telling,の取材に応じた女優の倉科カナさん

倉科カナさん「仕事もプライベートも30代は蓄えの時。その栄養がいつか実を結ぶから」

持ち前の可憐さに加え女っぷりも増し、ドラマや舞台で大躍進中の女優・倉科カナさん(32)。2月から3月にかけて上演される舞台『お勢、断行』では初の主役に挑戦される倉科さんに、その意気込みや、30代の今だからこそ大切にしたいお仕事や生き方への想いをうかがいました。

舞台は「芝居の楽しさ」を思い出させてくれる場所

——今回、初めての主役である「お勢」を演じられますが、そのプレッシャーや、いわゆる”座長”としての心構えを聞かせてください。

倉科カナさん(以下倉科): お話をいただいた当初はすごくプレッシャーを感じていました。でも「あれ?私ってリーダーシップを取ってみんなを引っ張っていくタイプじゃないよね?」と気づいたんです(笑)。
だから気負わず、時にはキャストのみなさんにも頼り、失敗しながら新しいモノを作っていけたらいいなと。伸び伸びやりたいと思っています。

微笑む倉科カナさん

——舞台がお好きでプライベートでもよく観劇に行かれるそうですが、”舞台”というお仕事の魅力はどんなところにありますか?

倉科: 映像と比べると、舞台は「よーいドン!」でキャスト全員がスタート。それぞれの俳優さんのアプローチを間近で見られるし、悩みや壁の乗り越え方も見せてもらえるのですごく勉強になります。
台本に書かれていないことが現場で生まれて広がり、役者同士の間に化学反応が起きたり、私にとって舞台は芝居の楽しさを改めて思い出す場所ですね。稽古期間も長いので物語のメッセージをキャストのみなさんと共有できますし、孤独感は全くない。だから全然緊張しないんです。

階段の踊り場でほほえむ女優の倉科カナさん

遠回りに見えても、年輪を重ねるために必要なオフタイム

——今回演じられるのは悪女ですが、ここ数年、クセの強い役やワケありの女性など、幅広いキャラクターを演じていらっしゃいますよね。20代の頃はキュートで元気なイメージの役柄が多かった印象ですが、20代と30代で仕事に対しての意識が大きく変化したのはどんなところですか?

倉科: 30代になって一番変わったのは、休みを大切にするようになったことですね。20代は転がるように仕事して無我夢中で走ってきたので、その疲れで30代になったら息切れしてしまったような気がして。アウトプットばかりでインプットする時間がなく、先を考えて休むとことも必要だなと思うようになりました。

——お仕事がのっている今、休むことに焦りや抵抗は?

倉科: それがないんです。30代、そして40代を考えると、ここからは外見だけでなく内面の成長が伴わないと、どんな役を演じても中身がスカスカなのは見破られてしまいます。だから今こそインプットする時間にしたい。たとえば旅行に出かけて、違う世界を体感して歴史や文化、政治の違いも学びたい。心も頭も豊かにして、”今”だけじゃなくて、一見遠回りでもその先のお仕事にいつか滲み出たらいいなと思っています。

今回演じるお勢も「悪女だからこう演じなきゃ」と安易に正解を求めるのではなく、「悪って何?」というところから試行錯誤し、色々失敗しながら構築するつもりです。稽古期間のオフには日本舞踊のお稽古を多めに入れ、悪女の妖艶さや色気を、仕草や所作からも醸し出したい。そういう行程や時間も大事だなと感じています。

丸テーブルと倉科カナさん

30代になり「すごくしんどいけれど、すごく楽しい」と思えるように

——しんどかった20代を経て、30代で新境地に来た感じですか?

倉科: いやいや、いつもしんどいです!今もそれなりにしんどい(笑)。確かに20代の頃はグラビアの仕事から始まって、芝居の仕事をしたいのになかなか役をもらえず歯痒くて、他人のせいにした時期もあり苦しかった。でも一度必死になって自分を信じて頑張ってみようと、「朝ドラを目指す」と公言して逃げ道をなくしたこともあります。それで、朝ドラをやったらやったできつかったという(笑)。貴重な経験でした。

——このお仕事のしんどさって、一番はどこにありますか?

倉科: 演技には正解がないところですね。自問自答の繰り返しで、ベストが出せているのか不安になることもありますが、しんどいからといってストップはしたくない。出来ないことが出来るようになった時に得る”プラス”って大きいですから。「きついことを楽しもう」と今は思えています。

ほおづえをつく倉科カナさん

「当たり前」を壊した先に待っているものを知りたいから

——これから挑戦したいことや、演じてみたい役などについても教えてください。

倉科: 「倉科カナがこんな役を?」と思うようなキャラクター、たとえば、やさぐれたダメダメな女性とかガテン系な仕事をしている女性とか。とにかく自分の枠やイメージをぶち壊すような役をやってみたいですね。

——そんな役を演じる倉科さんを是非見てみたいです!

倉科: 殻を破る役、やりたいですね! 極妻なんかもやってみたいですし。

そうそう、ひとりでハワイに行った時に「普通ハワイは1人で行かないところだよね?」と友達に言われたんですが、そういう「これが当たり前」という発想も捨てていきたいと思っています。もともと行動力はある方ですが、30代になり経験を積みたいと強く思うようになってからはそのスピードがさらに加速し、思い立ったらひとりで何でも即実行するようになりました。もちろん誰かと一緒ならもっと楽しいかもしれませんが、「誰かと一緒じゃないとダメ」、それを足枷にしたくないんです。

経験値を増やすには既成概念はいらないし、フットワークも身軽でありたい。でも、何でもひとりで出来ちゃうようになるのも、ダメですよね?(笑)

スタイリスト:多木成美(Cコーポレーション)、ヘアメイク:野中真紀子(eclat)
ワンピース(la vie de Leory)、ピアス(L.A.H. VENDOME AOYAMA)、リング(VENDOME AOYAMA)

放送局勤務後、コピーライター/ライターとして活動中。日々の糧は、大相撲と海外ドラマと料理のレシピ開発。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。