「青天を衝け」全話レビュー

『青天を衝け』32話。「何やってんだい!」本妻と愛人を同居させる渋沢栄一、叱られる

吉沢亮主演NHK大河ドラマ「青天を衝け」。「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一を主人公に物語が進みます。明治政府を辞め、第一国立銀行の総監役として、新たな道を歩み始める栄一(吉沢亮)。一方、母・ゑい(和久井映見)が体調を崩し、東京の栄一のもとに身を寄せることになり……。

吉沢亮主演、大森美香脚本の大河ドラマ「青天を衝け」第32話。
大蔵省を辞め、実業界に飛び出した渋沢栄一(吉沢亮)。それはそうとして、栄一の不倫騒動も続く。

バケモノ・岩崎弥太郎登場

内輪もめばかりしているグズグズな新政府に業を煮やした渋沢栄一と井上馨(福士誠治)は大蔵省を辞め、最後っ屁とばかりに新聞で政府の内情を暴露する批判記事を掲載した。
新政府と決別し、官から民へと転身した栄一は「合本主義」の理想を追って、日本初の銀行・第一国立銀行の総監役となる。

入れ替わるように政府に近づいてきたのが三菱商会会頭・岩崎弥太郎(中村芝翫)。
栄一よりも一足早く、実業界へ転身していた五代才助(ディーン・フジオカ)が、「政府は厄介な獣の集まりじゃったが、商いの方はまさにバケモノ。魑魅魍魎がばっこしておる」と言っていたが、この岩崎弥太郎はまさにバケモノ然とした、うさんくさいおじさんだ。

弥太郎は廃藩置県の際、旧来の藩札を新政府が買い上げ、全国統一の紙幣制度を開始するという情報を事前に入手。価値の暴落していた藩札を買い集めて巨額の財を成している。

さらにこのタイミングで大蔵省の大隈重信(大倉孝二)に取り入ることで、財閥を築き上げていくのだ。

国あっての三菱!

この頃、「明治6年の政変」で、征韓論を主張していた西郷隆盛が失脚したことをきっかけに、明治維新で行き場がなくなった不平士族による反政府運動が盛んになっており、江藤新平による佐賀の乱や、岩倉具視暗殺未遂事件などが起こっている。

政府は、そんな国内の不満をそらすために台湾出兵を計画。
当初、出兵にあたっての輸送船をイギリスやアメリカの船会社に頼ろうとしていたが、局外中立を主張して断られ、栄一とともに第一国立銀行を設立した三井組や小野組も、積極的には関わろうとせず……。

「もっと政府んため、素直に動く商人が欲しかもんであります」
その「素直に動く商人」として大隈重信にガッツリ食い込んできたのが岩崎弥太郎なのだ。

「国あっての三菱! 無論、お引き受けいたします!」
このときの弥太郎の顔は完全に何かを企んでいる感じだったが、弥太郎の伝記では同じエピソードが「所期奉公」といって、「自分の儲けよりも社会への貢献が大事」みたいな話になっている。……歴史って見方次第でどうとでも取れるな。

台湾出兵に協力的ではなかった三井組、小野組は、政府との取引を締め付けられ、特に放漫経営をしていた小野組は経営危機に陥ることに。
三井、小野の合本で設立し、小野組に大きな貸し付けもしている第一国立銀行の経営もピンチとなるのだ。

やっと言ってくれた「何やってんだい、アンタは!」

ここから、破綻の危機に陥った銀行を再建する池井戸潤的な展開になるのかもしれないが、それはそうとして今週も気になるのが栄一の不倫事情。
本妻の千代(橋本愛)、愛人の大内くに(仁村紗和)ともに子どもが生まれ、楽しい(?)共同生活がスタート。

昔のお偉いさんは普通に妾を囲ったりもしていたようだし、当時の価値観としてはそこまで異常なことでもないんだろうけど、いかんせん吉沢亮と橋本愛の家庭に仁村紗和が転がり込んでくるという絵面なのでモヤモヤしてしまう。

そこへ、栄一の母・ゑい(和久井映見)と姉・なか(村川絵梨)がやって来る。
息子の本妻と愛人が一緒に暮らしているというのは、母親からしても複雑な思いはあるだろうが、孫に罪はない。

「あれまあ、まるまる大きくなって!」
愛人の子をかわいがる母。嬉しそうにする愛人。それをにらみつける姉。遠くから何とも言えない表情で見つめる本妻。
問題の中心である栄一がその場にいないからいいようなものの……地獄絵図!

姉・なかは帰宅した栄一を「何やってんだい、アンタは!」と叱りつける。
愛人の妊娠が発覚しても、千代がアッサリ受け入れてしまったため、誰も突っ込まないまま共同生活に突入していたが、やっと言ってくれたか!

「しかし、おくにも放っておくわけにはいかねぇ。子は多くいた方がよい。お千代も分かってくれてる」
「分かるしかねぇから飲み込んでるだけだに!」
もっと言ってやってくれ、姉さん!
「お千代、すまないねぇ。でもなぁ、どうしても、うたもことも篤二(千代の子)もおふみ(くにの子)も、どの子も同じにかわいいんだに」

母・ゑいからも千代へ謝罪の言葉。
いい年こいた自分のやらかしを、母親が代わりに謝罪することほどキツイことはない……。

偉人・渋沢栄一とダメダメ・渋沢栄一

本妻・千代もキツイ状況だが、そこに居候している愛人・くにもキツイ。
栄一、千代、うた、ゑいが「お蚕、お蚕~」と楽しそうに一家団らんしている声だけ響いてくる中、ひとりで縫い物をしているくに。
「おふみも栄一の子なのになぁ……」という気持ちもあるだろう。
栄一も、金があるなら同居じゃなくて別宅を用意してあげればいいのに……。

ゑいが危篤になった際、医者から「ご家族はおそろいで?」と問われた栄一は、姉や妹のことは心配していたのに、くにのことはまったく考えていなかった。
代わりに本妻・千代がくにを呼びに行って、臨終に立ち会わせていたが……。ちょっと、美談としては受け止められないよ!
ホントに「何やってんだい、アンタは!」だ。

新しい日本を作るため「合本主義」の理想に燃える日本資本主義の父・渋沢栄一の姿とともに、本妻と愛人を同居させておきながら、全然フォローをしていないダメダメな艶福家・栄一の姿も描かれ、日曜日の夜に人間の奥深さを考えさせられるのだった。

『青天を衝け』全話レビュー第1話はこちら

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『青天を衝け』31話。渋沢栄一、不倫相手の妊娠発覚。まさかの本妻との同居スタート
1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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