Netflix「今際の国のアリス」のリアリティがすごい。山崎賢人よ、普通でいてくれてありがとう!
●熱烈鑑賞Netflix 47
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新年1発目の“熱烈鑑賞Netflix”は、まだまだ話題の山崎賢人主演ドラマ「今際の国のアリス」。年末年始に一気見してまだ熱が冷めやらないなんて人も多いのではないだろうか。
麻生羽呂の同名漫画が原作で、ジャンルはある時期から漫画界で爆増した“デスゲーム”だ。正体不明のゲームマスターによる死が前提としたゲームを強いられた主人公たちの苦悩を描く、だいたいこんな感じのやつがデスゲームと呼ばれている。
デスゲームは、映像化が困難とされている。その理由は、リアリティが無くなる、これに尽きる。デスゲームにはその世界観の作り込みが不可欠で、さらにその世界観を現実世界と掛け合わさなければならない。
例えば、「学校の教室から出られなくなる」というタイプのデスゲームだったら、「外の世界はどうなっているのか?」「なぜ日本政府は動かない?」「携帯電話は?」「食事は?」「トイレは?」など、日常生活と切り離せない疑問点が浮かんでくる。これをうまいこと処理しながら、正体不明の黒幕や、練りに練られたゲームを描写していかなければならない。映像化するならば、これに視覚的矛盾を無くす作業が加わり、斬新なグロ映像を加えなければいけないのだから、問題は山積みだ。
さらに「今際の国のアリス」なんて「東京から人が消える」という大規模な設定まで乗っかってしまっている。どれだけ役者の演技がよくても、1発で冷めてしまう危険性をはらんだ問題児的な原作だ。
しかし、「GANTZ」や「キングダム」など、数々の漫画原作の映像化を成功に導いた佐藤信介監督は、第一話目からかましてくれた。「このドラマは大丈夫だよ」と安心感を与えてくれた。
一度は見たい「誰もいない渋谷」
ゲームばかりしているニートのアリス(山崎賢人)が、カルベ(町田啓太)、チョータ(森永悠希)と共に遊んでいると、突然渋谷から人が消えてしまう。“今際の国”に来てしまった3人は、命を賭けた“げぇむ”に参加させられてしまう。
この渋谷がすごい。世界有数の人間密集地帯の渋谷に、人が1人もいないのだ。人がいない渋谷は無音で、それだけでも不気味だ。しかも、短いカットで誤魔化すとかそんなレベルではなく、長回しで3人は渋谷を歩き回る。何もなくて、何も起きない、これがこんなに怖いなんて思ってもいなかった。
撮影方法としては、栃木県・足利市に巨大なセットを作り、CGを当て込んだらしい。どういうものなのか想像もつかないが、山崎賢人たちはそのセットを見て「渋谷じゃん!」と驚いたそう。デスゲームやだよー、グロいの怖いよー、という人も、ここまでは誰も死なないので一度見てみて欲しい。
視覚的な不安を取り去ってくれた第一話。肝心の“げぇむ”のチョイスも考えられていた。原作では、火の矢が降り注ぐ「おみくじ」という“げぇむ”だったが、ドラマでは間違えると死ぬ2択を迫られ続ける「生きるか死ぬか」という“げぇむ”に代えられていた。
「おみくじ」の方は、とんでもない量の火の矢が降り注いだりと、ド派手な内容で、もしかしたら映像的に再現が困難だったのかも知れない。代わりに行われた「生きるか死ぬか」は、ほぼヒントのない状態から答えを導き出し、周りの人間との駆け引きなんかも盛り込まれたバリバリの頭脳系“げぇむ”だ。頭脳明晰なアリスの一面や、今際の国の常識に混乱する3人なんかも描写されたし、こっちの方が初の“げぇむ”としては適していたかもしれない。
山崎賢人が普通でいてくれる
ぶっ飛んだ世界観と我々視聴者を繋ぐのは、一緒に“今際の国”に放り込まれた主人公のアリスだ。そういう意味で、山崎賢人の“普通さ”がハマっている。
山崎賢人を普通だなんて言ったら怒られてしまうかもしれないが、この人はちゃんと“そこら辺にいる兄ちゃん”でいてくれる。クラスでこんな奴いたような気がしてしまうのだ。少し上の世代で言うと妻夫木聡なんかがそうだろうか、めちゃくちゃイケメンなのに普通でいられるのは、稀有な才能だ。
そんな普通の山崎賢人が、作中で異常なことが起きるとちゃんと常識的な観点で驚いてくれる。わからないことがあっても、山崎賢人が一緒に「なぜだ!?」と不思議がってくれる。どんなにストーリーがぶっ飛んでも、山崎賢人が真ん中に立ってくれている限り、安心して見ることができるのだ。
じゃあ、他の出演者が普通じゃないのかと言われたら、やっぱり普通じゃないのばっかりだ。アリスと一緒にいるカルベやチョータは普通っぽさを持っているが、ストーリーが進行するに連れ、ドンドン濃い奴が出てくる。
ウサギを演じる土屋太鳳は、身体能力を生かして全力疾走や圧巻のクライミングを魅せる。金子ノブアキのボーシヤは、今際の国内にある異常な国“ビーチ”の王にピッタリの謎のカリスマ性。村上虹郎のチシヤは、お前今際の国にくる前はどんな生活送ってたんだよってくらい天才風を吹かせまくっているし、栁俊太郎のラスボスなんて意味がわからなすぎて逆に気にならなかった。
特に5話以降は現代の日本ではなく、今際の国に染まってしまったヤツばかりが登場する。そんなぶっ飛びキャラたちが頭脳戦だけでなく、武器を持ったバトルシーンなんかも演じて、それはもはや格闘ゲーム。どんどん壊れて行く世界を、キャラクターたちが体現している。そんな中、真ん中に立っている山崎賢人の普通さはやっぱり心強い。
若干中途半端なところで終わってしまった印象はあるが、大方の予想通り、シーズン2の製作も決定している。日本だけでなく、世界約40ヵ国で人気を集める注目作なだけに、大変だろうけど早く続きを見せて欲しい。
*山崎賢人の崎はたつさきが正式表記
「今際の国のアリス」
監督:佐藤信介
出演:山崎賢人、土屋太鳳、村上虹郎、森永悠希、町田啓太(劇団EXILE)、三吉彩花、桜田通、朝比奈彩、柳俊太郎、金子ノブアキ、青柳翔(劇団EXILE)、仲里依紗
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