相手の姿を見ず、会話だけで結婚を決める『ラブ・イズ・ブラインド JAPAN』で質問力について考えた
●熱烈鑑賞Netflix107
声だけで結婚相手を探す“婚活”
恋愛リアリティショーが苦手で、ほとんど見たことがない。子どもの頃に『あいのり』を少し、あとは地上波で放送していた頃の『テラスハウス』(ともに当時・フジ系)を何度か観たくらい。
『ラブ・イズ・ブラインド JAPAN』を見ようと思った理由はたったひとつ、ナビゲーターに藤井隆の名前があったからだ。『新婚さんいらっしゃい!』(テレ朝系)の新MCにも抜擢された彼が、この作品でどんな振る舞いをするのか、見てみたかったのだ。けれども実際には、ナビゲーターは現在配信されている5話のうち、冒頭と5話目に少し登場するだけだった。
それでも5話まで観たのは、ひとえに「相手の姿が見えないままプロポーズまでたどりつく」というこの作品の特殊性によるものだ。
「外見を重視するパートナー探しに疑問をいだいている独身者に新たな婚活メソッドを提案する実験型の婚活リアリティショー」という触れ込みの今作は、アメリカで始まり話題を呼び、エミー賞リアリティ部門にもノミネートされたほど。参加者はPODと呼ばれる個室に入り、壁を1枚隔てて向こう側の相手と声だけで”デート”をする。
見えない相手に何を質問するか
参加者は、職業、長所と短所、出身といったパーソナルデータから、譲れないことや、結婚したらどんな家庭を築きたいかという今後の展望まで、どんどん質問を投げかけ合い、相手を探っていく。目標が恋人ならばもう少し軽くやりとりできるのかもしれないけれど、結婚だからみんな悩む。
第1話で「好きな味噌汁の具はなんですか?」と聞くミナミが印象的。彼女はその個性的な質問で男性陣のなかで噂になる。「バスタオルの交換頻度」など彼女のニッチな質問に心をつかまれたモリから「ほうっておけない」と告白され、カップルになる。
そういえば美容師のリョウタロウとカップルになったモトミも、告白を受けたときに自分の“取り扱い注意事項”として「味噌汁の具材がかなり多いので驚くと思います」と言ったのだけど、世の中の人はそんなにも頻繁にみそ汁を食べているのだろうか。料理研究家・土井善晴先生の「一汁一菜という提案」が私が思っている以上に浸透しているのだろうか。
自分だったら相手に何を質問するだろう、と考えはじめると難しい。
子どもの頃、地元のローカル番組で「友だちを作る」という企画があった。一般女性が同性の友だちを探すというものだ。おぼろげな記憶では、これも確かシルエットだけが見えるついたてを立て、相手の顔を見ない状態で質問を交わして互いを探っていくというものだったはずだ。そんなささいな記憶をなぜ覚えているかというと、質問が強烈だったから。登場した「友だちがほしい」女性は、まず第一声で友だち候補に聞いた。「松田聖子をどう思いますか?」。スタジオの空気は「なんでそんなこと聞くの?」という感じで一瞬張り詰めた。候補の人たちも戸惑いながら答え、結局、彼女は友だちを見つけられなかった。
けれども全く理解できないわけではないな、といま振り返って思う。当時ワイドショーに頻繁に取り上げられ、恋多き女性に見られていた松田聖子という人をどう思うかで、その人の考え方がわかると、彼女は思ったのだろう。
結局のところ“フィーリング”
番組内でも語られているけれど、「相手の表情が見えないから、どう思っているかわからない」というのは相当に怖いことだろう。参加者のひとり、アヤノが接する人それぞれに「私こんな話をしたの初めて」と言う。そのことが男性陣の部屋ですりあわせされ、彼女が最初にいいなと思った人とうまく行かない展開があるけれど、彼女を責められないなと思う。きっと彼女の中では嘘ではないのだろうし、目の前の人(見えないけど)に対していい気持ちになってもらいたいと思うのは自然なことだ。
本家アメリカ版の『ラブ・イズ・ブラインド』では、人種や宗教の話がポンと出てくる。「せっかく声だけのコンセプトなのに人種を聞くなんて!」と怒る参加者もいたりする。それだけで、日本とはぜんぜん違うなと思わされる。
質問力について考えながら見ていると、「たわいない話ができない」と悩む参加者が目に入った。そう、結局最初にたわいない話で盛り上がった相手に好印象を持ち、その印象が最後まで続いたままカップルになっているパターンが多かった気がする。
質問の内容どうこうよりも、結局は最初に見つけた共通点とか、会話のスピード感とか、そういうフィーリングの部分のほうが大きいのかもしれない、と思ってしまう『ラブ・イズ・ブラインド JAPAN』である。
出演:藤井隆、板谷由夏
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