映えすぎて笑っちゃうクッキングバトル「スイーツ・チャンピオン:エクストラスイート」【熱烈鑑賞Netflix】
●熱烈鑑賞Netflix37
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シェフも食材も料理も鍋やフライパンさえもカッコイイ
「アグリー・デリシャス」「ズンボのジャスト・デザート」「アメリカンバーベキュー 最強決定戦!」「マリファナクッキングバトル」……Netflixと言えばグルメドキュメントorグルメバラエティだ。オリジナルの映画やドラマもおもしろいけど、特異な物が観たいなら間違いない。
早回しからのストップモーションや、シェフ視点、食材視点、果ては食材視点など、海外のグルメ番組は、カメラワークが面白い。被写体は止まっているのに視点がグルグル回る「マトリックス」でお馴染みの撮影法“バレットタイム”や、画面を何分割かにして同じシェフが違う食材をカットする様を見せたりと表現は感心してしまうほどに多様だ。
そこにリズミカルなBGMが乗っかると、まるでミュージックビデオを観ているような感覚に陥る。「おいしそう」だけじゃない、もはや「カッコイイ」だ。シェフも食材も料理も鍋やフライパンさえもカッコイイ。木村拓哉が主演を務めたドラマ「グランメゾン東京」(TBS 2019)の調理シーンが話題になったが、その流れを汲んでいたように思う。
空飛ぶケーキに光るケーキ
賞金1万ドルを目指し、菓子職人がペアで参加するクッキングバトル「スイーツ・チャンピオン:エクストラスイート」。子供が適当につけたような名前のこの番組は、とにかく映えがすごい。短い制限時間の中、放送毎に設けられた厄介なメインテーマにそって一回戦、二回戦、三回戦と戦いを繰り広げるのだが、このテーマがトリッキーなスイーツを生む。
メインテーマ「鳥」の最終決戦では、「60cm以上の高さの羽の孔雀」という特別課題を要求され、パティシエたちはどこからどこまで食べられるのかさえわからない巨大なモニュメントのようなケーキを作り出した。
他にも、「本物の水を使ったバカンスがテーマのケーキ」「ブラックライトに光る不気味なケーキ」「空飛ぶケーキ」など、意味のわからないケーキがいくつも登場している。クリームに塗れた顔で奇怪なケーキを嬉々として作り上げる大人たちは、なんだか笑ってしまう。
ながら見推奨の寝落ちクッキングバトル
同僚、夫婦、兄弟、様々なペアを組むパティシエたちは、こんなムチャブリ同然のお題にアドリブで挑む。お題を聞かされると、最初に取り出すのはノートとペンだ。熟練のコンビネーションで完成図を描きあげるペア、片方が引っ張って作り上げるペアなど、その形は様々。見たことも作ったこともないスイーツを瞬く間に想像し、早速調理に取り掛かる。審査員は、“カップケーキの女王”キャンデス・ネルソンに、「ズンボのジャスト・デザート」(Netflixオリジナル)のアドリアーノ・ズンボらだ、見た目だけでなく味にもしっかり気を配る。日本ではちょっと聞き慣れないスパイスなども次々と登場するので新鮮だ。
しかし、スイーツは他の料理と比べて正確な焼き時間や分量などが要求されるジャンル。ノリで作れるものではない。バトルが行われるスタジオの標高が高いらしく、「普段と焼き時間などが変わる」といった愚痴をこぼすものいた。選ばれたプロのパティシエたちなのに、こういったグルメバトルにはめずらしく、失敗する挑戦者たちが続出する。
そこで見えるのが人間性と関係性だ。失敗しても前向きに励まし合うペアが大半だが、徐々に口数が減ってくるペアや、離婚が心配になるほど険悪になる夫婦も。妻の言うことがよく理解できず、おどおどしながら飾り付けのクッキーを何枚も破壊する筋骨隆々の黒人男性もいた。
そんな状態なので、ハッキリ言って不味そうなものも見かける。完成直前に巨大ケーキが倒れてしまってぐちゃぐちゃになったこともあった。ただ、そんな時は普段厳しい審査員たちも空気を察して、「よく諦めなかったね」「僕にはこれが完成に見えるよ」など気の利いた言葉を投げかける。このちょうど良い“ヌルさ”が心地いい。真剣勝負ではあるが、あくまで遊びなのだ。そりゃそうだ、空飛ぶケーキ作って喜んでるんだから。
「スイーツ・チャンピオン エクストラスイート」は、おいしそうでおもしろい。とはいえ、そこまで集中して観ないと行けないのかと言ったらそうでもない。料理しながら、洗濯物を畳みながら、子どもの相手をしながら、そんな感じで“ながら見”できる気楽さも魅力。僕は最近これで寝落ちしている。
「スイーツ・チャンピオン:エクストラスイート」
出演:ハンター・マーチ、キャンディ・ネルソン、アドリアーノ・ズンボ
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