年末年始必見、楽しいおうち時間はNetflixで。絶対におもしろいドラマ、映画ベスト10
●熱烈鑑賞Netflix<特別編>
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年末年始、もうしょうがない。ステイホーム、ビバ・ステイホーム。家に閉じこもってNetflix三昧といこうではないか。
最近配信が始まったなるべく新しい作品で、ガチで夢中になれる大人のための10作を選んだ。
豊かな虚構の世界に潜り込んで楽しもう。
チェスの天才少女に引き込まれる「クイーンズ・ギャンビット」全7話
4週間で6200万視聴を突破、Netflixリミテッド・シリーズの視聴数新記録を打ち立てた話題作。
母親の無理心中から奇跡的に助かって孤児となった少女が、チェスプレイヤーとしてのしあがっていく生き様を描いた全7話で完結のドラマ。
主人公のベス・ハーモンを演じるのは、アニャ・テイラー=ジョイ。顔の演技が凄い。ちょっとした表情の変化で、気持ちが手に取るようにわかる。チェスの試合以外では無口で無表情なタイプの彼女にどんどん感情移入していって、クライマックスでは思わず手に汗握る少年マンガ的な盛り上がりもみせる。
人間ドラマの深さ、演技のすばらしさ、演出、美術、ファッション、映像美、ドラマを観る醍醐味が詰まった傑作だ。
【もっと詳しく】記録破りの大ヒット「クイーンズ・ギャンビット」知らなくても大丈夫だけど、知ってると楽しいチェス豆知識付きで解説
原作・制作:スコット・フランク、アラン・スコット
出演:アニャ・テイラー=ジョイ、ビル・キャンプ、マリエル・ヘラー
メリル・ストリープが!ニコール・キッドマンが!「ザ・プロム」2時間12分
2020年末に配信開始されたばかりのホットな作品。監督はライアン・マーフィー。「glee/グリー」で大ヒットを飛ばし、「アメリカン・ホラー・ストーリー」「ザ・ポリティシャン」「ラチェッド」とツイストの効いたハードな作品を連発、しかも高評価を得ている。何をしでかすかいま最も注目されているクリエイターだ。
「ザ・プロム」は、初演2016年のミュージカルが原作。
落ち目の俳優4人は、人気を取り戻すための売名行為で人権運動をしようということで、てきとうにネットニュースを検索。同性のパートナーとプロムに行こうとしたレズビアンの女子高生エマ(ジョー・エレン・ペルマン)がPTAに参加を禁じられたというニュースを見つける。彼女を助けることで人気を取り戻せると勇んでエマのいるインディアナ州へと向かう4人だが……。
「プラダを着た悪魔」「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(アカデミー主演女優賞受賞!)のメリル・ストリープ、「アイズ ワイド シャット」「ムーラン・ルージュ」「めぐりあう時間たち」のニコール・キッドマン、ジェームズ・コーデン、アンドリュー・ラネルズ。
エネルギッシュで、きらびやかで、音楽とダンスがゴージャス。設定のツイストを突き破るストレートな展開で夢心地にさせられる。エンタテインメントが世界を変える力を持っていることを信じ、実現しようとするパワーがダイレクトに伝わってくる作品だ。
元気になりたい人にオススメ。
出演:メリル・ストリープ、ジェームズ・コーデン、ニコール・キッドマン
監督:ライアン・マーフィー
ジェットコースターみたいな物語はイッキ見必至「梨泰院クラス」全16話
第4次韓流ブーム。「梨泰院クラス」「愛の不時着」が爆発的人気になった2020年だった。。
「梨泰院クラス」は「イテウォンクラス」と読む。外国人の多い梨泰院という街に象徴される多様性がテーマのひとつだ。
大手飲食店のボスであるチャン・デヒと、学生時代に父を失い復讐を誓う主人公パク・セロイの対決を軸にしたサクセスストーリー。恋の三角関係と権力闘争の三角関係が絡まり合いながら、怒涛の展開を見せる。
「愛の不時着」は、パラグライダーに乗った韓国財閥令嬢が竜巻に巻き込まれて不時着、北朝鮮の軍人に助けらて恋に落ちるという大胆な設定ではじまるラブストーリー。
ジェットコースターみたいな物語にハマり込んでガンガン観たい人にオススメ。
テリングでは、「愛の不時着」「梨泰院クラス」の各話レビューも連載中だ。
【もっと詳しく】「梨泰院クラス」会長は本当に悪でパク・セロイは本当に正義なのか? 全話徹底レビュースタート
「愛の不時着」一度ハマったら抜け出せない底なしの沼。全話徹底レビュースタート
出演:パク・ソジュン、キム・ダミ、ユ・ジェミョン
原作・制作:キム・ソンユン、チョ・ガンジン
「世界が見てる!」の感動「シカゴ7裁判」2時間10分
2020年配信公開のアメリカ映画。監督脚本はアーロン・ソーキン。2021年アカデミー賞有力候補の呼び声も高い。
1968年、ベトナム戦争反対デモに参加した若者7人が共謀罪などの罪に問われた実際にあった裁判を描いた法廷映画だ。政治的な思惑で正義が捻じ曲げられる理不尽と、それに抗う若者たちが描かれ、力強いメッセージを打ち出す。
「ファンタスティック・ビースト」シリーズの主人公ニュート役のエディ・レッドメイン、「インセプション」「レ・ミゼラブル」のサシャ・バロン・コーエン、「バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のマイケル・キートンら豪華出演陣。
法廷モノでありながら、人間ドラマであり、群像劇であり、青春ドラマでもある。The whole world is watching! (世界が見てる!)という大勢の叫びが、多層的な声として響く緻密な構成。
骨太なドラマを堪能したい人にオススメ。
【もっと詳しく】大傑作「シカゴ7裁判」はアメリカの何を裁いたのか。時代背景を解説
出演:サシャ・バロン・コーエン、エディ・レッドメイン、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世
監督脚本:アーロン・ソーキン
タコとおじさんの交流「オクトパスの神秘: 海の賢者は語る」1時間25分
原題は「My Octopus teacher」でストレートに訳すと「わたしのタコ先生」。人生に疲れたおじさんがタコに出会って関係性を築いていくロマンチックなドキュメンタリー作品だ。おじさんがタコを「彼女」って呼び、「彼女に会いにいったんだ」「彼女のことばかり考えていた」とか言って毎日タコのところに通いつめるのを、最初は「おっちゃんヤバイな!」と思いながら観ることになる。が、だんだんおっちゃんの気持ちが分かってくる。タコが魅力的なのだ。
二足歩行するの! 6本の手をふやふやしながら2本の脚でしっかり歩く。じょじょにタコとおじさんの距離が近づいていく様子を見てドキドキする。岩の奥にもぐりこんで出てきてくれない彼女が、何日目かで心を開いて岩の下から出てくる。吸盤のついた手をゆっくり伸ばして、おじさんの手に触れる。「E.T.フォンホーム」を連想させる名シーンだけど、タコなので遠慮なくてその後おじさんの手ににょろにょろ絡みついちゃう。
つぶらな瞳すぎるタコさんと、神秘的で美しい海の映像をゆったりと観てください。
癒されたい人にオススメ。
監督:ピッパ・エアリック、ジェームズ・リード
予想のつかない展開に振り回されたい「ザ・コール」1時間52分
「ソニ、母に殺されそうなの。今すぐ来て」。それは間違い電話ではなかった。話しているのは1999年に生きる女性だ。聞くのは2019年に生きる女性。ふたりは時間は違うが同じ場所にいる。なぜか20年の時を超えて、電話だけが繋がってしまった。
幼いころに火事で死んでしまったソヨンの父の命を、電話の向こう側1999年に生きるヨンソクが助ける。助けると、現在の世界が再編成され、ソヨンの足の火傷の跡が消え、年老いた父が現れる。
こんどは、2019年を生きるソヨンが、霊媒師の母に焼かれる運命にあるヨンソクに、その危機を伝える。ヨンソクは、反対に養母を殺してしまう。
ここから、1999年のヨンソクと2019年のソヨンの熾烈な戦いがはじまるのだ。
生きている時間が20年も違って対面できないふたりの対決をどう描くのか、どう展開していくのか、まったく予測のつかない物語なのだが、あれよあれよと「その手があったか!」というものすごい状況に突き進んでいって(観てのお楽しみ)、時間を隔てたままの奇妙なバトルを繰り広げる。
Netflix映画「#生きている」でゾンビを蹴散らしたパク・シネがまたもサバイブするヒロインをがっつり演じきり、「バーニング 劇場版」のチョン・ジョンソが、キュートだし怖いしクレイジーだしな殺人鬼を演じきる。いったんエンディングを迎えた後の展開も、え!?え!?え!?ってなって、もう一度確認すること請け合いの畳みかけっぷり。
とにかく予想のつかない展開に振り回されたい人にオススメだ。
出演:パク・シネ、チョン・ジョンソ、キム・ソンリョン
監督:イ・チュンヒョン
外出自粛状況とシンクロ「バード・ボックス」2時間4分
「どんなときも目隠しは絶対に取らないこと。もし目隠しを取っていたらぶちます。わかりましたか」
母親も目隠しをしている。少女も目隠しをしている。少年も目隠しをしている。目隠しをしたまま森の中を進む。
「絶対目隠しは外さないで。目を開けたら死んじゃうの。わかりましたか?」
「それ」を見ると、人は精神に異常をきたし、暴走し、死に追いやられてしまう。感染症のようにそれは拡がり、外に出るときは目隠しをしてなければ、正気を保てない世界になってしまったのだ。
なんという絶望的な状況。
目隠しをしたまま川を下る母と娘と息子の3人と、5年前それが起こったときの状況が交互に描かれ、ゆっくりとふたつの物語が接続されていく。
最初の大惨劇のシーンがめちゃくちゃ怖くて、しかもそこから絶望的な状況をサバイブする人たちが緊張感を維持したまま描かれ続け、映像から目が離せなくなる。
2018年制作、サンドラ・ブロック主演。配信後1週間でのべ4500万人以上に視聴された大人気作品。外出が自粛される状況と作品がシンクロして、今観ると刺激が強すぎるかもしれない。
最高の刺激が欲しい人にオススメ。
出演:サンドラ・ブロック、トレヴァンテ・ローズ、ジョン・マルコヴィッチ
監督:スサンネ・ビア
シーズン2以降も意外な展開「アンという名の少女」全27話
モンゴメリの『赤毛のアン』を現代的に大胆に解釈したドラマ。NHKテレビでシーズン1だけが放送されて、クリフハンガー的な終わり方であるにもかかわらず、<『アンという名の少女』をご覧いただき ありがとうございました 来週からは『グッド・ファイト2』を放送します>というテロップが流れ、「続きはどうなるの!」と騒動になった。Netflixなら続きのシーズン2、シーズン3が観れる。が、残念なことに「アンという名の少女」はシーズン3でも完結していないうえに、シリーズ打ち切りが発表されているのだ。
打ち切りの理由は、はっきりしない。カナダの公共放送局CBCの社長が「カナダ産業を阻害するNetflixとの協力をやめる」と発言しており、上層部でのいざこざのようだ。
シーズン3まで全27エピソードが配信中。アンとギルバートの物語として観ればシーズン3でいちおうのエンディングを迎える。このドラマを観てから「赤毛のアン」を読んでみる(読み返してみる)のも良いだろう。
【もっと詳しく】「アンという名の少女」がすごい。アンもダイアナも原作通りだ!と観てたら、現代的解釈に不意打ちされた
出演:エイミーベス・マクナルティ、ジェラルディン・ジェームズ、R・H・トムソン
原作・制作:モイラ・ウォリー=ベケット
サイケデリック瞑想ムービー「ミッドナイト・ゴスペル」全8話
監督は「アドベンチャー・タイム」のペンデルトン・ウォード。全8話のアニメーション作品だ。
主人公のクランシーは、多次元宇宙に配信するラジオのキャスターで、仮想世界へアバターを使ってダイブし、死にかけている世界の人物にインタビューする。このインタビュー相手が、架空のキャラクターではなく実在の人物で、インタビューは実際に行われたものなのだ。
薬物依存の専門家、冤罪で死刑判決を受けた男、オカルティスト、チベット仏教の教師のミュージシャン、母親。実在の人物のディープなインタビューに、サイケデリックなアニメーションが、ズレたまま重なり合う。
ホワイトハウスに押し寄せるゾンビを銃撃しながらインタビューに答える大統領は「大麻合法化に反対だ」「問題なのは人間と薬との関係性だよ」と答えながら、巨大化したゾンビから逃れインタビューに答え続ける。逃走の途中で水中出産を手伝い、瞑想の話になり、インド仏教の話題に転がり、「宇宙がイルカだとすると僕らの体は漁の網さ。自身に包まれている」、大ミュージカルシーンに突入する。
何を言ってるのか分からないだろうが、観ても分からない。分かる分からないという次元を超えている。死んでいく世界でいかに生きるか。観る瞑想、ドラッグアニメーション、サイケデリックムービーとしてオススメ。
出演:ダンカン・トラッセル、フィル・ヘンドリー、ドリュー・ピンスキー
原作・制作:ペンデルトン・ウォード、ダンカン・トラッセル
物語が生み出される瞬間「ミドルディッチ&シュワルツ」全3話
舞台には、ミドルディッチとシュワルツのふたりしかいない。セットも椅子が2つあるだけ。台本もない。登場人物やセリフが、この場で、生で、アドリブで生み出されていく。完全な即興コメディを目撃できる。
そんなのがおもしろくなるの? と思った人は、ぜひ観てみてほしい。
客席に問いを投げかけ、そこで出てきた話題をもとに物語は始まる。たとえば「駐車場ウエディング」。シュワルツは役になってミドルディッチに話しかける。台本も相談もないので、ふたりはお互いがどういう人物なのか分からない。
ミドルディッチ「かっこいいね。似合ってる」
シュワルツ「うれしいよ」
ミドルディッチ「後ろもいいな」
お尻あたりを指す。燕尾服の後ろ側のことを言ってるのだと伝わり、シュワルツは「緊張してる」と新郎っぽいセリフを吐く。このあたりの探り合いながらふたりの役柄が定まっていく過程も楽しい。ふたりは物語を恐れずにどんどん進めていく。
最初に定まった役を演じ続けるのではなく、くるりと回ると、別の役に変身する。「駐車場ウエディング」の回では、40分ちょっとのなかで、13人以上の役を演じて、本人たちも混乱しそうになりながらも(そこも笑える)、演じ分ける。クライマックスでは、次々といままで登場した人物を2人が演じて盛り上がる。
物語が生み出される瞬間を感じたい人、とにかく楽しみたい人にオススメ。
【もっと詳しく】たった2人で結婚式を「ミドルディッチ&シュワルツ」が即興で演じる奇跡
出演:トーマス・ミドルディッチ、ベン・シュワルツ
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