鳥越裕貴さん「カフカ先生の言葉、希望に満ちあふれてる」 原作者が脚本執筆、舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』

アニメ化や小説化もされている人気漫画『文豪ストレイドッグス』。今回、2次元で描かれた作品を3次元の舞台で表現する“2.5次元”の『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』が、16日から大阪で、23日から東京で、それぞれ上演されます。舞台化シリーズは2017年に初演され、今回が5作目。中島敦役で出演する俳優・鳥越裕貴さんに、舞台の見どころや原作者の朝霧カフカさんとの交流などについて聞きました。

原作者が脚本、キャラの奥行きが増した

――太宰治や芥川龍之介といった実在の文豪の名を懐(いだ)くキャラクターが、それぞれの作品名にちなんだ「異能力」で戦う物語。原作者の朝霧カフカさんが、5回目にして初めて脚本を書きました。

鳥越裕貴さん: 原作の先生が舞台の脚本を書くなんて、聞いたことないくらい貴重な機会だし、それに見合う舞台になっていると思います。
なんといっても、個々のキャラクターの奥行きが増しました。それにカフカ先生の言葉ってすごく身に染みるというか、どんなにダークな台詞であっても希望に満ちあふれているんです。コロナで世の中が落ち込んでいる時だからこそ、感じてもらえる部分があるんじゃないかな。

――鳥越さんが演じるのは、巨大で獰猛な虎に変身する異能力「月下獣」の持ち主の中島敦。無意識で暴れていたところを太宰治に救われ、危険な依頼を取り扱う「武装探偵社」に入社するという“新入り”です。

鳥越: 敦って“生きること”に対しての“何か”が付きまとっている感じがして、すごく引き付けられました。初演のお話をいただいたのは、アニメの中で敦がすごく頑張ってる場面をちょうど見ていて「面白いな~」と思っていた時だったんです。敦のようなキャラクターは演じたことがなかったので、当時は「僕で大丈夫かな」と不安でしたね。
ただ、演じてみると自分とリンクする部分がたくさんあった。周りに振り回されつつも、ひとりの時間が好き。僕もそういうところがあるので、中島敦の世界観に自然と寄っていった気がします。今まで演じた中でも、入りやすい役でしたね。
『DEAD APPLE』では、中島敦が「自分の異能力とはなんぞや」ということに、ようやく向き合えます。ややこしいけど、敦が一歩成長できる物語です。

カフカ先生にグッと心をつかまれた

――稽古場の雰囲気はいかがですか?
鳥越: 今回はキャストが少人数ということもあって、ほとんどが顔見知り。だから僕がわちゃわちゃする必要はないと思って、稽古場のソファにまったり座っているような感覚でいます。2019年に上演した『文豪ストレイドッグス 三社鼎立(さんしゃていりつ)』は30人くらいいたから、「自分が盛り上げなきゃ」っていう気持ちがあったんですけど。
でも、まったりしている僕を振付師が見て「あれ、鳥ちゃん元気ない」って他のメンバーに言っていたらしく……。僕がおとなしくしてると「そう見えてまうんや」っていうのが、新たな発見でした(笑)。

――盛り上げるタイプなんですね。
鳥越: エンターテイメントは全部そうだと思うんですけれど、役者が面白がってないと作品が面白くなりません。だから、自分が率先して楽しむ、もちろん無理するとかではなく。「楽しんでますよ、演劇を!」というのを見せたい気持ちはあります。

――今回の舞台から加わったメンバーに伝えたいことは?
鳥越: これまでなら「飲みが大事だよ」と言ってたけど、こういう状況だからなぁ。稽古して帰るだけの生活をやってます(笑)。ただ、そんな中でも入ってきた人たちは、すごく馴染んでいるように見えますね。フョードル・Dを演じる岸本勇太なんかは、あの村田充さんと普通に芝居でやり合っていて感心しました。“初参加”というのを微塵も感じさせないところが素敵です。

――朝霧カフカさんと直接会う機会はあるのですか?
鳥越: 顔合わせや稽古場でお会いしていました。この間は、僕が取材を受けているのをカフカ先生が見ていて、すごく緊張して……「やめて」って思いました(笑)。
コロナ前は、一緒に食事をさせてもらうこともあったんですよ。カフカ先生の前で「鏡花とモンゴメリ、どっちがヒロインなのか」っていう議論を原作プロデューサーとしたことも。先生の前で酔っ払って熱くなった自分を後から思い出して、恥ずかしくなりましたね(笑)。
カフカ先生って、すごく歩み寄ってくれる人なんです。初演のパンフレットだったかな、「演劇に勝るものはない」みたいなことを書いてくれて。グッと心をつかまれたというか、一気に先生のファンになってしまいました。すごく嬉しかったです。

今まで描かれなかった“裏側”が分かる

――舞台の見どころを教えてください。
鳥越: 原作である2018年の映画『DEAD APPLE』を見た人は、「どうやって舞台化するんだろう?」と思うかもしれません。でも、これまで演出家の中屋敷法仁さんや振付師のスズキ拓朗さんたちの力で『文豪ストレイドッグス』(文スト)を見事に成立させてきたし、今回も納得できるような作品なっているはず。
原作者が舞台のために脚本を書き下ろしてくださったのが、何よりも面白いところ。映画では見られなかった『DEAD APPLE』が、カフカ先生の言葉で表現されているし、今まで描かれなかった“裏側”が分かる。これを見逃すとキャラの掘り下げもできません。舞台ファンだけじゃなくて、文ストファンの方にも見て頂きたいですね。

●鳥越裕貴さんのプロフィール
1991年、大阪府生まれ。2010年、舞台『イナズマイレブン』で初舞台。舞台『弱虫ペダル』(12~15年)やミュージカル『刀剣乱舞』(16年~)など、数多く出演。

舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』
架空の都市「ヨコハマ」で文豪の名を懐(いだ)くキャラクターたちが繰り広げる異能力アクションバトル。漫画は現在20 巻まで刊行で、シリーズ累計800 万部を突破。2017 年12 月の『文豪ストレイドッグス』をはじめ、『文豪ストレイドッグス 黒の時代』(18年)、『文豪ストレイドッグス 三社鼎立』(19年)、『文豪ストレイドッグス 序 探偵社設立秘話・太宰治の入社試験』(20年)の4作品が舞台化され、今作で5回目となる。原作者の朝霧カフカさんが、初めて脚本を手がけた。4月16日から大阪、23日から東京で、それぞれ上演される。

脚本:朝霧カフカ 脚本協力:内田裕基 演出:中屋敷法仁 協力:春河35
出演:鳥越裕貴、桑江咲菜、橋本祥平、植田圭輔、田淵累生、岸本勇太、村田 充 ほか

4月16日(金)~18日(日) 大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
4月23日(金)~5月5日(水・祝) 東京・日本青年館ホール(※全公演ライブ配信あり)

1989年、東京生まれ。不登校・高校中退から高卒認定を取得し大学へ。新聞の記者・編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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