Netflix「Lupin/ルパン」フランスの実写版ルパンはスタイリッシュで鮮やかな大エンタテインメントだった
●熱烈鑑賞Netflix 49
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黒人の怪盗紳士ルパン
「Lupin/ルパン」PART1の配信がスタートした。映画「最強のふたり」のオマール・シーがルパンであるところのアサン・ディオプを演じる。そう黒人のルパンなのだ。
「俺を見くびったな。つまり――俺のことが目に入らない。ヤツらと同じ」
ルパンは、こう続ける。
「上流階級のヤツらは下を見ない」
つまり、格差社会で個とみなされないがゆえに神出鬼没でありえる黒人の怪盗紳士ルパンっていうのが、このドラマの鍵。
ルパンが対決するのはペレグリニ家。すごい財閥で、すごい金持ちで、すごい権力者。
この格差を、どうやってひっくり返すかっていう物語で、ペレグリニ家とルパンは、「梨泰院クラス」の長家のチャン・デヒ会長とパク・セロイの立ち位置と同じ。
パク・セロイがガッツリ正義漢の真面目な男なのに対して、ルパンはもちろん義賊。自分のルールは守るが世間的な善悪を超えて(というより、けっこうな犯罪を華麗にやりながら)目的を果たそうとする。
現代社会に対する風刺もキリリと打ち込まれてるけど、基本はザッツエンターテインメントでスタイリッシュなドラマだ。
Netflixドラマにありがちな、第1話は序章なので地味だなーってのがなくて、第1話から最高に派手に展開して、キャラクターに感情移入させる。
ルーブル美術館のマリーアントワネットの首飾りを盗む大計画で、むちゃな変装あり、裏切りあり、カーチェイスあり(ルーブル美術館に車ごとぶっこむ!)、どんでん返しあり。ガッチリおもしろさを詰め込んだ怒涛の展開のなかで、その後に続くキャラクターの人間関係を無理なく描写する。
ルパンa.k.a.アサン・ディオプには、(義賊活動を隠してるのですれ違いが多くて別れてしまった)元妻と息子がいて、ときどき会っている。さらに、ペレグリニ家の娘とはファーストキスした仲で、なかなか複雑な関係を維持してる怪盗紳士っぷり。
過去パートで明かされる事実と、現代パートのスリリングな展開がシンクロして、毎話、飽きさせないのだ。
現代パートでは、ドローン、ディープフェイク動画など、まさに今!の技術が駆使されているのも見どころ。
マリーアントワネットの首飾りを盗んだ濡れ衣をきせられて自殺した父親の仇をうつために暗躍するという全体を貫くストーリーが主軸だけど、基本的に一話完結でまとまっている。
派手なアクション、どんでん返し、父と子の絆、ハラハラドキドキ、権力との闘い、陰謀、暗号、カーチェイス、ユーモア、皮肉、ロマンスとエンタテインメント活劇に必要なものが絶妙なバランスでぶち込まれているスマートなドラマ。
小説『ルパン』シを知らなくても大丈夫
レビュー書くために二度三度観ると、むちゃな展開してるなーって思うところもあるが、細かいところは気にせず、爽快に、みんなでわーわー言いながら観るのが正解だろう。
モーリス・ルブランの小説『ルパン』シリーズを知らなくても、ぜんぜん問題なく楽しめる。が、主人公アサン・ディオプが、ルパン大好き野郎で、いたるところにルパンオマージュを仕掛けてるので、ルパン好きであればさらに楽しめる仕掛けになっている。ぼくは、こどものころに読んだ記憶がうっすらあるだけだったので、『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』(原作:モーリス・ルブラン 漫画:森田祟)で再読しました。
監督は、「グランド・イリュージョン」「トランスポーター」のルイ・レテリエ。
ちょっとだけ残念なのは、エピソード5までしかないこと。完結してないのだ。
勝手な推測だけど、「クイーンズギャンビット」と同様な全10話のリミテッドシリーズで作り始めたけど、コロナ禍のせいで製作が進まず5話だけお先に披露したんじゃないかなー。
5話の最後に“新パート配信決定”って出てくるので、そう待たされることはなさそう。楽しみに待つ!
「Lupin/ルパン」
出演:オマール・シー、リュディヴィーヌ・サニエ、クロチルド・エム
原作・制作:ジョージ・ケイ
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