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恋愛リアリティショー「ザ・ジレンマ: もうガマンできない?!」パリピが禁欲生活を強いられる1カ月【熱烈鑑賞Netflix】

世界最大の動画配信サービス、Netflix。いつでもどこでも好きなときに好きなだけ見られる、毎日の生活に欠かせないサービスになりつつあります。そこで、自他共に認めるNetflix大好きライターが膨大な作品のなかから今すぐみるべき、ドラマ、映画、リアリティショーを厳選。今回取り上げるのは、常識破りな恋愛リアリティショー「ザ・ジレンマ: もうガマンできない?!」。イケてる男女が共同生活を送り、キスやセックスをすると賞金1,000万円から減らされます。自分の恋愛も見直せるかも?

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4月17日よりNetflixで配信されている「ザ・ジレンマ: もうガマンできない?!」が話題。しばらく日本総合第1位の座をキープしていたほどである。原題は「Too Hot to Handle」で、直訳は「扱うには熱すぎる」、全編通して見たあとは「エロすぎて手に負えない」と意訳することができる。困った作品だった。

寝耳に水! セックス禁止ルールに絶望

内容は、全8話の恋愛リアリティショー。この手の作品は多いが、「ザ・ジレンマ」ならではの特徴がいくつかあった。まず、賞金として100,000ドル(日本円で約1,000万円)が用意されており、ルールを破るとドンドン減額されていく。ルールとは、性的交渉禁止、キス禁止、愛撫禁止などだ。
正直、そんなに大したこととは思えない。他のリアリティショーを見ても期間中はセックスしていないし、滞在期間はたかだか1カ月である。1カ月のNOセックスなどパートナーがいなければざらだろう。しかし、参加者たちは「まるで、考えうる限りで最悪のホラー映画だよ」「母親を亡くしたみたいに悲しい」と、この世の終わりのようなリアクションを見せるのだ。

フリが効いている。オープニングの人物紹介からバカだった。リアリティショーの舞台は南の島で、なぜか全員水着で登場をする。喜色満面でいきなり「what I'm most proud of is my penis」(ペニスには自信がある)と言い出す黒人男性がいるわ、下乳丸出しの女の子がいるわ(豊胸の切開痕がある子もいる)、「誰がいい?」と作戦会議しながら女性陣が腰を振ってはしゃいでるわ……。率直に言うと、明らかに我々とは違う貞操観念の持ち主たち。はにかんで「はじめまして」なんて距離を測り合う「テラスハウス」のそれとは全然違った。
そんな面々だからこそ、ルールに縛られる禁欲生活が生きてくる。イチャついたら賞金減額。言わば、これは“リアル集団キス我慢選手権”だ。

見るからにパリピのみなさま/Netflixオリジナルシリーズ『ザ・ジレンマ: もうガマンできない?!』独占配信中

面白いのは、賞金を減らさないよう禁欲に励む者と、「ルールは破るためにある」と性欲を抑えきれない者の2タイプに分かれるところだ。でも、ルールを破れば全員の賞金が減る。ルール破りはみんなの顰蹙を買う。性欲とお金のせめぎ合いに勝てるか否かで人間関係が変わってしまうのだ。そういえば、第1話のタイトルは「愛かセックスか賞金か」だった。

他メンバーへの腹いせに1回約30万円のキス

この構造が特に生きたのは2話だった。“カナダの港区女子”と呼びたくなる美女・フランチェスカとイケメンやんちゃボーイのハリーがいい感じになり、遂にはハリーが押し切る形で2人はキスをした(フランチェスカも合意の上だったが)。そして、この事実がみんなにばれる。キスの罰金は3千ドルだ。1回で約30万円のキス……。

フランチェスカ(左)とハリー。キスしちゃダメって言ってるのに……/Netflixオリジナルシリーズ『ザ・ジレンマ: もうガマンできない?!』独占配信中

2人は全員から糾弾される。すると、なんとハリーが「彼女からキスされた」と口走ってしまうのだ。悪者になったフランチェスカは、怒り心頭である。そして、友人でありバイセクシャルの女子・ヘイリーと悪企みをする。「お金を全部無くしたい」と、腹いせでフランチェスカとヘイリーはキスをしたのだ。同性同士でも、もちろん罰金は発生する。これで、再び3千ドルの罰金が発生!

「テラスハウス」と「キス我慢選手権」と「人狼」の要素まで……何重にも絡み合ってカオス、もうグチャグチャである。

体ではなく心を見つめる恋愛を禁欲生活で学ぶ

そもそも、なぜキス禁止、セックス禁止の禁欲生活が強いられるのか? このリトリートが促すのは、参加者の成長である。性欲の塊に見える男女も、実は心の傷を抱えていた。親友に彼女を取られた経験で人間不信になり、相手に深入りしない体の関係しか築けなくなった者。幼少期にいじめられ、外見に自信を持てなくなった者。参加者の欲求には原因があった。
その根っこの部分を見つめ直す。お金と性欲の天秤で自制心を養い、体だけでなく相手の心を見られる人間を目指す。それが、この番組のテーマだった。

なので、全員の成長を促すワークショップが開催されたりもする。でも、これが変なのばかりなのだ。「信頼関係を改善させる」という大義名分で「Shibari(縛り)」の講座がスタートするが、何のことはない。内容は、ただ男女が緊縛し合うだけだった。信頼し合い、長期関係を築ける人になるという狙いがあるのだそう。いや、どう見てもこじつけなんですけど……。
女性限定のワークショップ「Yoni」のエグさと言ったらない。鏡を下に置いて自分の膣を観察し、そのイラストを描くという講座である(Yoniはサンスクリットで膣の意味)。女性特有の神々しいものを崇拝し、自尊心を育もうとしているらしい。なんですか、その面白ワークショップは。

つまり、ワンナイトで不特定多数とヤッてきた人たちが、自分も相手も大事にする恋愛を学ぶ。このリアリティショーが学びの場として機能するというわけである。で、結果的にほとんどの者が成長しているのが凄い。その証拠に、フランチェスカのInstagramを見ると彼女とハリーはまだ交際中のようだ。相手を尊重し、長期的な関係が築けている。一方で、全く成長が見られなかったり集団生活を乱すメンバーは容赦なく追放される。キスもセックスもできないし、さらに成長できなきゃダメなんて、いくらなんでもスパルタ過ぎるだろう……。

フランチェスカとハリーはなんだかんだ、まだ交際中/Netflixオリジナルシリーズ『ザ・ジレンマ: もうガマンできない?!』独占配信中

ちなみに、筆者の一推しはちょっと天然系なイギリス生まれのクロエ。21歳とは思えぬほどセクシーなデートアプリ常用者である。当初は「まず体の関係、それで付き合うのが当然。体の相性が悪い人と知り合いたくない」と豪語していた彼女が後半に見せた成長は必見だ。

バチェラーのような日本版はきっと不可能な「ザ・ジレンマ: もうガマンできない?!」。全8話で、1話だいたい40分程度なので、イッキ見も決して無理ではない。

「ザ・ジレンマ: もうガマンできない?!」シーズン1
海の楽園で過ごすセクシーな時間に胸を高鳴らせる独身男女。だが、そこには思わぬ落とし穴が…。なんと、禁欲生活を送らなければ、賞金10万ドルは手に入らない!
出演:デザレイ・バーチ

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
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