「梨泰院クラス」つらい気持ちに効果抜群のイッキ観ドラマに中毒者続出【熱烈鑑賞Netflix】
●熱烈鑑賞Netflix 11
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日本でもブームが到来中
Netflixで配信中の韓国ドラマ「梨泰院クラス」がヤバい。めちゃくちゃアツい。
全16話となかなかのボリュームだが、観始めたら止まらない。日本でも中毒者が続出中と聞く。これぞイッキ観ドラマだ。自宅待機中にちょうど良すぎる。
タイトルの「梨泰院(イテウォン)」とは、韓国の首都ソウルにある国際色豊かな繁華街の名前。自由と多様性の象徴のような街で、若者たちが小さな居酒屋を開き、業界の大物と戦いながら成功を目指してひた走る。
シンプルなストーリーだが、そこには恋愛、友情、情熱、青春、ビジネス、そして復讐がギュッと詰まっている。巨大な敵とビジネスで戦う「半沢直樹」的な要素もあるし、何よりも仲間を大切にする「ONE PIECE」的な要素もあったりするが、「梨泰院クラス」には「梨泰院クラス」的としか言いようがない魅力が溢れている。
韓国では今年1月からケーブル局のJTBCで放送されて大ヒット。Netflixで3月28日に配信がスタートするのと同時に日本でも火が付き、「今日の総合TOP10」ではずっと上位にランキングし続けている(4月21日付で3位)。
音楽ストリーミングサービスSpotifyの「VIRAL50」(ファンが聴いて共感・共有した音楽チャート)日本版ウィークリーランキング(4月16日付)では、8位にBTSのメンバー・Vの「Sweet Night」、9位にGahoの「시작(Start)」がランクインしている。これらはいずれも「梨泰院クラス」の挿入歌だ。日本でもブームが到来していると言っていいだろう。
根性と気合、信念が武器の主人公
主人公はいがぐり頭がトレードマークのパク・セロイ(パク・ソジュン)。超絶チート能力は何もないが、ひたすらに誠実で実直。根性と気合、そして信念が彼の武器だ。柔軟さと頑固さを併せ持ち、何より仲間を大切にする。おせっかいで困っている人がいたら放ってはおけない男。
物語は彼が地方都市の高校生だった頃から始まる。セロイは転校初日、陰惨ないじめを目撃する。いじめをしていたのは、大手外食チェーン・長家(チャンガ)グループの会長の長男、グンウォン(アン・ボヒョン)。セロイが敬愛する父親(ソン・ヒョンジュ)も長家の部長だ。グンウォンのいじめはクラスメイトどころか教師まで見て見ぬふりをするが、怒ったセロイは鉄拳制裁!
しかし、大問題に発展し、長家のチャン会長(ユ・ジェミョン)が学校までやってくる。チャン会長は息子の非を詫びるどころか、なんとセロイに土下座での謝罪を要求。セロイがそれを断ると、同席した父は信念を貫くセロイを褒め称えて20年勤めた会社を辞職、セロイもたった1日で退学処分になる。
父ひとり子ひとりで新たな人生――父のもう一つの夢だった居酒屋開業に向けてスタートしようとした矢先、悲劇が訪れる。セロイの父がグンウォンの運転する車にはね殺されてしまった! しかも、警察に出頭したのは身代わりの男性だった。事実を知ったセロイはグンウォンを殴り殺そうとするが、駆けつけた刑事たちによって止められる。逮捕されて拘置されるセロイ。拘置所に面会にやってきたチャン会長は、さらにセロイに土下座して謝罪を要求する――。
第1話、第2話では、梨泰院はまだ出てこない。じっくりとセロイにまつわる因縁を描くことで、後の彼の感情と行動すべてに納得がいくようになる。オーソドックスだが、力強い物語運びだ。
孤児院育ちのキャリアウーマンと天才ソシオパスとの三角関係
セロイを取り巻く登場人物たちも魅力的だ。美少女のオ・スア(クォン・ナラ)は孤児院出身で、自尊心が強く、他者からの同情を何よりも嫌う。セロイと惹かれ合っているが、チャン会長からの奨学金の申し出を断ることができず、キャリアウーマンとして長家で働くことになる。
パワーブロガーでインフルエンサーのチョ・イソ(キム・ダミ)は「欲しいものは必ず手に入れる」がモットーの天才少女でソシオパス(反社会性パーソナリティ障害)。偶然出会ったセロイの人柄に徐々に惹かれるようになり、彼のもとで働くようになる。スアとイソ、セロイの三角関係もドラマの大きな一つの柱になる。
セロイが梨泰院にオープンした居酒屋「タンバム」(「甘い夜」という意味)で働くのは、トランスジェンダーの料理長・ヒョニ(イ・ジェヨン)、元暴力団員で喧嘩っ早いが情に厚いスングォン(リュ・ギョンス)、チャン会長の愛人の子で穏やかな性格のグンス(キム・ドンヒ)、見た目は黒人だが父親は韓国人で英語がまったくできないキム・トニー(クリス・ライアン)という面々。
韓国ではトランスジェンダーは日本より風当たりが強く、元暴力団員は職からあぶれ、愛人の子は家族から虐待を受け、黒人には露骨な差別がある。どう? 多様性でしょ? というアピールではなく、それぞれにドラマがある。また、主要な登場人物はみんな主体的であり、独立心旺盛なのも観ていて気持ちがいい。誰かに頼って幸せを得ようとするのではなく、それぞれが自分の手で自分の人生を切り開こうとしている。
意地と誇りと人生を賭けた戦い
チャン会長の息子、グンウォンは徹底的に小悪党であり続ける。セロイと会うたびに悪態をつき、父親が死んだのも、高校を中退したのも、すべて自分のせいだと嘲笑う。カネを使って「タンバム」の邪魔をし、腹いせに義弟・グンスを殴りつける。どこまでも卑劣な男である。
そしてセロイの前に立ちはだかるのが、長家グループのチャン会長だ。座右の銘は「弱肉強食」(わざわざ筆でしたためるシーンも)。権力志向で、父権的で、情け容赦ない。それでいて、料理の味とビジネスの基本には徹底的に忠実だ。実はいい人だった、というエクスキューズもない。セロイが大切にしているものを次々に奪おうとする。こんなことだって言う。
「いい人と悪い人、その基準は何だと思う? 勝ったほうが正義だ。俺は常に勝った」
復讐に燃えるセロイの目標は外食業界のトップに立ち、チャン会長と長家を叩き潰すこと。二人は激烈なライバルだ。いつだってバチバチとやり合う。「おとなしく生きろ」と会長に言われたセロイは敵愾心を剥き出しにして食ってかかる。
「おとなしく? 無理です。信念と気合いが僕の生き方です」
「あんたが唯一できるのは、土下座して罪を償うこと。僕がそうさせます」
セロイは何度もビジネスでピンチに陥るが、都合良く大物が助けてくれたりすることもなく、策を練り、仲間たちと協力しながら粘り強く戦っていく。意地と誇りと人生を賭けた二人の対決がどう決着するのか、目が離せないこと必至だ。
これからの人生について考えさせてくれた作品
「梨泰院クラス」はポップでファッショナブルでもあるが、根底にはとても熱くて泥臭いドラマがある。韓国では「毎回のように"人生の名場面"、"人生の名ゼリフ"を誕生させ、シンドロームを巻き起こした」と評されている。それでいてシリアスなシーンばかりでなく、コミカルなシーンもあって、緩急がすごい。
難しいことを伝えようとしているわけではなく、難しいことを考える必要もないドラマだが、観ながら自分の人生を見つめ直したくなるかもしれない。自分は精一杯生きているだろうか、自分は人を大切にしているだろうか、と。セロイを演じたパク・ソジュンも放映終了後にそんなことを言っている。
「『梨泰院クラス』は自分自身を振り返り、これからの人生について考えさせてくれたありがたい作品。このドラマが皆さんにも癒される時間になればと思う。毎日、甘い夜を迎えてほしい」(スポーツソウル 3月22日)
セロイは人生で辛いことがあった日に初めて飲んだ酒を「甘い」と感じた。そして、苦難続きの人生がせめて甘くなるように、店に「タンバム(甘い夜)」と名付けた。人生で辛い気持ちになっているときに、ぜひとも観てほしいドラマだ。
「梨泰院クラス」シーズン1
公開年:2020 韓国ドラマ
大都市ソウルの中でもひと際ホットな街で、小さな飲み屋を開店させた前科者の青年とその仲間たち。成功をつかむため、大物相手に無謀ともいえる戦いを仕掛ける。
出演:パク・ソジュン、キム・ダミ、ユ・ジェミョン
原作・制作:キム・ソンユン、チョ・ガンジン
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