熱烈鑑賞Netflix

「スタートアップ:夢の扉」は「愛の不時着」制作会社の企画作品、成功を夢見る若者たちのハラハラワクワク段違い

世界最大の動画配信サービス、Netflix。いつでもどこでも好きなときに好きなだけ見られる、毎日の生活に欠かせないサービスになりつつあります。そこで、自他共に認めるNetflix大好きライターが膨大な作品のなかから今すぐみるべき、ドラマ、映画、リアリティショーを厳選。「愛の不時着」を手がけた韓国ドラマの名手、スタジオドラゴンが企画した作品「スタートアップ:夢の扉」。閉塞感に押しつぶされそうに感じている人にオススメです!

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清々しくて、前向きで、やる気が出る

どうも世の中の雰囲気が沈鬱だ。つられて、こちらの気持ちもどんよりしてしまう。もともと、生活の苦しさ、息苦しさを感じていた人が多かったのに、そこに新型コロナウイルスの大打撃。今はなんとか大丈夫でも、この先、自分の暮らしがどうなるかわからない……。

そんな日本人の気分を反映してか、日本で作られるドラマや映画にもなんだか沈んだ雰囲気が漂っている。極端に優しい世界か、極端に殺伐とした世界か、20年ぐらい前からまったく変わらない世界か……。
もっと清々しくて、前向きで、やる気が出るようなドラマはないだろうか? 前置きが長くなったが、そんな人におすすめしたいのがNetflixオリジナルドラマ「スタートアップ:夢の扉」だ。

Netflixに数多くラインナップされている韓国ドラマの一つで、主演はペ・スジとナム・ジョヒョク。俳優の名前にピンと来なくても、「愛の不時着」、「ザ・キング:永遠の君主」、「サイコだけど大丈夫」などを手がけた韓国ドラマの名手、スタジオドラゴンが企画した作品ということでクオリティは折り紙つき。

Netflixオリジナルシリーズ『スタートアップ: 夢の扉』独占配信中

スタートアップって何?

アップル、グーグル、フェイスブック、ウーバー……。世の中にイノベーションを起こす革新的な技術とアイデア、ビジネスモデルさえあれば、若くても、育った家が貧しくても、親がいなくても、大成功を掴むことができる。それが、スタートアップである。アップルもグーグルも最初は小さなスタートアップだった。

「スタートアップ:夢の扉」は、ITベンチャー企業を興して成功を夢見る若者たちの姿を描く物語。ラブストーリーとビジネスものとコメディと人間ドラマをミックスして、とてつもなくさわやかに仕上げた快作だ。
ベンチャー企業のドラマといえば、小栗旬主演の月9ドラマ「リッチマン、プアウーマン」を思い出す人もいるかもしれない。日曜劇場「半沢直樹」第2シーズンにも、尾上松也率いるITベンチャーが登場した。

ただ、これらはいずれも成功を収めた後の出来事がメインだったが、「スタートアップ:夢の扉」は何も持たない若者たちがトラブルに見舞われながら成長していく姿を描く。だから、ハラハラ感とワクワク感が段違いなのだ。

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「スタートアップ」は女の子が主役の「梨泰院クラス」?

主な登場人物は4人+1人。ヒットする韓国ドラマの例に漏れず、彼らがとても魅力的に描かれている。

ソ・ダルミ(ペ・スジ)は、幼い頃に起業を目指す父親を亡くした若い女性。貧しいながらもさまざまなバイトを重ねてサバイブしてきたが、人生の大逆転を賭けてスタートアップを始める。学歴はないが、口が達者で度胸は満点、スティーブ・ジョブズに憧れる勝負師だ。

ナム・ドサン(ナム・ジョヒョク) は少年時代から“数学の天才”として知られていた男性。天才プログラマーとなり、親の援助でスタートアップを始めるが、コミュニケーションとビジネスが大の苦手で会社は風前の灯。なお、ドサンの仲間として「愛の不時着」でジュモクを演じたユ・スビンが出演している。

ハン・ジヒョン(キム・ソノ)は天涯孤独の身だったが、神がかった投資の実力の持ち主という男性。クールな毒舌家で、現在はベンチャーキャピタルのシニアリーダーを務める成功者だが、ダルミ、ドサンとは不思議な因縁があった。

ウォン・インジェ(カン・ハンナ)は学歴、美貌、財力をすべて兼ね備えた女性。財閥である親の支援を得てスタートアップのCEOに就く。実はダルミの姉で、幼い頃に両親が離婚して生き別れになっていた。久々に再会したダルミをあからさまに見下し、ダルミの負けん気に火をつける。

物語はこの4人のビジネスと恋愛が中心に進むが、もう1人、重要な登場人物がダルミの祖母、ウォンドク(キム・ヘスク)だ。慈愛と人間愛に満ちたホットドッグ(ハットグ)屋のおばあさんで、若者たちの縁をつなぐ人物。このドラマを見て、人生で初めてハットグを食べたくなったよ。

第1話は、韓国ドラマらしく主人公たちの幼少期の因縁をじっくり描いていく。主人公の父親が死んだり、若者が奮起してビジネスでの成功を目指したりと、どこか「梨泰院クラス」と共通する部分もあるが、こちらのストーリーを動かしていくのは女性であること、土下座や恨みなどのドロドロした要素があまりないところが大きく異なる。

ビジネスのシビアな部分もたくさん描かれるが、後味はすっきりさわやか。バイタリティの塊のようなダルミのことも、シャイすぎるドサンのことも、実は熱いジヒョンのことも、最初は嫌な感じだったインジェのことも、だんだん応援したくなってくる。

1話90分で全16話となかなかのボリュームだが、年末年始の帰省や旅行がキャンセルになって、仕方なく家で過ごすことになった人にはぴったり。すがすがしい気持ちで新しい年を始める意欲がわいてくるドラマだ。

Netflixオリジナルシリーズ『スタートアップ: 夢の扉』独占配信中
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ライター。「エキレビ!」などでドラマ評を執筆。名古屋出身の中日ドラゴンズファン。「文春野球ペナントレース」の中日ドラゴンズ監督を務める。
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