を揺さぶり続ける特大スケールの大作になってほしい。
同情の余地が欲しかった
3話では、外国の技能実習生ロドリゴ・サンチェス(フェルナンデス直行)の正体が、国際テロ組織「ブラックバタフライ」のメンバー、ジョアン・ロペスだと発覚する。ロペスを逃した隆子(中村アン)は、失態を取り返そうと焦って暴走してしまう。
国外に逃亡しようと船を走らせるロペスを、隆子は新名の命令に背き1人で追う。「やめろ!行くな!」。新名は無線越しに叫ぶが、それはもう「ダチョウ倶楽部」状態。フリにしか聞こえない。案の定、止めれば止めるほど隆子は暴走し、ロペスが乗る船に単独で乗り込んでしまう。
上司の命令を無視しての暴走は、ドラマにおいて明確な死亡フラグだ。しかし、まだ3話、さすがに紅一点状態の隆子がまさか……と思われたが、隆子は何者かにあっさりと殺されてしまう。衝撃展開! しかも、隆子がやったのは命令違反だけでない、国際問題にもなりかねない領海侵犯だ。
もう少し同情の余地というか、不慮の事故感というか、理不尽な死でさえあれば、素直に悲しめたのだが、ちょっと真っ直ぐ死に向かいすぎていたきらいがある。単身での船内の捜索はやりすぎだった。
2つの大きな縦軸とその共通点
おそらくここからは、隆子を殺した犯人とブラックバタフライを追う展開になるだろう。1話完結型のストーリーに、大きな縦軸が生まれたのだ。もちろん、3話では触れられていない縦軸がもう一つあることも忘れてはならない。
それは1話冒頭の回想シーン。15年前、機密データをリークした疑いをかけられていた瀬能博士(西尾浩行)が船の爆発事故で死亡した。巻き添えを食った息子の陽生を新名が救い出したことで、後に陽生はDCU入りを果たす。しかし、1話のラストで陽生は、突然当時の詳細を思い出す。自分を助けたのは新名ではなく事件で殉職した隆子の兄・成合淳(吉川晃司)で、新名はむしろ父の死の原因になったのだと。
今のところ真実は何もわかっていないが、新名と陽生の過去、そして2人の確執は物語の鍵を握る。
相手を殺しかねないほどの取っ組み合いをしていた2人が、いつのまにか「犬猿の仲の師弟」ぐらいに収まっているのはちょっと納得がいかないが、間違いなくこれも大きな縦軸だ。
「ブラックバタフライ」と「新名と陽生の過去」。一見何も関係のない事件に見えるが、実はある共通点が存在する。それは3話での公安の清水健治(山崎育三郎)のセリフにある。
「ブラックバタフライというのは、我々公安が15年以上前から追っているテロ組織だ」
成合と陽生の父が死亡した事件が15年前で、ブラックバタフライの存在が確認されたのと同時期になる。つまり、船の爆破事故にブラックバタフライがかかわっている可能性が高いのだ。おそらく、隆子を殺した犯人を追っていくうちに、陽生は自分の過去の真実を知る……という展開になっていくだろう。
1話のダム建設の横領事件から、国際テロリスト集団逮捕へ。事件がどんどんスケールアップする上に、ヒロインを3話で死なせてしまう大胆な構成。荒い部分も目立つが、今後も我々を存分に振り回して欲しい。
■TBS系 毎週日曜夜9時〜
出演:阿部寛、横浜流星、中村アン、山崎育三郎、趣里 他
脚本:青柳祐美子、小谷暢亮、谷口純一郎
音楽:木村秀彬
主題歌: Lizabet「Another Day Goes By」
演出:田中健太、青山貴洋、宮崎陽平
プロデューサー:貴島誠一郎、伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣
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