自分を変える、旅をしよう。

「経験に時間とお金を費やしたい」旅の荷物を最小限にして気づいたこと

旅によって人生が変わった人や、旅を通した生き方をリーマントラベラーの東松寛文さんが紹介する「自分を変える、旅をしよう。」。後編もアーティストの溝尻奏子さんにお話をうかがいます。旅先で写真ではなく絵を描くようにした理由とは?

●自分を変える、旅をしよう。19・後編 溝尻奏子(34)

リーマントラベラーの東松寛文です!のInstagramで美しい旅のスケッチを公開している、アーティストの溝尻奏子さん。後編では印象に残っている旅先から旅に出るようになって変わったこと、これからの目標や夢をうかがいました。

東松寛文(以下、――): 前編では旅にハマった頃のお話をうかがいましたが、今までに一番印象に残っている旅先はどこですか?

溝尻奏子さん(以下、溝尻): 2017年年末から2018年にかけて滞在した、ブラジル・リオデジャネイロです。1カ月間滞在して、地元のアーティストたちや各国からレジデンスに来ている作家たちと交流しながら南国の夏を満喫しました。夏(12月)でも常に風が吹いていて、明るい雰囲気でとても気持ちがいいところです。治安はあまり良くなかったけれど、いろいろな所から音楽が聴こえてきて、人がとにかくポジティブでおおらか。心が開いている人が多い印象です。

ブラジル・リオで壁画を共同制作

――どんな場面でそう思いましたか?

溝尻: レストランやバスの中、スーパーなどでも、お互いに思いやる場面をたくさん見ました。カトリック信者が多いことと気持ちがいい天候が大きく関係しているんじゃないかなと感じました。
大晦日は仲良くなったカリオカ(リオっ子)と、コパカバーナに向かうバス停で知り合ったペルー人グループといっしょにわいわい過ごして0時を待ちました。ビーチから眺める打ち上げ花火は圧巻でした!
元旦は夕方からイパネマビーチに出かけて、初日の入りを見ました。ビーチにはたくさんの人がいてそれぞれリラックスして過ごしています。海に夕日が沈む瞬間は、歓声が沸き拍手喝采!日の入りを見届けてから海で泳いで、濡れた髪を乾かしながら歩いて帰りました。日の出を静かに見守る日本人と真逆の国民性もおもしろいですね。

ブラジルの家庭料理をいただきながら描いた家族のポートレート

――ところで、リーマントラベラーを知ったキッカケを教えてください。

溝尻: 友人のインスタがきっかけです。東松さんが実践しているように、週末をいかした旅をもっと多くの人が知れば、海外旅行がさらに手軽、身近になるだろうと感じました。たいていは、海外旅行は、ゴールデンウィークやお盆、年末年始など、年に数回行けるかいかないか。そのため、かなり前もって計画を立てないといけない。しかもその時期は旅行代金も高額で、人気の旅行先は観光客でいっぱいです。ところが、週末旅行なら比較的安く行くことが可能です。数日間の旅であれば、駅のコインロッカーを活用して会社から空港まで直行すれば、時短にもなります。会社員でも工夫次第で可能性が広がるんだと驚きました。

――ありがとうございます!そう言っていただけてうれしいです。リーマントラベラーを知って、旅のスタイルや普段の生活で変化したことはありますか?

溝尻: 今はコロナ禍で旅行に出られませんが、これから変化があると思っています。それに、「普通の会社員はそんな長い休みが取れないんだよ」と言われたときに、「こんな人もいるよ!」とリーマントラベラーを紹介して、旅に出ることをすすめたいですよね。

――溝尻さんが旅に出るようになって、変わったことは何ですか?

溝尻: 物と経験への価値観が変わりました。少量の荷物で旅をすると物を増やせないので、旅先でお土産は買えません。もともとあまりなかった物欲が今ではほとんどないに等しくなりました。その分、経験に時間とお金を費やすようになり、日本にいるときもその習慣が身につきました。生活に必要な物を購入するときは、価格や流行よりも環境に配慮したものを長く大切に使うことを心がけています。

――サステナブルな考え方、いいですね!逆に、旅に出るようになっても、変わらなかったことは?

溝尻: もともと食欲旺盛なのですが、たくさん食べるのは旅先でも変わらないですね。もともと食べ物の好き嫌いもないので、現地で出される料理はなんでも喜んでいただきます。食事の場って、その場にいる人とより親しくなれると感じます。料理ができた歴史的背景を聞くことができたり、食がきっかけでその地域に対する興味が広がることもあります。
旅先では、家族や友人と食事に時間をかけて味わう国が多く、そういう環境にも恵まれたので、おいしくいただきながら絵を描くことも。言葉がわからなくても居心地の悪さを感じないし、場が持ちます。料理をふるまってくれた方たちも喜んでくれますね。

クロアチアにて街並みをスケッチ

――それはすてきですね。写真を撮るよりも思い出に残りそうです。ところで、溝尻さんにとって、“旅”とは?

溝尻: 私にとって旅とは、自分の声を一番聞けて、感情が最も豊かになる大切なものです。
心が動かされた景色を絵に描いていますが、そうすることでその空間がより記憶に残ります。描いた絵を見返すと、その日の気温や周りで聞こえた音や話し声、その絵に描ききれなかったものも思い出すことができます。旅行中は感受性が豊かになっているので、光や色彩の美しさに一層気がつけるし、自分のための時間なので、その瞬間に絵を描くことを最優先にできます。

――最後に、これからの夢や目標を教えてください。

溝尻: 新型コロナウィルス感染拡大もいつかは落ち着くと思うので、時が来たらまた国内外のいろいろな地域でたくさん絵を描きたいです。私の特技であり、幸せを感じる旅のスケッチを仕事につなげられたら最高ですね。それによって、地域の魅力を紹介したり、観光誘致に貢献できればと思っています。

平日は激務の広告代理店で働く傍ら、週末で世界中を旅する「リーマントラベラー」。2016年、毎週末海外へ行き3か月で5大陸18か国を制覇し「働きながら世界一周」を達成。地球の歩き方から旅のプロに選ばれる。以降、TVや新聞、雑誌等のメディアにも多数出演。著書『サラリーマン2.0 週末だけで世界一周』(河出書房新社)、『休み方改革』(徳間書店)。YouTube公式チャンネルも大好評更新中。
リーマントラベラー