「青天を衝け」全話レビュー

『青天を衝け』37話。再び五代友厚(ディーン・フジオカ)ロス!朝ドラ『あさが来た』その後の物語

NHK大河ドラマ『青天を衝け』。「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一が主人公です。妻の千代(橋本愛)をコレラで失い、意気消沈した栄一(吉沢亮)は、周囲に勧められて兼子(大島優子)と再婚する。仕事面では岩崎弥太郎(中村芝翫)率いる三菱商会と対立が続き、双方とも消耗する中で、弥太郎は病に倒れる。仲を取り持とうとしたのは五代友厚(ディーン・フジオカ)だが、その命も長くなく……。

吉沢亮主演、大森美香脚本の大河ドラマ「青天を衝け」。
前回、幼なじみでもある妻・千代(橋本愛)が亡くなったことで、だいぶ気落ちしている渋沢栄一(吉沢亮)。
千代の葬儀に香典を送ってもらったお礼をするため、徳川慶喜(草彅剛)に会いに行った際も突然泣き出してしまうくらい、だいぶメンタルがヤバいことになっているのだ。

妻が死んだばかりなのに早くも再婚

「渋沢は今や日本経済の要じゃ」

栄一がダメになっていると日本経済そのものに差し障りがあると心配する周囲からの勧めもあり、兼子(大島優子)との再婚話が進んでいく。
兼子は、江戸時代に豪商として知られた伊勢八の娘だが、明治維新後に父が為替取引事業に失敗したことで没落。現在は、妹たちを養うために芸者見習いとなっている。
だいぶアイドル時代とは雰囲気の変わった大島優子が、プライド高く、しかし絶妙に陰のある兼子を演じる。

「渋沢家の家政を任せたい。特に嫡男の篤二はまだ小さく、母親が必要だ」
「背負う事業が多岐にわたるゆえ、できれば子も多く欲しい。よしなに頼む」

栄一も再婚自体は受け入れているようだが、どうも、お手伝いさんを雇うような事務的なお見合いなのだ。情熱一本槍だった千代との結婚とは大きく違う。
そもそも、子どもを産ませ、同居までしている妾・くに(仁村紗和)がいるのに、別の女性と結婚するとは……娘・歌子(小野莉奈)が反対するのは無理もない。

「オレの妻となれば年中、表に出て多くの方々と交際してもらわねばならない。おくにには荷が勝ちすぎる」

社交界で活躍してもらうには、女中出身のくにではなく「家柄は確かだし、教養だってある」兼子の方がふさわしいという打算的な考えだ。
初孫が生まれた際も、兼子がいるにもかかわらず「お千代に見せてやりたかった。お千代は孫を見るのをずっと楽しみに……」なんて言ってしまう、デリカシーのない栄一。

父親がそんな感じなので、子どもたちも兼子のことを“母親”としては見てくれない。息子の篤二は兼子にまったくなつこうとしないのだ。
それをフォローするのが栄一ではなく、妾のくにだというのがまた……。

おくにさん、栄一の子を産んでいるのに、ほぼ女中のような扱いをされているが、ホントけなげに栄一を支えている。
栄一、女性関係に関しては本当ダメだなぁ~。

栄一、五代サマに八つ当たりする

パリから帰って以降、わりと順風満帆できた栄一だが、この時期は公私ともにパッとしなかったようだ。
私生活では、ちょいちょい千代を思い出して涙を流しちゃう厄介なメンヘラのようになっている。

仕事面では、海運業を独占しようとする岩崎弥太郎(中村芝翫)率いる三菱商会に対抗し、政府の支援を受けた共同運輸会社を設立。
しかし、従業員の賃金を下げてまで過剰なダンピング合戦を繰り返すという、ダメな会社の見本のような施策を打って両社ともに体力を消耗していく。
見るに見かねた五代友厚(ディーン・フジオカ)が仲裁に入るが、栄一は聞く耳を持たなかった。

「オレは大きな目で日本を見てる! 岩崎さんは本当の国の発展を分かってないからあんなことをしたんだ」
「あなたも何も分かってなかった。薩摩しか目に入らず、大きな目で日本を見ねぇから徳川をあんなふうに無残につぶしたんだ!」

岩崎弥太郎をディスるのはまだしも、仲裁に入った五代まで、話の流れに関係のない幕末の恨み言を引っ張り出すとは。
それだけ幕府をつぶされたのがショックだったのだろうけど、自分の考えに固執する老害感が早くも出てきている。

五代ロス再び

かたくなになっていた栄一だが、岩崎弥太郎が急死したうえ、病でもう長くはもたないと言われる五代が再び仲裁に入ったことによって、三菱と共同運輸会社の合併に合意する。
五代友厚は、本作と同じ大森美香脚本の朝ドラ『あさが来た』で好評だったディーン・フジオカが再び演じることで話題となった。
同じ役者が演じているだけに、本作での五代は『あさが来た』の別アングルを見ているようで楽しい。
『あさが来た』では体調が悪くなり、東京に行って療養するという五代に、主人公・あさが会いに行ったのが最期の別れとなっている。

「まだまだやり残したことはたくさんある。貿易、金融、紡績、鉄道、商船……私はまだまだ大久保さんみたいにこの国に何も残せてへん」

おそらく、今回の仲裁をするため上京するタイミングだったのだろう。「やり残したこと」への未練を語っていた五代だが、本作では「自分が残したもの」への思いを語った。

「おいが死んでも、おいが作ったものは残る。青天白日。いささかも天地に恥じることはなか」

『あさが来た』と比べると、目がダメになり、病状がさらに悪化。死を受け入れ、何かを悟っているようにも見える。6年越しで続きを見させてもらった気分だ。
実業界のメンターとしてあさを導き、栄一とは良きライバルでありながら、要所要所で軌道修正をうながしてくれた五代友厚。6年ぶり、2度目のナレ死。

夫婦関係は修復したが……

五代の仲裁もあり、仕事面は落ち着いたものの、プライベートは再婚したばかりの兼子を放置したまま。突然、兼子から離縁を言い出される。

「いくばくかの情がなければ妻にはなれません。子もできません。篤二さんも私にはなついてくださいません」

栄一は千代と結婚した際も、第一子を幼くして亡くした傷心の千代を放置。ようやく生まれた長女・歌子を抱きもせず、尊王攘夷のために家を飛び出すという、なかなかひどいことをしていた。
今回も、自分の気持ちを優先して、結婚したばかりの妻をフォローしてこなかったのだ。

「オレはどうしてもこの家を、家族を守りたい。どうか力を貸してください」

五代たちの死もあって自分を見つめ直したのか、兼子に素直に謝罪をし、夫婦関係の修復をはかる。
おかげで、数年後には兼子との間の子・武之助と正雄が誕生。ようやく幸せファミリー感が出てきた。
しかし嫡男である篤二は相変わらず兼子になついていないようで、その様子を面白くなさそうに見ていた。

実の母を亡くしたばかりで新しい母親ができ、いろいろと難しいお年頃だっただろうに。こっちはフォローしてなかったのか、栄一……。

『青天を衝け』全話レビュー第1話はこちら

『青天を衝け』36話。「お千代死ぬな。お前がいなくてはオレは生きていけねぇ」栄一の妻・千代の死
1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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